月夜の晩

ジムに行って筋トレして、カレー屋でカレー食ったあと、西の研究棟へ向かって歩いていたら、図書館前の噴水に面した通路に、大きな猫が座っているように見えた。

近づいていくにつれて、どんどん大きくなるので、それは猫ではないことが次第に分かってきた。

道路の真ん中に座っていたその物体は、私が近づくと、脅えたようにして後ずさりした。

もっと近くで観察したかったので、そいつをこちらに呼び寄せようと思い、口笛を吹いてみた。気分をややナウシカにして。

なぜか黒猫がどこからともなくやってきた。親しげにニャーと鳴きつつ私に向かってくる。しかし、お前を呼んだのではない。

狸は、いいさ俺なんて…とでも言いたげな顔をして、尻をこちらに見せつつ去っていこうとする。

豚みたいな尻だ。黒猫は無視して、私は狸を追いかける。

狸は不安げな顔をしながら、定期的に私を見やりつつ、事務棟の方へ足早に歩いていく。

再び心をナウシカモードにして、なんとなく笑顔を作りつつ、狸を追跡する。

狸の足は遅い。間合いを一瞬でつめれば、捕まえることができそうだ。

しかし狸の顔はずっと不安げだった。