本部御殿手初体験記

本部御殿手には「型」がない。特定の「構え」もない。さらに「受け」もない。「後退する」という動きも想定されておらず、徹底的に「前進する」。

「型」や「構え」はないものの、基本的な動作はある。

1、まず戦闘中は両手を同時に使う。敵に両手を向けるのである。

2、さらに敵へのばした両手の形は、「にぎりこぶし」ではなく、「舞の手」である。

3、「舞の手」という形は、沖縄の伝統的な踊りである「カチャーシー」を行う際にするような手の形である。

4、つまり本部御殿手は、「カチャーシー」を踊るような手つきをしつつ、ひたすら敵に前進し、急所をものすごいスピードで狙い、一瞬にして相手を組み伏せてしまう武術なのである。

5、「カチャーシー」には「回転」がつきものである。ただし一回転ではなく半回転である。敵の攻撃を半円を描くようにして、両手でそらし、その伸ばした両手の掌で、相手の指の関節をきめたり、目や顎、首や後頭部に打撃を加えるのである。勝負は一瞬で決まるようになっている。

6、もともと琉球王府内に侵入してくる集団の敵に対して開発された一子相伝の技なので、ひたすら実用的である。したがって見た目は格好良くない。ていうか非常にいやらしい。相手をいかに効率よく倒すか。このことしか念頭に置いていない。だから傍目には酔っ払いのケンカのように見える。または、両手を頭上にあげるのを忘れた「変形カチャーシー」を踊っているように見える。しかし敵はあっという間に倒れている。

7、本部御殿手は実践思考の武術なので、身近にあるものをなんでも武器として使用する。そのような訓練も練習には組み込まれている。サイ、ヌンチャク、棒、刀、トンファーなどを使用する。今日は、サイとヌンチャクと棒と刀を使用した。刀を鞘におさめるときに、誤って指を傷つけてしまった。模造品とはいえ先がとがっている刀はあぶない。初心者でも最初から武器を用いて練習する。

8、相手が攻撃してきたら、後退するのではなく前進してそれを両手で制止し、相手に追い打ちをさせないようにする。敵に攻撃する隙を与えないようにする。敵が攻撃できるのは最初の一撃だけにする。

9、空手のように「試合」は行われない。ケンカにルールがないように、本部御殿手にもルールはないので、「試合」するにも「試合」ができないらしい(戦えばどっちかが大怪我するか死んじゃうからだと私は思う)。

10、会費は月々2千円。入会金は3千円。服装自由。練習日は毎週日曜日。基本的に午後1時から午後5時ぐらいまで。

11、気に入ったので、4月からここに通おうと思う。

◆練習の様子

体育の授業で空手をやっていた。沖縄出身だ。妹の先生が本部御殿手の使い手だった。などと話したからだろうか。本部御殿手道場のNO2とおぼしき人の、私に対する攻撃は激しかった(ように思う)。「本気で打ってきなさい」と言うので、本気で打っていったら思い切り前進されて、目に指をつき立てられたり、膝の裏を蹴られたり、指の関節を取られたりした。「こうきたらどうするのでしょうか?」と、いろいろな攻め方をさせていただくと、ことごとく跳ね返されてしまった。関節取られて畳に膝をつけさせられたり、仰向けにのけぞらされること数十回。なかなか痛い。NO2の人の蹴りを防ぎそこねて右手に打撲を負う。防ごうとせずに、そのまま素直にくらっておけば良かった。

3月は忙しいので、4月から道場に通おうと思う。会費も安いし、なによりも実践的なのが面白い。この武術は形だけではない。

確かに、本部御殿手合気道と空手を混ぜたような武術だった。そしてその戦う姿は舞いを舞っているように見える、非常に興味深い武術だ。

http://www.geocities.jp/you_k321/ugijyutu.htm