「「演技/素」「本音/建前」の「二項対立」図式に捕われる」という言い回しに関する厳密な点検結果

miirakansu様

「「演技/素」「本音/建前」の「二項対立」図式に捕われる」という言い回しに関する厳密な点検結果について、8月にエントリーをアップする予定でした。

しかし、ついさきほど、自分が犯していた重大な間違いに気付くことができたので、予定よりむちゃくちゃ早く、エントリーをアップしたいと思います。

まず、私が自分自身に課した問いについて、順番に答えていきたいと思います。

【重森が重森に課した問い】

1、「「演技/素」「本音/建前」の「二項対立」図式に捕われる」とは、いったいどのようなことを言うのか?
2、「「演技/素」「本音/建前」の「二項対立」図式に重森は捕われているので、「タイ人ブローカーは呪術を信じていない」と重森は思い込んだ」という主張を裏付ける根拠を、重森は提出することは可能か?  
3、2の答えがNOであった場合、アンスコムの「行為の記述」論や、レイコフによる比喩に関する議論や、ライルによるカテゴリー錯誤に関する議論を参考にしつつ思索し、なんらかの現象なり出来事に対して、「「演技/素」「本音/建前」の「二項対立」図式に捕われる」と記述する行為が、議論をする上ではたして有益かつ適切な行為といえるのかどうかを判断する。

■1について

答え:タイ人ブローカーが呪術を信じているのかどうかいぶかしむこと。「呪術で殺すぞ」と述べるタイ人ブローカーの言動を、「本当は呪術なんて信じていないのではないか?本当はどう考えているのだ?」と疑うこと。

■2について

答え:NO。miirakansuの指摘の通り、「「演技/素」「本音/建前」の「二項対立」図式に重森が捕われていること」と、「「タイ人ブローカーは呪術を信じていない」と重森が思い込んだこと」には、何の関係もない。前者を後者の原因にすることは、明らかに論理の飛躍である。

■3について

答え:「「呪術で殺すぞ」と述べるタイ人ブローカーの言動を、「本当は呪術なんて信じていないのではないか?本当はどう考えているのだ?」と疑うこと」を、「「演技/素」「本音/建前」の「二項対立」図式に捕われる」と記述する行為自体には何の問題もない。これは単なる「行為の記述」である。しかし、「「演技/素」「本音/建前」の「二項対立」図式に捕われる」という記述を、「「タイ人ブローカーは呪術を信じていない」と重森が思い込んだこと」の原因にしてはならない。このような因果関係は成り立たない。前者は後者の原因とは言えない。重森は、無根拠的に、前者が後者を引き起こしたと捉えていた。これは完全な誤りである。

miirakansu wrote 2006/04/20 02:19
>この記事には「タイ人ブローカーは呪術を信じていなかった」と断言できるような情報は含まれていないにも拘らず、シゲがそう思い込んでしまったのは、「二項対立」の図式に捕われているからではありません。
>もちろん、シゲは二項対立の図式の中で考えています。しかし、判断材料が不足しているにもかからず自分の思いたいように思い込んでしまうのには、何か別の原因が作用していることが考えられます。

miirakansuによる上記の指摘の意味が、やっと理解できました。

私は、「タイ人ブローカーは呪術を信じていない」と自分が思い込んだことについて、「「演技/素」「本音/建前」の「二項対立」図式に重森は捕われているので、「タイ人ブローカーは呪術を信じていない」と重森は思い込んだ」という思い込みで説明してしまっておりました。思い込みを思い込みで説明しているという、なんとも、どうしようもなく救いがたい状況といえます。このことを気付かせてくれたmiirakansuに感謝致します。どうもありがとうございました。


■何か別の原因について

それでは、なぜ重森は、「タイ人ブローカーは呪術を信じていない」と思い込んでいるのでしょうか?

残念ながら、この理由は分かりません。今後の課題としたいと思います。


■重森がmiirakansuに課した問いについて

1、「「二項対立」は選択不能な認識の前提になっている」とは、一体どういうことか?
2、「「二項対立」は選択不能な認識の前提になっている」という主張を、裏付ける根拠を提出することは可能か? もしも可能ならば、その根拠とはどのようなものか?
3、「タイ人ブローカーは呪術を信じていなかった」とmiirakansuが決め付けてしまったのはどうしてか? 「演技/素」「本音/建前」の二項対立という用語と関連付けて説明せよ。ただし、「演技/素」「本音/建前」の二項対立という用語は用いるべきではないとmiirakansuが判断するならば、その理由を示したうえで、上記の設問に答えよ。

miirakansuには上記の3つの問いを引き受けてもらったのですが、「既に説明した」という旨がmiirakansuのサイトに掲載されていたので、「いつどこで?」と不思議に思いながら、コメント欄を読みまくった結果、それらしき箇所を見つけることができました。

おそらく、それぞれの問いに対して、次の文章が答えとして対応していると思います。

■1と2について

答え:

miirakansu wrote 2006/04/23 22:00
>認識の際に用いるフレームが「二項対立」なのだと僕は考えています。「真であるか偽であるか」をわけることで、初めて認識が成り立つのだと思います。これは「敵/味方」でも、「白/黒」でも何でも構いません。対になるものがなければそのものの存在と意味が成り立たないはずです。

>物事を境界線で区切っていかないと、そもそも認識が成り立たないのではないでしょうか。そして、境界線の区切り方を間違うと、それは間違った判断となり、現実との齟齬を起こします。

■3について

答え:

miirakansu wrote 2006/04/22 03:39
>シゲの言う通り、この時点の僕は、シゲ同様に「タイ人ブローカーは呪術を信じていなかった」と決めつけています。

>この時の僕は、シゲの書いた文章および新聞記事を読み取れていなかったのです。しかし、その原因は「二項対立」にあるのではなく、情報の読み込みにおいて、この時の僕がうかつだったからです。

私が設定した問いに対して既に答えてくださっていたにもかかわらず、再び同じ質問をしてしまい、申し訳ございませんでした。深くお詫びいたします。


■重森がmiirakansuに読むことをお願いした文献について

8月までに目を通しておいて欲しい文献を複数挙げさせていただいたのですが、冒頭で明らかにしたように、いつも通り重森が妙な思い込みを犯していたことが判明致しましたので、文献については無視されてください。

研究でお忙しいところ、時間を取らせてしまい、申し訳ございませんでした。

思い込みの激しい重森のために、貴重な時間を割いてコメントをしてくださり、本当に感謝しております。

まさか、自分の思い込みを、さらに思い込みで説明してしまっていたとは、思いもよりませんでした。めちゃくちゃ恥ずかしいです。穴があったらさらに掘りまくってそのままマグマで焼かれてしまいたい気分です。

これにこりずに、お時間があるときには、またコメントしてやってください。本当にありがとう。


今後ともご指摘ご鞭撻のほど、どうぞ宜しくお願い致します。