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靖国

映画

渋谷に映画を見に行く。会場は満員であった。警備員と映画館スタッフが異様に目を光らせてスクリーンの前に立っている。何かを警戒しているようだ。ピリピリした緊張感がある。

そんな物々しい雰囲気の中、映画『靖国』を鑑賞した。

気持ち悪かった。

手ブレにより画面が上下左右に揺れすぎてしまうドキュメンタリー映画は、やはり苦手だ。

天皇陛下万歳!」と叫ぶ人々が映し出された場面あたりから、私は眩暈と吐き気に襲われた。仕方なく目をつぶる。気分が回復するのを見計らい、合間合間に目を開けてみる。断片的に、次のような映像が目に飛び込んできた。

  1. 旧日本軍の格好をして靖国参拝に臨む謎の爺さんたち。
  2. 「小泉総理の靖国参拝を支持します。」というプラカードと星条旗を掲げたアメリカ人を靖国神社から追い出す人々。
  3. 先祖を勝手にまつるなと神社側に抗議をする台湾先住民族の人たち。
  4. その抗議の言葉をなぜか関西弁に翻訳して靖国神社の人たちに伝える人。
  5. 雨の降る夜に、日本兵の格好をして一人で靖国を参拝する人。
  6. 大勢のSPに擁護されながら靖国参拝をする小泉さん。
  7. 中国人を靖国神社から追い出そうとする人々。
  8. 「本当の歴史」に関するアナウンスの流れる、遊就館の内部風景。
  9. 口から血を流し、しきりに小泉さんを批判し続ける青年*1
  10. 第二次世界大戦時における、刀を持った日本兵の写真や、彼らに殺害された人の生首の写真。
  11. 靖国神社とその周辺の街の明かりをとらえた夜空からの俯瞰図。

中途半端な鑑賞の仕方しかできなかったため、言うのが非常に憚られるのであるが、私はこの映画は「靖国を巡る人々の記録」として位置づけられると考えている。この映画から、なんらかの明確なメッセージを感じとることはできなかった。靖国神社という場所で起こった出来事や、それに関連する人々を淡々と記録しているという印象を受けた。

日本人と非日本人を明確に区別し、前者にとって重要な場所とされる靖国神社から後者を徹底的に排除しようとする自称日本人たちに、「なんでこの人たちはこれほどまでに「自分は日本人だ!」という自覚を持っているのだろう? そしてどうしてこの人たちは日本人と非日本人を明確に区別し、後者を靖国神社から排除したがるのだろう?」という疑問を持つと同時に、「でも、ああやって「天皇陛下万歳!」とか心から叫べたら、とても楽しそうだな。あくまでも自衛の為にアメリカと戦い、愛する家族や同胞である日本人を守るために命を落とした、過去の偉大な「日本人」を敬い、かつ、自らもその末裔であると心から感じることができたなら、健康に良さそうだな。世界との一体感が得られそうだな。行動しやすそうだな。友達がいっぱいできて、孤独感から解放されて、人生の目標が自ずと決まり、生活に張りができて、イキイキできそうだな。」と思ったりもした。

眩暈でふらふらしつつ映画館を出る。手ブレ満載のドキュメンタリー映画は、やはり苦手だ。

非常に気持ち悪かった。

眩暈と吐き気が止まらず、本当に困った。

*1:小泉さんによる靖国参拝に抗議して、周囲の日本人に殴られたのであろうか。