イルカのダブルバインド
第一次の命令 → 「エサが欲しければ水面から顔を出せ」という命令
より抽象的なレベルで第一次命令と衝突する第二次の命令 → 「水面から顔を出してもエサがもらえない」という事実による、「「第一次の命令」に従うことを禁止する命令」(=「エサが欲しければ水面から顔を出せ」という命令に従うな)
アルコール中毒患者のダブルバインド
第一次の命令 → 「お酒をコントロールしろ」という命令
より抽象的なレベルで第一次命令と衝突する第二次の命令 → 「お酒をコントロールできない」という事実による、「「第一次の命令」に従うことを禁止する命令」(=「お酒をコントロールしろ」という命令に従うな)
結論
上記のようなダブルバインドを経験した有機体の中には、やがて学習3を達成するものもいる。
すなわち、イルカは、「水面から顔を出す」という行為がメンバーとして所属している「古い動作をする」という行為のクラスに気付く。そして、このクラスに対立し、かつ、同じ論理階型に存在する「新しい動作をする」という行為のクラスにも気付く。
また、アルコール中毒患者は、「お酒をコントロールする」という行為がメンバーとして所属している「おれは克服できる。ヒトであれモノであれ目の前の対象を絶対に征服できる。そして実際にそうする。」という行為のクラス*1に気付く。そして、このクラスに対立し、かつ、同じ論理階型に存在する「おれは克服できない。ヒトであれモノであれ目の前の対象を絶対に征服できない。そして実際にそうしない。」という行為のクラスにも気付く。
イルカもアルコール中毒患者も、ダブルバインドという矛盾の苦しみを体験することにより、意識されがたいほど習慣化した行為の発動を停止させることに成功する。学習2の結果として、つまり、コンテクストの学習の結果として身に染み付いた構え・行為*2を、ダブルバインドを経ることにより、変容させること*3に成功している。
しかし、どのような条件が揃えばこのような論理階型ジャンプが可能となるのかは依然として謎である。