農業でよみがえるデトロイト

下記のNHK番組を視聴した。


街に空き家が増えると、放火などが起きて治安が悪くなって、人がその街から益々流出して、税収が減って、警官や消防隊員などの公務員を雇えなくなって、さらに治安が悪くなって、デトロイトみたいになるー!という論調であった。

本当にそうなのだろうか。デトロイトのようになってはならない!という前提に疑問がある。一時的に治安が悪くなり、人が減ることは事実であるにしても、土地の値段が下がれば、そこを広大な農地にもできるだろうし、悪いことばかりではないように思うのだが、どうなのだろう。

と思い、調べてみたら、やっぱり、デトロイトで農業が活発化していた。


上記の記事によると、

5万ドル(約399万円)あれば一戸建て住宅が買える地価の安いデトロイトに農場が増え続け、(中略) 4月には地元のミシガン州立大学が巨額を投資して、デトロイト内で都市の農業に関する研究に本格的に乗り出す計画を明らかにしており、都市における大規模農業に発展する可能性も秘めている。

のだそうである。

また、次のような国土交通省による報告書を見つけることもできた。

http://www.mlit.go.jp/common/000116022.pdf

上記報告書によると、

都市農業活動の推進により、イースタン・マーケットにかかる経済波及効果として、この 5 年間の間に 1,890 人の雇用が発生している。また毎週末開催されるマーケットへの来場者は年間平均4万人と 8,000 人増加した。なお、市の法人税収入は 580 万ドル増加し、固定資産税も 990 万ドル増加した。 

そうである。

また、 同報告書によれば、

デトロイトの都市農業活動は、アメリカ最先端のモデルとして注目されていることもあり、現在も新たな団体や社会起業家などが次から次へと活動をはじめている。

ということだそうである。

予想通り、土地の価格が下落したデトロイトでは、農業が活発化しているようだ。

なぜNHKは、番組でこの現象を取り上げなかったのだろう?

NHKの番組の内容は、デトロイトのようになってはならない!と視聴者に思わせるような内容となっていたが、私は、デトロイトのようになっても全然構わないと思う。土地の価格が下がり、農業を行うことが可能となり、雇用が生まれ、コミュニティが再形成され、食料自給率が上がるからである。

このNHK番組のディレクターは、現在の状態を最高の状態と勝手に前提して、その状態が少しでも変化することに怯えてはいないだろうか。自動車産業の没落により、人口が減少して税収が減り、治安が悪化したデトロイトを、避けるべき最悪の状態としてのみ描くことには、問題はないか。その後のデトロイトの状況も、忘れずに報道して欲しいと思う。