年始挨拶と帰省報告
明けましておめでとうございます。
本日16時頃、沖縄から東京へ戻りました!
沖縄の実家では、食事・ラジオ・漫画・テレビ・散歩・お喋りなどを楽しみました。東京では滅多に触れることのないものに触れることができ*1、非常に有意義な正月を過ごすことができました。特に、K-1や細木数子さんや吉村さんが出てたピラミッドに関する番組などは興味深かったです。
沖縄滞在の合間に、統計学を勉強しておりました。しかし、これがまた、思うように進みません。「高校の頃に数学Cまでちゃんと勉強していればよかった(涙)」とやや後悔です。「数学Cなども含めて、今から勉強し直してやる!」と意気込んだ新年でした。本年度は、ますます本格的に統計学へ埋没していく所存でございます。
挨拶がだいぶ遅れてしまいました。
今年も、思い込みの激しい重森に愛のある突っ込みを、どうぞ宜しくお願い致します。
今回の帰省中に脳をめぐった言葉たち
漫才師とその技術─細木数子攻略法
時折、細木さんはお客を叱る。「本気で話していない」と恫喝する*2。恫喝されたお客さんは怯える。この時点で、お客さんは負けた格好になる。
お客を恫喝することにより、細木さんは、占い師としての威厳を、強化および維持しているように思えた。
テレビ局に出演を依頼されたからこそ、芸能人たちは、細木さんの前に客として現れているだけで、テレビカメラの前で、自分が抱えている本当の悩みについて、彼らは質問などしたくはないのではないか? 私はこのような疑問を持った。
多くの芸能人が、「本気で質問していない。本気で話していない。」という理由により、細木さんに恫喝され、次々に涙目にされていった。
しかし、例外が存在した。
トシアンドタカ。「欧米か!」で有名なあの二人である。二人をご存じない方は、下記の動画を参照していただきたい(ちなみに、画面向かって左の人物がタカである。隣の丸坊主の男がトシである)。
そのトシアンドタカの特にタカのほうに、細木さんは、完全にペースを奪われていた。タカは細木さんを手玉に取っていた。タカは、細木さんによる「相手の感情を逆なでするような物言い」を真に受けずに、コントという彼らの文脈(コンテクスト!)にそれを回収していく。タカは、相方のトシが突っ込んでくれることを計算に入れ、細木さんの言動を、彼ら独特のパターンのなかに貪欲に組み入れていく。
たとえば、冷たく高圧的に迫る細木さんに対し、トシアンドタカは次のように対応し続ける(赤で表示した箇所が、タカがまんまと細木さんを飲み込む場面である。つまり細木さんを利用して笑いを取る場面である)。
細木:ちょっと、欧米か?ってのをやって
<もちネタをやるタカアンドトシ>
細木:あんまり面白くなかった・・・
細木:はじめまして
細木:何しに来たの?
タカ:今の「欧米か」を続けていくべきかどうか?細木:わたしの答え聞かなかったの?
面白くなかったって言ったの
タカ:ありがとうございます!細木:もう飽きられんじゃない?
感づいてるんでしょう?細木:で何を聞きたいの?
タカ:「欧米か」に変る新しいネタを・・・
先生の力を借りて僕たちの人気を維持していきたいんです
細木:わたし作家じゃないの細木:で何聞きたい?
タカ:人気が落ちないようにするにはどうしたらいいか
細木:それは人間のセンスの問題だね細木:で質問は?
タカ:アメリカのブッシュ大統領の次は・・・
トシ:欧米か!細木:で次の質問は?
トシ:金運は?吉本興業はあんまりお金をくれないんで
細木:そうでもないらしいよ細木:で次の質問は?
タカ:先生の好きな色は?
細木:私の好きな色は色々
タカ:そういう人間はね〜、非常にね〜
トシ:お前が鑑定するんじゃね!細木:で次の質問は?
タカ:ゆくゆく冠番組もてるかどうか・・・
細木:能力の問題だね細木:あのね!本当にお前たち二人はバカだね
細木:私、ネタあげてるじゃん
それに気がつかないの細木:そんなバカに一流になる、冠番組持たせろって
出来るわけ無いじゃん!
あきらめろ
タカ:努力で何とかならないですか?
細木:センスがないもん!
タカ:団扇だったらもってるんですけどね・・・細木:全然気がつかない?こんなに美味しいネタあげてんのに
バカだねぇ・・・
タカ:バカアンドドジに改名します
細木:そんなつまんない問題じゃない細木:トンチンカン問答のネタやってんじゃんかよ!
トシ:なるほど?
タカ:これが答えだったんですね!トシ:欧米かを捨ててトンチンカン問答を・・・!?
細木:平成20年はうまく行けば冠番組もてるかもね
その前に今の時期やばいんだよね細木:ここ2、3年はトシが足引っ張っていた
タカ:合ってます細木:努力するけど空回りしちゃう
真面目すぎて・・・細木:来年あたりは無理だろうね
もう解散したくなってきているからね
タカ:あってる・・・
トシ:えー!細木:やっぱりそうなの?
タカ:いえ、嘘です細木:本音でトークしなよ
でないと答えないよ
タカ:解散したくないですタカ:トシが突っ込みうまいし「欧米か」ってのも
考えたんで僕がバランス的に足を引っ張ってるんじゃないかって
だから捨てられるのが怖いって言う意識はあります
細木:逆!タカ:・・・
タカ:このー!バシッ(トシを叩く)
タカ:逆じゃボケー!
トシ:そんな分かりやすい変え方ある?細木:今の叩き方は愛情の無い憎しみの叩き方だよ
子供たち見ていたらいけないからあやまんなよ彼に!タカ:アイムソーリー
トシ:欧米か!細木:で次の悩みは?
タカ:えーっと・・・
細木:無いんだろこのボケッ!!タカ:本当に仕事が不安なんですよ・・・
努力してどうにかなるんだったら
細木:そんなの嘘だよ
努力してどうにかなるんだったら、みんな努力してるんだよ!
見えないパワーの話を聞かないと絶対努力だけじゃ勝ち取れないよタカ:僕らにそういうパワーを感じられますか?
細木:なんにも無いよ細木:パワーがつくような勉強してんのかよ?
タカ:どういう勉強ですか?
細木:そんな簡単に教えられないよ
タカ:教えてもらえるって聞いてきたんですけど・・・細木:まあ教えるに値しないね
タカ:わかりましたfrom 細木数子の名勝負!vsタカンドトシ
このように、終始高圧的に接してくる細木さんを、タカは自分の土俵に引き入れて、笑いを取ってみせるのである。まさにこれは芸術である。細木さんに対するタカとトシによる反応の仕方は、相手の力を利用し、軽やかに敵を投げ飛ばす、合気道家の技を思わせる。
さらに、「本気で話せ」と盛んに促す細木さんに対し、タカは、相方のトシに切れてみせた。トシに関する「本音」をタカは、トシにぶちまけてみせた。
その「本音」の内容は、「トシは他の芸能人に突っ込みを入れることができない。相方である自分にしか突っ込まない。勇気出して他の芸能人にもからんでいけよ!」というものであった。タカの剣幕のすさまじさに、細木さんは苦笑している。頭をたれ、すまなそうな顔でタカの「本音」に耳を傾けるトシ。場は、トシとタカだけの会話で占拠された。細木さんの出る幕はない。
すごいなと私は関心した。もちろん、トシアンドタカのタカのほうに。
タカは、本気で語っているようなそぶりを、細木さんにみせたのではないだろうか? タカは本気を演じたのではないか? タカは、どのような内容の話を、どのような仕草とともに、どのような目つきと口調で話せば、「本気で話している」と他人から認めてもらえるのかを知っており、細木さんの前で、その知識に基づいて、絶えず自分を客観視しながら、ここぞとばかりに、「本気で話す人」を、演じてみせたのではないか?
「タカは本気を装っていた」ことを裏付ける証拠を、私は示すことはできない。だから、あくまでこの着想は無根拠的な思い込みである。しかし、テレビの前の私は、細木さんよりも、タカのほうを非常に恐れた*3。
私がユタを買う理由─あるユタ利用者の証言
てんぷら屋のユタを私に紹介してくれたのは、近所の売店のおばさんである。売店のおばさんからもっと話を聞こうと思い、私は売店へ向かった。
売店を訪れた私はまずはじめに、去年の夏にお世話になったことを感謝した。「ユタを紹介してくださり、どうもありがとうございました。」と礼を述べた。
おばさんは笑顔で頭を下げた。「最初はやっぱり信じきれていなかったんですけど、いろいろと参考になることをユタの方に指摘されて、勉強になりました。」と私は続けた。そして再び深々と頭を下げた私に、おばさんもまた頭を下げた。
私はやや唐突に質問した。「ところで、おばさんはいつ頃からてんぷら屋のユタのところに通っているんですか?」
おばさんは次のように答える。
「んー。そうねー。だいぶ前からよー。私もわーっとなったときがあってねぇ。そのときに初めてユタのとこに行ったさ〜」
「わーっとなった」と発言する際、おばさんは両手で頭を掻き毟るような仕草をした。「カミダーリですか?」と尋ねる私におばさんは、肯定なのか否定なのかよく分からないそぶりで次のように答えた。
「ユタに「戦争で亡くなった先祖の供養をしなさいっ」て言われて、いろんな御願でお祈りして、はっさもう大変だったさ〜」
具体的にどういうことがおばさんに起きたのか。このことはまだ聞くときではないと私はなんとなく思った。なので、「わーっとなった」ということについて私はこれ以上質問しなかった。
代わりに、「へーそうなんですかー。あのユタのところには、その「わーっとなった」以降もよく行かれるんですか?」と質問する。
おばさんは答える。
「…うん。あの人は物知りだからねぇ。それまでは私は先祖の供養とかまったくしてなくて。ユタに言われて、仏壇もあの時に買ったさぁ。打紙の使い方とかもユタから教わったさぁ。」
打紙(うちかび)とは、供養の際に霊前で燃やす「死者用の紙幣」である。あの世の世界でもお金は必要らしく、よく御願やお墓でみかける。色は黄色であり、売店では束で売られている。沖縄における先祖供養必須アイテムと言っていい。
「へー。それじゃぁおばさんはユタに会うまで先祖の供養の仕方を知らなかったってことですか?」
と聞くと、おばさんは声を発さずに、こくっと頷いた。
重森家の系譜─なんちゃって根無し草青年による発作的聞き取り調査の顛末
「祖母のオーラルヒストリー」にひたすら耳を傾けた結果、母方の親戚に、占い師がいたことが判明。いわゆる易者として、生計を立てていた人が身近にいた。ちなみに沖縄では、占い師のことを三世相(さんじんそう)と呼んでいたらしい。
また同じく母方の親戚に、超有名な空手家がいたことも判明。その名前は宮城嗣吉という。かなり有名な人らしく、沖縄タイムス社から伝記が出版されている。沖縄に映画館を作った人でもあるらしい。しかし、この人が本当に私の親戚なのか、いまいち確証が持てない。祖母の話の途中で、いきなり登場してきたからだ。祖母は「宮城さんからよく服(私の母用に)をもらった」といきなり語りだした。宮城さんについては、より詳しく祖母から話を聞いてみたい。
「源為朝伝説」についても念のため、祖母に確認してみた。やはり祖母は昔と変わらずYESと答えた。祖母曰く「自分は源氏の血を引いている」 祖母の証言が「史実」として正しいならば、私の先祖は源為朝ということになる。
これは本当のことなのだろうか?
否定することもせず、肯定することもせず、私は祖母のオーラルヒストリーに耳を傾けた。祖母に向かって「そもそも為朝が沖縄に来たという証拠はあるのか?」と、まるで研究者のように問いただすことはできない*4。
今年の夏は、祖母の85歳のお祭りがある。トゥシビーと呼ばれるこの行事に参加するために、私は夏に再び沖縄へ帰るつもりだ。その際にはまた祖母に、昔の話を聞いてみたい。
変わらない私≒変われない私─高校の卒業文集における自己紹介文の分析
*1:要するに、テレビを見たということです。重森が住む東京の家にはテレビがないのです。
*2:どのようにして細木さんは、目の前の芸能人が「本気で話していない」ことを、確信できたのだろうか?
*3:そもそもテレビ番組というものは、演じることを出演者に要求する。多かれ少なかれ、出演者は、なんらかのキャラを作らなければならない。「素」をウリにしている芸能人もなかにはいるかもしれないが、このことはつまり、そのような芸能人は、いつも「素」を出すことを周囲から期待されているということだ。そう考えると、あの場では、タカだけでなく、細木さんに恫喝された芸能人たちも、そして細木さんも、自らの役を忠実に演じていただけのような気がしてくる。タカは本気のふりをし、トシはそれに呼応して計画通りに萎縮し、恫喝された芸能人たちは涙目のふりをし、細木さんも「時折客を恫喝する自信満々で偉そうな占い師」を演じていただけかもしれない。そうだとしたら、あのテレビ番組の筋書き・台本を書いた人物を、私は最も恐れるべきだろう。
*4:なぜなら祖母だから。できるだけ祖母の言うことは受け入れたい。祖母の感情を刺激するような質問や台詞は喋りたくない。私は否定もせず肯定もせずに、そのまま祖母の話を聞いていたい。