『マインド・タイム 脳と意識の時間』におけるリベットの時計実験に対する疑問点

空手の師匠に、ベンジャミン・リベットの研究を紹介された。

師匠は、「我々の意識は、0.5秒前の過去しか認識できないが、それでも無意識によって反応することができること」に言及し、日頃の稽古(特に約束組手の反復)で無意識を鍛える必要があることを強調した。

また、「リベットの研究によれば、0.5秒よりも速い突きが打てれば、ほとんどの相手は反応できない」とも語り、脱力して垂直落下して放つ突きの利点についても触れた。

注文していた本が届いたので、これから読んでみる。

巻末の解説から読み始めたら、リベットの時計実験に対して訳者である下條氏が挙げる疑問点が目に留まった。

リベットは被験者の「行為への意思」の主観的な立ち上げのタイミングを計測するために、「手を動かす」という自然発生的な意図や願望を自分で感じたときの時計針(実際は光の点)の位置を読み取って報告するように、被験者に求めた(第四章)。この手続きそのものについて、心理物理実験としての正確さへの疑問提起が多い(自然的意思の発生のタイミングなんて、本人にも正確に自覚できるものなのか?)。

                             (下條 2021:326)

全くその通りだと思う。

リベットは時計実験で、人が何らかの活動をする際に生じる脳波の発生順序を明らかにした。それは次のように図示できる。

①無意識の脳活動(準備電位)→②行為への意思(意図・願望・自然的意思)→③実際の活動(手を動かす等)

下條氏が取り上げた疑問点は、上記の②に関してのものであり、「そもそも被験者は②を報告できるものなのか?(できないのであれば「行為への意思」に「無意識の脳活動」が先行するなんて言えないよ)」という根源的で破壊力満点のものに思えた。

この他にも疑問点が挙げられていたが、全体を読まなければ理解できない内容であったので、これからこつこつじっくり読んでいきたい。

これが私の今年の目標になりそうである。