『民のドミノ』は凄い曲だ

音アシャギ』というアルバムを借りて、「DUTY FREE SHOPP.×カクマクシャカ」による『民のドミノ』を聴いてみた。

『民のドミノ』は、強烈な曲であった。

バックで流れ続けるバイオリン(?)の重低音が格好いい。つまり、純粋に「音として」聴いていて面白い。また、「聞けーよ!」とシャウトするカクマクシャカ自身の声も素敵である。そして「青い眼くるせ」というメッセージに象徴されるような、ストレートかつ凶暴な詩*1。「くるせ」というフレーズは、「問題あり」と解釈されかねない内容のフレーズである。しかし、「問題あり」と解釈されてしかるべき「沖縄の現状」を最優先して皆に伝えるという目的を、このフレーズは首尾よく達成しているといえる。

以上のことから、私は「民のドミノ」を非常に気に入っている。

早速MP3にして、通勤時に聴けるようにした。

「民のドミノ」は、下記のサイトにて、無料で視聴することができる。

http://www.idubokinawa.jp/artist/duty_free.html

『音アシャギ』に収録されていたDVDにおいて、カクマクシャカが、この曲を作った経緯について述べていた。

要約すると次のようになる。

基地関係の事件があまりにも多発する沖縄において、基地の存在を疑問視せずに、「ああ。また事件があったのか。ふーん。」と、基地とそれに関連した事件の勃発を、日常の一部としてすんなり受け入れている自分。「軍用ヘリが大学に墜落した」という出来事の異常性に、いつしか鈍感になってしまっている自分。このような自分に危機感を持ったことが、この作品を作る動機になっている。

非常によく分かる。

傍から見れば異常としか思えない現実に、何の疑問も抱かずに生きてしまっているという現象は、様々な場所で確認できる。

例えば、「日本社会における労働のあり方」に関しても、同様のことがいえる。ヨーロッパの人々が、「なんで日本の人たちは、こんなに長時間働くのだろう? なんで休まないのだろう? どうして家庭や自分の健康までも犠牲にして働くのだろう? そして、なによりも、どうして死ぬまで働くのだろう?」と疑問を持ちかねないような日本社会における労働のあり方に、いつしか私もすっかり順応して、これを当たり前のこととして受け入れているように、自らが生きる現実の異常性に鈍感になってしまうことは多々あると思われる。

アーティストとは、そのことに警笛を鳴らせるような人のことを言うのだろう。

「民のドミノ」の他にも、「音アシャギ」には良い曲が収録されていた。私が特に気に入ったのは下記の2曲である。

  1. South天加那志
  2. カクマクベストテン

まず、South天加那志について。この曲のPVは、Youtubeで見ることができる。とにかく格好いい。とりわけ、英語なのか沖縄口なのか判別つけ難いフレーズを口にするAWICHという歌手が格好いい。よく見ると、彼女は手の甲に刺青をしている。これはいわゆるハヂチではないだろうか。


次に、カクマクベストテンについて。曲の冒頭で、ポリフォニックなやたら天然っぽい女の子の声が聞こえてくる。これがとても良い。にゃーにゃー言っているだけといえばそうなのであるが、妙な魅力に満ちている。なんだろうこの面白さは。


この『音アシャギ』というアルバムを聴き、古いものも新しいものも貪欲に吸収していく沖縄という入れ物を私は想像した。

また、現実を把握し、それを言葉で伝える技術に秀でたアーティストが、沖縄に誕生していることを嬉しく思った*2

*1:宜野湾 始まり ゆっくり南下 ゲート突き破り 火をつけ車」という歌詞から分かるように、カクマクシャカは暴動のシミュレーションを行っているといえる。過激といえば過激である。しかし、そのようなシミュレーションをせざるを得ないほど、米軍がらみの悲惨な事件が沖縄には多いのである。

*2:ただし、このことがどれほど現実を変革する力になりえるのか、実はよく分からないのだけれど。