打越正行さんの『ヤンキーと地元』を読了。地元ヤンキーの受け皿となっている型枠解体業の社長が、米軍基地との共存を主張しつつ、米軍基地に反対する公務員に対する嫌悪を表明している箇所が、最も印象に残った。
もう一つ強烈に印象に残ったのは、型枠解体業の青年が教員の家の建設作業中に、「勉強しないとこんな仕事しかできなくなるぞ」という趣旨の言葉を教員に吐かれる場面。これは、あからさまな、職業差別であろう。失礼極まりない。
ヤンキー達が、米軍基地反対運動を白い眼で見る背景には、もちろん貧困がある。彼等は学校文化から排除されており、その恩恵に与れない。米軍基地絡みの建設関係の仕事に従事することもある彼等にとって米軍は、重要なお客さん(たとえ下請けであっても)なのであろう。
打越さんはそこまで踏み込んでいなかったが、このようなヤンキー達が、自民党をはじめとする米軍基地維持派に構造的に取り込まれざるを得ないことが、『ヤンキーと地元』を読むことで確信できた。前からそうではないかと推測していたのだが、この推測の裏付けが得られた。
では処方箋は?米軍基地への依存や、暴力がはびこる建設現場を、根本的に改善するには、ヤンキー達が教育の機会を無理なく持てるように、貧困対策と教育の現場自体の改造が必要になるのではないか。具体的には、学級費等の教育に係わる経費を無料にし、学校における一斉授業や行事や校則を合理的に整理すべきだと考える(公立小中学校を、特別支援学校のような、学習の進め方の選択肢が多い場にし、運動会等の行事を自由参加にするとともに、スリッパを履く等の意味不明な校則を撤廃するべきだと考える)。
しかし、ヤンキー達に学歴を付ければ問題解決、というわけではないだろう。これでは、依然として、「勉強しないとこんな仕事しかできなくなるぞ」という趣旨の言葉を吐き捨てる輩が存在し続けてしまう。
型枠解体業者が健やかに生きられる社会が善いに決まっている。たとえ型枠解体業が、誰でもできる仕事であったとしても、教員から差別的な物言いをされたり、残業代が出なかったり、先輩から暴力を振るわれたりといった、不当で理不尽な仕打ちを受けなくて済むような社会。これが実現できればいいのに。