1泊2日儀礼の旅

とある儀礼に参加するため、飛行機に乗り沖縄へ。

那覇空港出てすぐの道で拾ったタクシーの運転手による語り(一部重森の語り)。

  1. 毎月同じぐらいの数の観光客がきている。ピークというのは特にない。
  2. 「沖縄が好きだっていう人が、東京でも周りに多いですよ」
  3. ちゅらさんがテレビでやっていたからね。」
  4. 「だったら本土の人に、基地は見せないほうがいいかもしれないですね。基地を見たら、きっと来なくなりますよね。」
  5. 「……基地を見に来る観光客もいるよ。」*1
  6. 「今回沖縄に戻ったのは、友人の結婚式に参加するためなんです。友人代表でスピーチにしなければならず、かなり悩みました。」
  7. 「はー。大変だねー。」
  8. 「最初に考えたスピーチの内容は、ユタや霊を否定するものだったのですが、友人からそれはやめてくれとお願いされて、急遽内容を変えなければならずちょっと苦労しました。」
  9. 「はぁ。なんでねー?」
  10. 「結婚式にユタ関係者がくるからだそうです。」
  11. 「ははっ(笑)。ユタに会いたくて沖縄に来たと言う観光客も最近多いよ。」
  12. 前原の「リュウセイイン(?)」という店によくあたるユタがいる。いつも行列ができているってよ。
  13. ブラジルに移住した沖縄人の子孫である2世3世が、不景気のために沖縄に帰ってきている。
  14. 49日以内にユタに会いたいとおかぁが言うから自分もしぶしぶユタの家に行ったら、男は待っていろと言われ、話を聞かせてくれなかった。あんたの言うとおり、ユタは男の人を警戒しているのかね?
  15. 「ユタの言うことって、やっぱり嘘なのかね〜?」
  16. 「うー。「嘘」という言葉自体が難しい言葉だと思いますね〜*2。確かにユタはうさんくさいと思います。同じ現象に対して、ユタによって言うことが違いますし*3。でも、病は気からっていうように、ユタによって精神的に落ち着く人がいるのは事実だから、消費者はもっと賢くユタを利用したらいいですよね〜。」
  17. 「ははは(笑)」
  18. 「石垣で、「御願不足だから祖先がお前を病気にしている。御願してあげるから100万払え」とユタに言われた現地の人が、むちゃくちゃユタに腹を立てていました。「祖先が子孫にそんなひどいことするわけないだろ!」ってその人はユタに怒鳴ったと言ってました。でも、5千円ぐらいならその人も怒らなかったかもしれませんね〜。どうしてもユタに頼りたい人はいますから、せめて料金を安く設定すれば問題ないと思います。ユタはカウンセラーと似たような存在ではないでしょうか。」
  19. 「あー。ユタが好きな人はいるからねー。医者半分ユタ半分って、よくいうからねー。あーユタはカウンセラーかぁ。」
  20. ところでユタの語源は?

親族のみが参加する儀礼に間違って参加した感想

  1. 会場に着き、親族のみが参加する儀礼に間違って参加してしまい、契りの杯を飲み干し、うっかり親族の契りを結んでしまう。杯を飲んだら、赤の他人同士が親族になれるという仕組み。三回まわってワンと発音するより、杯を皆で飲み干したほうが、なんとなくより確実に、赤の他人同士が親族になれるような気がするのは、単なる思い付きだろうか。共に同じものを飲食することの効能というのは無視できないような気がする*4
  2. どこで拍手すればいいのか分からない親族の方々が、時折単独で拍手をしてしまい、周囲を見て拍手をやめる。皆、どのように振舞っていいのか分からず、まわりばかり見ている。
  3. 正しく動きたいのだが、どう動けば正しく動いたことになるのか分からず、いたずらに緊張する。この緊張は、儀礼参加者にどのような影響を及ぼすのか? 「赤の他人同士が親族になる」ことが達成されるために、つり橋効果が利用されているとはいえまいか? ドキドキが構成的規則を生きることにもっともらしさを与えている可能性はないか?*5
  4. 神主が言っていることが分からない。わざと分からないように発音しているのか? 「かしこみかしこみもうす」というセリフと、「きよめたまえはらいたまえ」というセリフは聞き取れた。
  5. 指輪の交換があってびっくり。着物を着ていながら、やることがカトリック風だ。
  6. ご神体らしき鏡に向かって皆が礼をするが、神のことよりも、「この場で正しく動くこと」で皆頭がいっぱいのようだ。動きがぎこちない。おずおずとしている。
  7. 茶髪の巫女さん。儀礼の始まる前に、別室へ行く。再び巫女さんが現れると、BGMが流れ始めた。雅楽風の曲。さてはスイッチを押したな。
  8. 神主からこんぶ(?)をもらう。なぜこんぶ? 食べていいのか?

親族のみが参加を許される儀礼参加後、披露宴という名のイベントに参加。

  1. 司会は偉い。言葉で世界を分節しまくる。
  2. なぜ市議会議員がきているのだろう。
  3. 途中、エイサーやかきやで節などの郷土芸能をステージで堪能。
  4. 友人代表としてマイクを握り、新郎をほめまくる私。泡盛4杯飲んでいたので、ちょうどいい具合。
  5. 最後にカチャーシーして、ステージで踊りまくる。年配の女性が一番楽しそうに踊る。同級生で新郎を胴上げ。「ばんざーい」とか言って胴上げ。

2次会の場にて

  1. 同級生たちで主役2名を囲み、根掘り葉掘りきく。主役2名、素直に経緯を白状。とりあえず「このこの」と新郎の腹をどつく真似をする。
  2. 「スピーチはどうだった?」と聞くと、「よかった」と新郎。肩の荷が下りた。こつこつとスピーチの台本を作り上げてきたここ一ヶ月の苦労が報われて、素直に嬉しい。
  3. 「重森もそろそろ儀礼しないの?」とさまざまな人に聞かれる。「うーん。」とか「恋人が多すぎるから(儀礼したくない)」と冗談ぽく言って逃走。
  4. みんな幸せそうに笑っていたから、儀礼はきっと悪いものではない*6

翌日

  1. モノレール首里城駅の下で、「えー。にーさん。首里城までタクシー使ったらいいさ!」とタクシー運転手らしきおじさんに声をかけられる。首里城は200メートルほど先にある。このおじさん、7月に沖縄に帰ったときに、ちょうどこの場所で、私の母の車に横から突っ込んできたくせに、逆ギレして文句を言ってきたやな奴だ。7月とくらべると私の髪が短くなっていたので、私が7月に遭遇したことのある人間だとは気づかなかったようだ。そして今回は、このおじさんは私を観光客と勘違いしたうえに、歩いてすぐそこにある首里城までタクシーで連れて行こうと企んでいる。こいつはすぐ近くにある首里城までわざと遠回りをして私を騙そうとしていないか? 沖縄出身の私を見え見えの手口で騙そうとしているおじさんに、かなりむかついたので、「やー。たっくるすよ?」とすごんでやろうかと一瞬思ったが、まっすぐ目を見て「いりません」と答える。
  2. 首里を散歩する。
  3. 那覇の公設市場や平和通りをうろつく。市場の果物売りのおばちゃんが、酔っ払いとおぼしき青いTシャツの丸刈りの男にからまれている。「この酔っ払い!この酔っ払い!」と言いつつ、いちゃもんをつけてくる酔っ払いのおじさんをハエ叩きで叩いている。おばちゃんは酔っ払いを追い払うべく、酔っ払いを何度も叩いているが、叩き方が弱い。どこかで手加減している。「もっと強く厳しく叩かないと、酔っ払いは追い払えないのではないか」と勝手におばちゃんを心配する。
  4. 青信号の横断歩道に堂々と入ってくる車あり。すかさずナンバーを見るとやはりYナンバー。案の定中には4人の海兵隊員らしき男たち。むかつく。
  5. 桜坂の映画館付近を歩く。公園の近くで煙草を吸っている不良(高校生)と目が合う。体がでかく、目つきが鋭い。さっきの海兵隊と対等に喧嘩できそうだ。「海兵隊よりもっと凶暴で強い不良になれ」と勝手に不良の成長を願う。
  6. パレットくもじ8階に行き、沖縄関係の書棚で本を物色する。
  7. 『ウチナーンチュときどき日本人』(照屋寛徳 ゆい出版)を立ち読みする。
  8. パレットくもじ9階の沖縄そば屋で474円の沖縄そばを食べる。うまい。
  9. 道行く女の人にみとれる。
  10. モノレールに乗り、空港に向かう。
  11. 観光客がちらほら。
  12. カップルが多い。ちょっとうらやましい。
  13. 羽田に飛ぶ。
  14. 森山直太郎「風になって」はなかなか風流。
  15. 終電に無事間に合い、家に辿り着く。任務完了お疲れ様☆

*1:運転手のおじさんは明らかにしばらく沈黙した。「刺激してしまったのではないか?」と私は不安になった。おじさんの親や親族が、基地で働いていたりする可能性は非常に高いのに、妙に挑発的なことを言ってしまったと私は反省した。しかし、挑発的なことを言わないと駄目だという思いもあった。

*2:おじさんは嘘という言葉をどのような意味で使ったのだろう?

*3:ある何らかの現象に対する語り方が違うだけでなく、そもそも何が問題とするべき現象なのかについて、ユタは意見が異なる。とはいえ、どのユタも先祖や神がらみの話をしがちなのではあるが。最近は宇宙人についても言及するユタもいるらしいが。

*4:同じ食物を食べた人々は、同じ属性を持ってしかるべきであるという私の思考自体が、呪術的ではないだろうか? 感染呪術? メトニミー? あるいは「草の三段論法」? アブダクション? 「A家は酒を飲む」「B家は酒を飲む」「A家はB家である」というような論理。

*5:三回まわってワンと言う方がよっぽどドキドキしないか?

*6:ただ、「結婚できないことは不幸だ」と強迫的に思いつめて結婚に走ったり、寂しさを紛らわし、性欲を処理するためだけに結婚を利用することは、どこか間違っている気がする。また、結婚したものの、いろいろあって離婚したくなったにもかかわらず、金銭的経済的な問題で女性が離婚にふみこめず、いやいや結婚しているケースを見るのは悲しい。両親のイライラが子どもに悪影響を与え、非常に不幸だ。男も女もどちらも金持ちで経済的に自立しているなら、すぐに離婚できるんだけどな。