「自分が悪い」という語り口

「自分が悪い」という語り口を用いて自らの境遇を説明する人々が、現在の30代に多く見られるという。

http://www.veoh.com/browse/videos/category/animation/watch/v19699460q6pg6yzA

むかつく災因論的な語り口だ。

どうすれば、「自分が悪い」という語り口に呪縛されている人を、その呪縛から解き放つことができるのだろうか?

おそらく「そうではない。あなたは悪くない。」と優しく言って聞かせても、そう簡単にはこの呪縛は解けないと思われる。

以下、上記のドキュメンタリーの感想代わりに、思いつくままその方法を列挙してみる。

  1. 「どのようしてあなたは「自分が悪い」ということを立証できるのか? 世の中そんなに単純じゃない。様々な要因が絡んで現象というものは生起しているはずだ。自分の周囲に起きた現象を、自分だけを原因にして説明できる根拠を提示してみろ。」という認知療法的な突っ込みを彼らに行う。→ そんな頭でっかちな質問に答えられるほど気力が残っていないかもしれないので×。
  2. 「自分が悪い」と口にするたびに、電気ショックや大きな音で恐怖を与える。人権侵害にならないような仕方でこのような仕組みを考案し実行する。→ たとえ「自分が悪い」と言わなくなったとしても、内心ではそのように考え続けている可能性があるので×。
  3. 「いいえ。あなたにとりついている妖怪が悪いのです。」「いいえ。ビックバンが起きたから今現在が存在するのでビックバンが全て悪いのです。」「いいえ。あなたではなく、あなたの脳のセロトニンやアドレナリンや神経細胞の数が悪いのです。」等の「別の語り口」を一日に何回も聞かせる。→ この処方箋により「自分が悪い」という語り口から脱することができたとしても、「自分が悪い」という語り口に浸されたなら、再び「自分が悪い」という語り口を用いて世界について語るようになるので×。
  4. 「自分」という言葉の意味について思考させ、これがそもそもあやふやで曖昧で全く一貫性なく常に変化し続けている流動的な代物であることを感得してもらう。→ 私自身が自分が何を言っているのか良く分からないので×。
  5. 40万円ぐらい持たせて海外に無理やり旅に出てもらい、「自分が悪い」という語り口が存在しない地域の生活様式に2ヶ月程触れさせる。→ 引きこもりがちな人には向かないので×。
  6. 「自分が悪い」という語り口に縛られたままにしておきつつも、生活用品や住居や食料に困らない程度の物的かつ金銭的援助を、国家が責任を持って惜しみなく行う。→ これがうまくいっていないから問題なんだよ×。自立を志向しすぎるからこそ他人や国の援助をかたくなに拒む。仮に福祉制度が充実していたとしても、利用者が利用しようとしないならば、意味がない。
  7. 「誰かに助けを求めずに孤独死や餓死をしたら地獄に行く。もちろん窃盗や殺人をしても地獄に行く。」というセリフを、有名な占い師がテレビやラジオで喋る。同様の内容を占い師の著書に掲載する。→ この占い師を信じている人にしか効果がないので×。