ブックカバーチャレンジ2日目:三四郎
二十歳前後に読んだ小説の中で、最も色鮮やかに記憶に残っているものです。
物語の舞台は東京なのですが、大学入学を機に沖縄から九州に引っ越した自分自身と重ね合わながら、あっという間に読み終えました。
東京と学問と女性。
三四郎という平凡な田舎学生が、この3つと出会う様子が生き生きと描かれています。
序盤でいきなり人妻に誘惑されたかと思いきや、偉大なる暗闇こと広田先生の言葉にガツンと衝撃を受ける三四郎。穴倉で研究に没頭する野々宮さんや、調子の良い与次郎や、ストレイシープ美穂子との出会い。
「(日本は)亡びるね」という宣告が通奏低音として不気味に響きながらも、三四郎の目に映る東京は、何かが猛スピードで蠢めいているような祭りの気配に満ちています。
広田先生や美穂子の言動から読み取れるように、偽善、あるいは、自己愛がこの小説の(というよりも夏目漱石自身の)重要なテーマであるのかもしれませんが、それらが霞んでしまうほど、本郷・上野・根津近辺を徘徊する三四郎が出会う事物は全てが光り輝いて見えます。
のちに東京は北千住に暮らして、本郷・上野・根津近辺を自分が徘徊することになるとは、全く夢にも思いませんでした。