読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

本郷散歩

仕事に余裕が出てきたため、というよりも、先月残業しすぎたため、重森さんは率先して今月は、早く帰るようにしている。

つい先日、大雨の降った月曜日に、『残業ゼロの仕事力』という本を、重森さんは駅ビルで立ち読みした。その本では、「残業込みで仕事をすると逆に生産性が低くなる。仕事するときは定時内で集中して行え。」という主張がなされていた。この本の著者は元社長であり、残業大好きな社員と熾烈な戦いを繰り広げた末、やっと残業ゼロの状態を実現させたのだという。定時になると社内の電気を自ら消し、怒った社員が再び電気をつけたら、負けずにもう一度消したりと、本当に地味な努力の末、残業ゼロは達成された。

残業が嫌いな重森さんは、これだとばかりにこの本の主張を脳にインプットした。

そして重森さんは今日、「残業は、会社にとっても悪いことなんだ! 定時に帰ることはまるで、職場という戦場から逃亡するかのような行為であるが、そもそも、逃げることから逃げちゃ駄目なのだ! 逃げちゃ駄目なのだ!」と自分に言い聞かせ、やがて「お疲れ様です!」と突如言い放ち、夕暮れ色に染まる街並みに、ついに自らをあずけてしまった。

重森さんは、風の強い夏の午後が好きだ。そして同じぐらいに、夕暮れ時の、坂のある風景が好きだ。

珍しく18:00前に会社を出た重森さんの眼に、鮮やかな青空と、形のよい白い雲を備えた、本郷界隈が映る。

さて今日はどこを歩こう。

重森さんは散歩が大好きである。それも、大好きな風景の中を歩くことが大好きである。夕暮れ時の本郷は、散歩をせずにはおれない街として、重森さんには感じられた。

重森さんは、本郷の大通りを歩いたことは何度もあったので、今日は積極的に路地を歩くことにした。

重森さんは驚かされた。本郷の路地裏は、昭和を思わせるような趣のある家屋と、謎のお店のオンパレードであった。特に、旅館が多いことに重森さんは驚かされた。住宅街とばかり思っていたのに、狭い路地裏を抜けると、古そうな旅館が突然現れる。

今回見つけた旅館の中で、重森さんが最も素敵だと思った旅館は、鳳明館という旅館であった。大浴場付きの風流な旅館。入り口が木造で、映画に出てきそうな建物であった。宴会は70名まで可能。コース料理は5250円から。「いつかここで大浴場に入ってから酒と美味い料理をゆっくり堪能してみたい。」素直に重森さんはそう思った。

次に謎のお店としては、ユーミンという名のお店がダントツで謎な雰囲気満載であった。一見、普通の喫茶店のように見える佇まいなのであるが、「ACCジュース」と書かれた看板が備え付けてあり、どうしてもインパクトが大であった(どうやらACCジュースとは生野菜ジュースのことらしい。)。

その他、旅館から出動してきたばかりなのかどうかよく分からないが、リュックを背負った長身の異国のカポーが、やたら周囲を警戒しつつ前から歩いてきたり(道に迷っていたのだろうか?)、塀の上で寝ていた、赤い首輪をした黒猫と眼が合ったり、文京総合体育館付近の建物は、背丈の高い木々と壁が印象的な豪邸ばかりであったりと、様々な発見と遭遇があった。

水上音楽堂付近で見た夕陽もとても綺麗であったし、重森さんは、「今日は実りの多い散歩ができた」と心から思った。

夏の定時後は散歩に限る。

風呂上りに「明治ブルガリアのむヨーグルト」を飲み干した後、重森さんは自宅で、今日のブログを、上記のように締めくくった。