験を担ぐ

2ヶ月ぶりに近所の美容室へ。年末の様子、新年の抱負、最先端の脱毛技術、床屋と美容室の違い。様々な話題について語り合った後、ヘアワックスを美容師さんにつけてもらう。

普段から私は、ジェルやワックス等の整髪料を全く使用しない。しかし今回は、「整髪料どうしますか? 今回もなしでいいすか?」と尋ねる美容師さんに、「いえ。今回はお願いします。」と返事をしてみた。

滅多に使うことのない整髪料を、あえて頭につけることにより、「今年一年がついている一年でありますように」と、験を担いでみたのである。

美容師さんは、いつもとは異なる私の返答に、当惑の表情を浮かべた。しかし、私の目論見を説明すると、「なるほど!」と笑ってくれた。

はたして、上記のように験を担ぐことによって、今後私に生起する出来事のうち特に喜ばしい出来事は、今回試みた「ヘアワックスの使用」に起因するものとして私に経験されていくのだろうか。

残念ながらそれはないと思う。「ヘアワックスの使用」が、これから私がむかえるであろう喜ばしい出来事の原因の位置を占めることは、絶対にないと思う。

とらわれることができないために、みすみす逃してしまう素晴らしい体験は、一体いくつあるのだろう。

などと考えつつ、歩いて家に帰った。