ブックカバーチャレンジ7日目:とても普通の人たち 北海道浦河べてるの家から

7日目。『とても普通の人たち 北海道浦河べてるの家から』著者:四宮鉄男

べてるの家の実践を知ったのは、大学1年の秋頃だったと記憶している。

「幻想妄想大会」の記事を某所の掲示板で目にしたことが切っ掛けであった。

最も面白い妄想を経験して披露した人に賞を与えるという、否応なく特定の状況に立たされた個人のそのままを肯定するという、優れた企画に思えた。

以来、べてるの実践を私は注視している。

普通を目指して病を治すのではなく、病をそのままにして生きる。病は厄介なものであるが、隠蔽したり拒絶しても仕方がないので、むしろ病をウリにして商売をする。ミーティングしても問題が解決されるとは限らないが、対等な立場で言いたいことを言い合って(言いたいことを我慢すると病が悪化するため、言いたいことを皆が言い合う。それゆえ非難や批判が飛び交い、ブチ切れる人が続出)、お互いが何を考えているのかを知る機会としてミーティングを継続する。

べてるの家の存在を知ったことで、弱さや病を克服対象にするのではなく、ジョジョの奇妙な冒険におなじみのスタンドのような能力・特性として積極的に価値を見出し(病のせいで働けないということにさえも)、活用することができるのかと、新鮮な驚きを覚えた。

幻聴もそうですし、妄想の世界も否定的に見る必要は全くなくて、とにかく、みんなで語り合う場に持ってきて、経験として話をすることによって、多くの人たちを解放したり、笑いを引き起こしたり、笑いながら話しているうちに、自分の中にも確かにおかしなところがあったなあという、自分自身を客観的に見る視点が生まれてきたりするんです(230ページ)

しかし非常に残念なことに、べてると関係の深い「べてぶくろ」という施設で、性犯罪の隠蔽が起きていたことが、最近(2020年5月26日)告発されている。

事実だとしたら、これまでべてるが積み上げてきたものを自ら破壊するかのような酷い事件である。

べてるの関係者が被害者に誠実に向き合うことを、べてるの一ファンとして、私は強く希望する。