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運玉畑で今日も私は穴を掘る

今日の作業

  • 運玉畑
    • 穴掘り(by私)

段々と、穴を掘ること自体が目的化しているような雰囲気ですが、穴を掘るのはあくまで水を確保するためであり、もしも水が一定量、半永久的に溜まる地点を見つけられたならば、この作業は終了となるのです。

しかし、こうも穴掘りに時間がかかり、肝心の水が見当たらない状況が続くと、自分は何をやっているのだろう、穴掘りしかしていないな。穴掘りって結構難しいな。穴をひたすら掘る私は、これまでも、そして今も存在している日雇い労働者や炭鉱労働者と、穴を掘るというこの一点を通してつながれるか否か、という問いを立ててみるというのはどうだろうか。

掘っている土や穴を掘る目的は異なれど、穴掘りという行為自体は共有しており、この一点のみに関して、私は、彼らと、分かりあえるのではないか。

たとえば、穴掘りの過程で、痛くなる身体の部位は、体の構造が似たようなものであるからこそ、彼らと私で一致してくるはずであり、そのことで生じる思考も、おのずと同じような内容になるのではないか。

穴掘り作業の繰り返しにより、「もっと効率的に掘れないかな」と考えることは、彼らにも私にも起こりえるだろう。次第に体の動きも、筋肉のつき方も、似てくるであろう。これらの相似が彼らと同じような発想や想像を私に可能にさせるのではないか。

何も独りよがりに、彼らの思考や思いを、「俺も穴掘りしたことあるから分かるんだもんねー」と、代弁するつもりはないのであるが、状況は異なるとはいえ、穴を掘るという作業を通して、これまで穴を掘ってきた人と分かりあえることも少なからずあり、その射程とその限界を見極めることは、人類学や歴史学や人文科学系の学問にとって、それなりに意味のあることではないのだろうか。

最近解いた2013年度のセンター試験の評論文で、小林秀雄が、刀の鍔の模様として仏教関連の図像(五輪塔や経文)や、鶴が彫られていることに関して、様々な「追体験」を経ることで、これらの模様が仏教関連の図像や鶴である理由・必然性を考察していたのだが、ここでの「追体験」に、今私が従事している「穴掘り作業」は該当するように思う。

「追体験」という言葉は、過去に誰かが体験したことを、そっくりそのまま寸分違わず体験するかのような、印象を与えてしまうので、この言葉を使うことは本来適切ではないかもしれないのであるが、小林秀雄の文章は、「似たような経験をすることで初めて見えるもの、分かるもの、気付くものも確かにあるのではないか」と感じさせるものであった。

具体的には、小林は、古いタイプの説教琵琶の男らしくて明るい演奏を聴き、あるいは、諏訪神社にて逞しい姿をした鷺を見て、刀の鍔の模様に、仏教関連の図像や鶴が採用された理由を導き出す。小林は、無学な戦国武士達に仏教思想が浸透したことを、説教琵琶の勇敢な音色を聴いた経験から一足飛びに確信する(仏教は芸能とともに当時存在していたはずであり、その音楽は勇敢で人をわくわくさせるから、無学な戦国武士に仏教は浸透したのだというのがその理由)。また彼は、鶴丸透が誕生した理由を、諏訪神社で自らの頭上近くに舞い降り、緊張させた四肢を露にした鷺を見て、すぐさま了解する(諏訪神社で見た鷺がカッコ良くて生命力に溢れていたからというのがその理由)。

「追体験」に、物事を判断する際の根拠として言及することは、どの程度許されているのだろう。小林秀雄の主張は彼の思い込みに過ぎず、彼は自らの思い込みを「追体験」で正当化しているだけではないか。という疑問ももちろん浮かんでくるのであるが、「似たような経験をすることで初めて見えるもの、分かるもの、気付くものも確かにあるのではないか」という着想も捨て難いのである。

ということを、穴を堀り続けていると、ついつらつらと、考えてしまうのでありました。

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時刻は15時。さあ今日も掘るぞー!

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今日もバスタブには水があります。

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前回必死に掘った穴には水はありません。

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1時間かけて、バスタブの真横に、バスタブと同じ深さの穴を掘りました。疲れたー><。

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「ビリビリビリ」という音がしきりにするので、振り向くと送電線がありました。どこかで電気が漏れているのでしょうか。

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疲れたら、休憩を兼ねて畑の観察です。これはタマネギ。葉の先端が黄色くなっているのは栄養不足だと思われます。

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すっかり根付いたサツマイモ。葉が復活しています。

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こちらのサツマイモは死んでいる模様。残念です。

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この運玉畑の土は、やはり元気がありません。土から生命が全く感じられないのです。なんというか。全然セクシーじゃない。セメントのような、空虚な、冷たい土。全くエロスがないです。

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連日の穴掘り作業で、すっかり塹壕状態です。塹壕作りに借り出された兵士と私は、穴を掘るという共有経験を通して、果たして何かを分かりあえるのでしょうか。

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バスタブの穴よりも、深く掘ったものの、一向に水の気配がないので、バスタブにトンネルを掘ってみることにしました。

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かなり怪しい人工物になりました。まるで墓です。穴掘りの最中に、珍しくミミズを発見しました。かなり深い場所にいたことから、畑の表面の土にはエサとなる生き物(微生物や虫)が全くいないことが推測できます。穴を掘ることで、ミミズの住める地層の土を、畑の表面にかきだせば、少しは畑に精気が戻るかもしれません。

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ついに、水が染み出してきました!

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ただし、トンネルの上からです!

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ということは、バスタブの穴に溜まった水が、染み出している可能性が大です。バスタブの穴には水があるのに、なぜその真横の、バスタブの穴よりも深い穴には水がないのか。謎です。

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疲れたので今日の作業は終了です!あー指が痛い!まがいなりにも水が染み出したし、ミミズのいる地層の土を畑の表面に移動させることもできたので、穴掘り作業は無駄ではなかったぞ。満足です!