人類学

「ウチナーンチュ/ナイチャー」の構図

多田氏が、沖縄出身の研究者に対する反論の文章を、ブログにアップしていた。上記の文章を読み、私はギクリとした。多田氏は、上記の反論文を、次のような言い回しで結んでいる。 最重要点だけ繰り返そう。「琉球人/非琉球人」の構図を学者が信じて使うのは…

素人の乱

今日は、『素人の乱』という映画を新宿某所で鑑賞する予定。開演までの時間を、近くの喫茶店で統計学*1の勉強をして潰す予定。それでは行ってまいります。 感想 胡散臭い雰囲気漂う歌舞伎町裏界隈を抜け、重森がたどり着いた新宿ネイキッドロフトには、定員5…

いかにして事実は特定されうるのか?

高校歴史教科書で沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」への日本軍関与の記述を修正・削除した文部科学省について。「教科書検定問題というのは事実検証の問題」という仲里氏の意見に私は全面的に同意する。「検定調査審議会の専門家が決めたもので撤回できな…

フィールドにおいて超常的な存在を知覚してしまった人類学者はいかなる民族誌を書くべきか?

共同研究室で石井先生の『精霊たちのフロンティア』を読んだ。すごい。びっくりした。まさかこのような記述に遭遇するとは思わなかった。石井先生は調査地における超常的な存在である「小人」を、その目で見てしまったようなのである。私は、現地の人々が語…

文化人類学解放講座・映像篇

一橋大学で行われた下記のイベントに参加してきた。文化人類学解放講座・映像篇オールナイトだった。4時頃激しい眠気に襲われ、演習室の床で仮眠を取る。気がつくと翌日の9時であった。イベントは既に終了していた。11時半まで共同研究室で時間を潰し、いん…

パワーブレンド

様々な人から、一度はそこに行くことを勧められていたので、会社帰りに南千住で途中下車した。しばらく通りをふらふらとさまよう。「あの〜道をお尋ねしたいんですが、この近所に、催眠術を使うたこ焼き屋さんをご存知ですか?」酒屋の親父はすぐに教えてく…

イルコモンズ・アカデミー

6/17(日)に美学校にて開催されたイルコモンズ・アカデミーに参加してきました。美学校*1に着いたのは、イベント開始30分前の13:30。ヲダさんをはじめスタッフの方々が、ちょうど会場作りの真っ最中でした。「すいません。窓に暗幕を張るのを手伝ってくれま…

劇に入り込む

演劇鑑賞(1回目) 学部時代の指導教官とそのゼミ生たちが、演劇を鑑賞するためだけに、わざわざ上京してきた。彼らに誘われて、私も演劇鑑賞に同行した。率直な感想を言うと、私は全く感動できなかった。物語が、過去から未来へではなく、未来から過去へと…

今日の収穫

天気が良かったので、外出してみた。とりあえず空を見ながら歩く。青い。木々の緑が映える。風も強く、Tシャツのうえに羽織ったシャツが騒がしい。ミュージシャンのプロモーションビデオとかでありがちな、風がどっかから吹いているおかげで髪やら服やらがバ…

統計学の胡散臭さについて

統計学(確率を含む)を相対化できる人たち 私は、統計学について全てを網羅しているわけではないので、「統計学は胡散臭い!」と自信をもって断言することはできない。しかし、私の周囲には、「統計学は胡散臭い!」と断言して憚らない統計の専門家がいるの…

アコークロー

下記の映画予告を見て、ふと昔のことを思い出した。http://aco-crow.com/私が小学校3年生の頃。近所の森を徘徊することを趣味としていた私は、ある日、年のころ50から60代の男性に出会った。気絶しそうなほど美しく激しい夕暮れ。木々の緑が次第に漆黒へと…

原因特定の方法について─現象を我々はどこまで複雑に記述すべきか? そして原因と非原因を分かつ基準とは何か?

コレラの原因が細菌だという事実を発見したのは、ドイツの医学者コッホ(Robert Koch)である。しかし、この発見も、すぐに受け入れられたわけではなかった。コッホの説に反対していた医学界の権威ペッテンコーファー(Max J. von Pettenkofer)は、やがて、…

配車係をバイトにすることに反対しているのは、バイク便ライダーたち自身なのである。彼ら自身が、このトリックを指示し、はまっている(阿部 2006:123)。 トリックにはまっている彼らに、トリックにはまっていることを指摘したとしても、トリックにはまっ…

プロジェクト5・アートと民族誌

今日はこれを見に行きます。「プロジェクト5・アートと民族誌」会場は、家から歩いて約5分。 感想 ヲダさんが熱かった。見習いたいと思う。どこがどういう風に熱かったのか? ヲダさん曰く、「アートは、アラート(=警報)である。」ヲダさんはひとしきり…

ネット上に神霊は存在しないというのなら、そのことをちゃんと証明してくれ

気になる記事を見かけた。ネット参拝は是か非か、初詣で前に揺れる神社界神社本庁が、「ネット上に神霊は存在しない」という見解を示したという。しかし、神社本庁はどのようにして「ネット上に神霊は存在しない」ことを証明したのだろう?ネット上で参拝を…

ナチュン

びっくりした。これにはぜひ目を通さねばと思った。『ナチュン』アフタヌーンという雑誌にて、今年の8月から連載開始されたこの漫画の作者は、沖縄でフィールドワークを行ったことがあるという。私はこの作者と同じ場所をフィールドワークしたことがある。漫…

保苅実さんの主張を私は正しく要約できているのだろうか?

「現地の人の語りを「史実」として扱え」と保苅実さんは主張していないのでは? 保苅実さんが立てた問いを私は、前回のエントリーにおけるコメント欄にて次のように要約した。 「現地の人にとって「真摯な経験(リアルな経験)」であれば、それだけでこれら…

霊に対する京極堂のスタンス

文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫)作者: 京極夏彦,笠井潔出版社/メーカー: 講談社発売日: 1998/09/14メディア: 文庫購入: 13人 クリック: 282回この商品を含むブログ (435件) を見る水木しげる&京極夏彦 ゲゲゲの鬼太郎解体新書作者: 水木しげる,京極夏彦出版…

宗教という言葉

ネット上をさまよっていると、下記の記事を偶然見つけた。 「麻原だけは許せません、ではお知らせです」/普通のオウムと2億1千万の普通以下、「宗教」という言葉について脳髄反射的に思ったこと。◆学会においても日常生活においても、私はよく見かける。「…

所詮我々はカテゴリー化してしまう生き物なのだろうけれど

今日は御茶ノ水でSASのadvancedの資格試験を受けてきた。ちょっと上級コースの資格だったのだが、合格であった。良かった良かった。試験料が約2万円もするので落ちると痛い。自分へのご褒美として、御茶ノ水付近を飽きるまで散歩することにした。御茶ノ水は…

異界談義

異界談義(角川書店 国立歴史民俗博物館編) 異界談義作者: 池上良正,山田慎也,京極夏彦,島村恭則,常光徹,内田順子,小松和彦,鈴木一馨,国立歴史民俗博物館出版社/メーカー: 角川書店発売日: 2002/07メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 11回この商品を含む…

重森による「幽霊の不在証明」

あれはいつ頃だっただろうか。沖縄出身者同士で飲んでいたときの話だ。ある人物が、「海で溺死した女の幽霊が出るので、ユタに頼んでお払いしてもらうと、幽霊が出なくなった」という話を恐る恐る話した。私はその人物に、次のように言った。「幽霊などいな…

シャーマン紹介ビジネスを思いついたときに気付いたユタに対する差別意識

会社で昼休みにmsnのページを見ていたら、次のような見出しを発見。沖縄の霊能者「ユタ」って知ってる?編集部が独占取材!さっそく見てみると、ユタがどーんと紹介されている。msnのページは日本中の多くの人が見ていることだろう。そのトップページに「ユ…

1泊2日儀礼の旅

とある儀礼に参加するため、飛行機に乗り沖縄へ。 那覇空港出てすぐの道で拾ったタクシーの運転手による語り(一部重森の語り)。 毎月同じぐらいの数の観光客がきている。ピークというのは特にない。 「沖縄が好きだっていう人が、東京でも周りに多いですよ…

人類学バトルの感想

人類学バトルの場で交わされた議論について、いまさらながら感想を述べる。 議論の間、私がずっと疑問に思っていたこと 「人類学は役に立つべきか?」と題されたこのシンポジウムにおいて、終始私が気になっていたのは、「何を根拠に挙げれば「人類学(的研…

秩序への埋没と距離化の同時性(二重性)について

大杉高司 2006 「映画『Intervista』と人類学」『ポスト・ユートピアの民族誌』131-135 秩序への埋没と距離化の同時性(二重性)を、人類学をはじめとする社会科学はどのように記述できるのか(大杉 2006:133-134)。 秩序への埋没については、古典的な構造…

なぜ偽薬は効くのか?

周知のように、偽薬(プラセボ)は実薬ではない。偽薬はにせものである。しかし、病者の症状を改善してしまうことがある。この理由が知りたい。このメカニズムが知りたい。騙しているのに、治療が実現してしまう点が、非常に興味深い。それだけではない。「…

日本文化人類学会第40回研究大会

6/3(土)〜6/4(日) 東京大学駒場キャンパスにて■プログラムhttp://www.jasca.org/meeting/40th/program.html http://www.jasca.org/meeting/40th/program2.html■見所やはり「呪術」に惹かれる。 なんとなく、呪術に関する発表が多いような気がする。 6月3日(…

複雑な現象を複雑なままクリアカットに記述(把握)すること

Cocco先輩が沖縄の基地について何か書いている。楽園私の従姉妹たちは、沖縄人の母と米軍兵士の父との間に生まれたので、彼等もアメラジアンということになるのだろう*1。あまり深く聞いたことはないが、従姉妹たちは、自らの存在そのものについて悩み苦しむ…

「虚/実」(の構図)を「虚/実」の「二項対立」として誤解していた私

「虚/実」(の構図)とは 今、私は北九州にいる。大学のゼミ室で、この文章を書いている。飛行機やバスに乗って北九州へ移動しながら「虚/実」について考えた結果、下記のような結論(常に暫定的な)に達した。私の修士時代の指導教官が用いていた「虚/実…