PB2100_初等教育課程論_2単位目



1.小学校教育課程の編成と教育方法に関連し、学力を伸ばすためにはどうあるべきかの検討

 我が国の全ての小学生の学力を伸ばすには、「少人数編成のクラスの導入」と「低学力の生徒への徹底的な支援」の仕組みと「質の高い教員の養成」(青木、2014)が必要であると私は考える。ここでの学力とは、国際学習到達度調査(PISA)が定義する学力であり、「決まった知識」の獲得量ではなく、「知識を活用、発展させて社会生活で使う能力」を指す(青木、2014)。この学力は例えば、「これまで予想もしなかった災害や原発大事故に対処するためにも、従来の発想を乗り越える」(青木、2014)ことを可能にする学力である。

 このようなPISA型学力を伸ばすには、教育課程に関する二つの立場のうち、「科学・学問の理論体系を重視する立場である「系統主義」」ではなく、「児童生徒の成長や生活経験を重視する立場である「経験主義」」(青木、2014)を採用すべきである。なぜなら、「経験主義」は、PISA型学力が高く、かつ、学力格差の小さいフィンランドにおける教育のあり方と親和性が高いからである。「知識はつねに変化する」という考えや、「教科書は唯一の正しい知識の集成というものではなく、1つの良質な資料」であり、「知識はそれぞれの個人によって構成されるもの」という前提がフィンランドでは成立している。このような前提は、「系統主義」の立場ではなく、「経験主義」の立場に近い。そして、このフィンランドでこそ、「少人数編成のクラスの導入」と「低学力の生徒への徹底的な支援」の仕組みと「質の高い教員の養成」が既に確立されているのである。学力格差を最小にしつつ、PISA型学力の向上を目指すのであれば、既に実績を出している国の教育を大いに参考にすべきであろう。

 PISA型学力の向上が求められるようになった背景の一つとして、変化の激しい社会状況を踏まえた上での、文部科学省による「生きる力」の育成の提言が挙げられる。「基礎的・基本的な知識や技能を確実に修得させ、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力や、主体的に学習に取り組む態度」(青木、2014)を育成するには、従来から行われてきた「系統主義」的な「学習の押し付け」とは異なる教育方法が必然的に要請されるといえる。

 なお、このような要請に応えるためには、小学校教育課程の編成を、PDCAサイクルの中で必ず行い、生徒の個性や地域の状況に合わせて絶えず内容を改善していく必要がある。なぜなら、生きるために必要な知識は個々人で異なり、かつ、状況は常に変化していくからである。

2.教育評価と今後の学力課題

 1930年代に提唱された教育評価は、評価の規準を教育目標とし、目標実現の度合いを様々な評価方法を用いて把握し、目標未到達の子どもに治療的授業を実施し、カリキュラムや授業実践の改善につなげるまでの一連の行動を指す概念である。ここでの教育目標とは、「江戸時代の仕組みを図解できる」等の何らかの具体的な行動を文章化したものであるが、あくまで教育評価の目的は、子どもの序列化・選別ではなく、彼等の学力や発達の保障であり、このことは現在の教育現場でも「指導と評価の一体化」という言葉で意識されている(青木、2014)。

 教育目標の到達度の度合いを評価するための方法としては、教員の主観的な判断である「絶対評価」や、正規分布に依拠して集団内での子どもの位置を明らかにする「相対評価」や、授業における最低基準を示し、学習が成功したか否か、授業が効果的であったか否かを評価する「到達度評価」や、全ての子どもが達成すべき教育目標を「到達度評価」に加えた「目標に準拠した評価」や、教育目標にとらわれずに、子どもと教師と教材との出会いから生まれる学習の価値に注目する「羅生門的アプローチ」等がある。しかしこれらは、「生きる力」という名の、文部科学省によって現在志向されているところの能力を、子どもに身に付けさせることには不向きであり、最適の評価方法は「真正の評価」であるといえる。

 なぜなら、「真正の評価」では、「リアルな課題」に取り組む過程で発揮される能力を評価することが目指されているからである。ここで重視される能力とは、学校の中でしか通用しない能力ではなく、「知識を活用、発展させて社会生活で使う能力」(青木、2014)であるPISA型学力であり、「生きる力」とほぼ同じ内容である。

 「真正の評価」では、「パフォーマンス評価」と「ポートフォリオ評価」が利用される。前者は、子どもの作品を、ルーブリックという評価指標(作品の特徴と点数の対応表)に基づいて評価し、「思考力・判断力・表現力」を捉えようとする。後者は、子どもの作品を系統的・継続的に収集し、子どもの成長度を評価する。これは子どもが自分の経験に関して構成した理解に注目し、子どもの能力を評価する方法である(青木、2014)。

 学校での学びを、生活と乖離したものにせず、変化の激しい昨今の社会状況を子どもが逞しく生き抜いていけるように、よりリアルで生活と密着した内容にすることが、現在の教育において強く求められているのである。

引用文献

青木秀雄著 『現代初等教育課程入門』 明星大学出版部、2014年、p.136‐p.147、p.162‐p.170、p.209、p.248

捕捉

このレポートは、小論文型レポートです。

課題が「~検討してください」や「~考えをまとめてください」というものなので、「指定の教科書の内容の要約」だけでは不十分です。

要約とともに、「指定の教科書の内容を踏まえた自分の意見」を書く必要があります。

小論文型レポートの書き方は、以下の通りです。

①自分の考えを主張する(私は~と考える)
②根拠・理由を述べる(なぜなら、~だからである)
③具体例やデータを適宜挙げて②を補強する

上記①~③を1回以上含ませたレポートが、小論文型レポートです。

小論文型レポートは、要約型レポートの変形版といえます。小論文型レポートでは、「自分の意見を決めて、その裏付けとなる情報を指定の教科書から抜き出していく」という形で要約を行います。

要約の仕方については、下記の記事が参考になります。


小論文型レポートの書き方を本格的に学びたい方は、以下の本が参考になります。


もう絶版なのかな。。

だとしたら、最新版の下記の本が、手に入りやすいかもしれません。


上記の本に載っているテクニックは、看護学校の小論文対策用なので、明星大学通信教育部のレポートを書くのに必ず必要、というわけではないです。

しかし、小論文というものを、本格的に勉強したい人にはおススメです。