PB2090_児童心理学_2単位目


 
 親の養育態度と学校での経験が、子どもの自尊感情に与える影響について述べる。

 自尊感情セルフ・エスティーム、self-esteem)は「人が自分の自己概念と関連づける個人的価値および能力の感覚─感情─」(塚田、2016)と定義される。

 子どもの自尊感情に影響を与えるものとして、親の養育態度が挙げられる。クーパースミスによれば、次のような条件が子どもの自尊感情の発達に寄与するという(塚田、2016)。①両親による子どものほぼ全面的な受容。②親の信ずるところに従って子どもへの制約が明確にされ、遵守するようにしむけている。③子どもを尊重し、制約の範囲内で比較的大きな自由を許容している。④子どもに関心を持ち、注意深い。

 また、シアーズによれば、「父親および母親の暖かさの要因」が、他の要因よりも子どもの自尊感情の発達に寄与し、父親よりも母親の暖かさとの相関が高いという(塚田、2016)。さらに、石川嘉津子によると、親の子どもに対する高い情緒的支持と、子どもの自律性尊重が、子どもの自尊感情の発達に寄与するという(塚田、2016)。

 これらより、親の暖かさ(情緒的支持)と制約の範囲内での比較的大きな自由の許容(自律性尊重)が、子どもの自尊感情の形成に大きな影響を与えるといえる。

 次に、学校での経験が、子どもの自尊感情に与える影響について述べる。ポープによると、学業成績と自尊感情の間には関係はないという。しかし、学業成績と自尊感情との間に正の相関を見出す研究も存在する(塚田、2016)。これらの事実は、蘭千壽による、自尊感情を学業成績の媒介要因とみなす考え方で捉えると理解しやすい。蘭千壽は、親との相互作用や学校での経験を通して自尊感情の高まった子どもが学業に勤しみ、学業成績を高めると述べる(塚田、2016)。つまり、学業成績は自尊感情のあり方を直接的に規定せず、自尊感情の高い子どもが努力して学業成績を高めることがあるということである。学業成績と自尊感情との間に正の相関が見出される現象については、蘭千壽による説明が有効である。

 ポープは、学業成績と自尊感情の間に関係はないと述べていたが、学業成績は、子どもが学校において自分自身に優劣の意識を持つようになる経験を構成するきっかけである。井上信子の調査によると、子どもが優越・劣等意識を持つようになったきっかけは、その影響の大きさの順で並べた場合、次のようになるという(塚田、2016)。①学校場面でのテスト、通知表など。②学校場面での先生や友人による指摘、比較など。③自分で気づいて。④家庭場面。⑤その他。

 上記調査では、①において優越意識を持った子どもは全体の38%であり、この値は、他の項目において優越意識を持った子どもの割合よりも高い。また、①において劣等意識を持った子どもは全体の47%であり、この値も他の項目において劣等意識を持った子どもの割合よりも高い。これより、学業成績は、子どもが優越・劣等意識を持つ大きなきっかけであり、学業成績と自尊感情に密接な関係があることが読み取れる。

 また、上記調査より、②において優越意識を持った子どもは全体の21%であり、劣等意識を持った子どもは全体の17%であったことから、子どもが優越意識・劣等意識を持つようになったきっかけの約60%を、学校現場が占めていることが分かる。以上より、学校は、子どもの自尊感情に大きな影響を与える場といえる。

 さらに、③からは、子どもが学校において、テストや通知表、教師や友人による指摘や比較により、自分自身に対して優劣意識を持つことが読み取れる。子どもは、友人の有能さや社会的望ましさを目の当たりにして、友人を自分と比較し、優劣意識を持つと考えられる。

 優越意識や劣等意識を持つ子どものうち、前者の子どもには問題がないように思えるが、これは誤りである。なぜなら、児童期は、自分自身や社会に対する現実認識が十分ではないため、自己の高すぎる要求水準や身体的な大きさを基準にし、優劣意識を抱くことがあるからである(塚田、2016)。このような思い込みをしている子どもに対して周囲の者は、客観的な事実を提示して、現実的な認識を形成するように働き掛ける必要がある。

 自尊感情が低い子どもには明らかに配慮が必要である。親は子どもを受容して「暖かいかかわり(情緒的支持)」を心掛けるべきである。また、教員は、子どもの学業成績のみを問題にして、子どもを非難したり、指示や命令を行ったりするのではなく、子どもの未熟な部分や引っ込み思案などに気づいて、それらを支援するとともに、子どもの努力を褒め、自己効力感と自尊感情を高めていくように心掛けるべきである(塚田、2016)。

 以上、親の養育態度と学校での経験が子どもの自尊感情に与える影響を概観してきた。子どもが現実的な認識に基づいて自己を適切に評価し、自尊感情を高めていけるように、親や教員はそれぞれ、「暖かいかかわり(情緒的支持)」や「制約の範囲内での比較的大きな自由の許容(自律性尊重)」や「現実的な認識の形成を意図した働き掛け」を心掛けなければならない。

引用文献

塚田紘一著 『子どもの発達と環境 児童心理学序説』 明星大学出版部、2016年、p.227‐p.231


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レポート中盤(凡ミスしてた><。。)

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