PB2090_児童心理学_1単位目


 
 子どもの愛着の形成要因と形成過程を説明し、愛着形成と子どもの発達全般との関係について述べる。

 まず、愛着という言葉が意味する内容についてであるが、これはアタッチメント(attachment)とも呼ばれ、「乳幼児が母親などのような特定の人との間に形成する情愛的な結びつき(affectional tie)」(塚田、2016)と定義されるものである。

 この愛着の形成要因に関しては、子どもの空腹や渇きやおむつの不快などを解消し、子どもの生理的欲求を充足する母親に対して子どもが愛着を形成していくとする、動因低減説によってこれまで説明がなされてきた。しかし、ハーロウによる赤毛ザルを用いた実験や、カイアンズによる小ヒツジとイヌを用いた実験や、エイスンワースによるストレンジ・シチュエーションという方法を用いた実験により、愛着を形成する要因として、以下の事柄が現在は指摘されている(塚田、2016)。

① やわらかく暖かい身体接触

② 視覚的・聴覚的・嗅覚的な接触

③ 乳児と母親の間の多様な相互交渉の全体的な量

 上記のうちの③は、以下のように更に3つに細分化できる(塚田、2016)。

③-1乳児の発するシグナルに敏感に適切に反応すること

③-2一定量以上の、身体的、視覚的、聴覚的な相互作用があること

③-3乳児との相互作用を喜びをもって行なうこと

 以上が、現時点における最新の研究結果が明らかにした、愛着の形成要因である。

 次に、愛着の形成過程について述べる。ボウルビィによると、愛着行動の型に従い、愛着の形成過程は以下の4段階に分けられるという(塚田、2016)。

 ①無差別な社会的反応の段階(生後1、2ヵ月) 人の声や顔、抱き上げられることに積極的反応(発声や微笑など)を示すようになる。

 ②特定の人への社会的反応の段階(~6ヵ月頃まで) 乳児がよく接触する母親に対して、前段階で発達させた行動型をより明確に頻繁に示す。

 ③特定の人への接近維持の段階(~2歳頃まで) 母親への接近・接触を強く求めるようになって、後追いをし、母親が見えなくなると不安を示す。見知らぬ人への人見知りが生じる。移動運動の発達とともに母親を安全基地として探索行動が活発化する。

 ④目標修正的パートナーシップの段階(2歳以降) 母親の表情や言動から感情や意図をかなり理解するようになる。そして、自分の要求や主張を調節しなければならないことを知り、パートナーシップの関係を発達させていく。この段階では、母親との関係は抽象的になり、母親が見えなくても声がきこえなくても、母子関係が存続していることを確信するようになる。

 以上が愛着の形成過程である。子どもはこのような過程を経て、母親との愛着を形成していく。ただし、この愛着形成には最適期がある。母親からの心理的拒否あるいはマターナル・デプリベーション(母性的養護の喪失、maternal deprivation)が生後18ヵ月続いた場合、愛着の形成が難しくなるという(塚田、2016)。

 以上、愛着の形成要因と形成過程について概観してきた。最後に、愛着形成と子どもの発達全般との関係を確認しておきたい。

 母親との愛着を形成することができた子どもには、好奇心旺盛に広範囲に探索活動を行なって経験を積み、恐怖を感じれば、母親の元に帰ってくるという特徴がある。安定した愛着の形成は、このように母親を安全基地(secure base)として活用することを子どもに可能にし、結果として子どもは自らの発達を進められるようになる(塚田、2016)。

 また、安定した愛着の形成は、基本的信頼感を形成し、これがその後の好ましい発達の基礎になっていく。基本的信頼感は、生まれて最初の1年の間に、母親に愛情深い世話を受けることにより、子どもが母親や自分の住む世界や自分自身に対して持つものである。これに基づいて、子どもは積極的に環境に働き掛け、様々な新しい経験をし、出会う人々を母親と同じように信頼していく。周囲に対する子どもによるこのような親しみに満ちた対応は、周囲の人々に好意的に受け入れられ、さらに子どもは世界に対して信頼感を持つようになり、適応的な関係を広げていく。これとは対照的に、母親から放置されたり、虐待されたりした子どもは、基本的信頼感を持つことができず、母親や自分の住む世界や自分自身を信頼することができなくなる。その結果、周囲に対して積極的に働き掛けることが少なくなり、周囲の人々からの働き掛けにも回避的になる(塚田、2016)。

 以上のことから、乳児期に安定した愛着を形成し、基本的信頼感を獲得することは、子どものその後の発達に大きな影響を与える、重要な出来事だといえる。

引用文献

塚田紘一著 『子どもの発達と環境 児童心理学序説』 明星大学出版部、2016年、p.63、p.65、p.66、p.67


課題貼付欄

レポート中盤(漢字間違ってた><。。)

レポート終盤

1度目は不合格でした><。。