PB2120_初等社会科教育法_2単位目



1.経験から乖離した知識の伝達を批判し、経験に基づいた知識が児童において主体的に知識化されることの重要性を説いたデューイは、問題解決に不可欠なものとして反省的思考に言及した。これは仮説を実験で検証する自然科学の原理を適用した思考であり、これを活用できなかったことが初期社会科の欠点の一つであった。主体的知識化と問題解決力の育成を児童に促すには、反省的思考を反映した実用的な方法論が必要といえる。

 何らかの問題を解決するために、情報を総合的に把握・洞察・統合し、創造的に発想・まとめるための方法として、KJ法が挙げられる。KJ法は、①取材により情報を収集、②情報からラベルを作成、③ラベルをグループに分類、④グループを模造紙に空間配置し図解化、⑤図解の文章化、という5つの手順で進行する。このうちの②では、1項目の情報をカード1枚に一文で記述し、その情報の志(本質)を明示する。また、③の作業は、aラベルを並置、bラベルをグループに分類、cグループに表札(名前)を付与、という手順で進める。2回目以降の③の作業では、表札をaで吟味するべきラベルとしてaの作業に加える。この過程でラベルが次第に表札に置換され、情報が統合されていく。

 上記がKJ法の内容であり、この作業を、①問題提起、②状況把握、③本質追求、④構想計画、⑤具体策、⑥手順化の6つの各段階で行うことを累積KJ法と呼ぶ。実際の問題解決は、この累積KJ法で行うことになる。

 情報を帰納的に処理し、そこから結論や主張を導くKJ法は、我々が日頃から行っている問題解決的な推論をより実用的に洗練させたものといえる。例えば我々は、スキーマを用いて周囲の環境から情報を抽出している。スキーマとは特定の物事に関して過去の経験から得た一般的な知識であり、情報取得時にフィルターとして機能する。また我々は日頃から暗黙知を使用してもいる。何事かを為す際に自動的に働き、意識化困難ではあるものの、確実に動員される知識がある。これが暗黙知である。感性の存在も無視できない。感性によって把握した情報を利用して我々は問題解決を行う。KJ法は我々が持つ上記全ての特徴を駆使した、発想支援方略である。多数の考えを創造的に生み出す発散的思考と、問題の正解を導き出す収束的思考の両方を支援するものである。

 以上で概観してきたように、KJ法は、情報操作に必要な、本質を把握する洞察力を、組織的に駆使する優れた方法といえる。これを初等社会科に導入することにより、学習意欲や思考力や基礎・基本となる知識・技能を児童に養い、主体的知識化と問題解決力の育成が同時に達成できると考えられる。

2.教師は授業を行うにあたり、教材や活動のまとまりである単元を分割し、一時間ごとの展開を計画する。この計画を記したものが学習指導案であり、そこでは、授業に関して、目標、評価、内容、課題、計画、方法、形態、支援・指導の展開の構想が記述される。学習指導案の横軸には、①学習活動、②教師の働きかけと予想される児童の反応、③指導上の留意点、④本時の評価規準を記述し、縦軸には、児童の主体的な学習活動の実現を意図して、①課題を掴む、②計画を立てる、③問題を追求する、④まとめる、の4段階で学習過程を記述する。

 展開計画の作成時には、①教師が教材解釈を明確に持つ、②教材解釈を子どもの実態と結び付けて授業の方向性や構造を決める、③展開の核になるものを複数決める、④評価規準の明確化、⑤実際の授業では展開計画に固執しない、の5点への留意が必要である。これらのうち①~④は教材研究に必須である。展開計画は、教師が発掘・製作・選択した教材を納得ゆくまで噛み砕き、適切な段取りで用いるための構想といえる。なお、展開計画には児童の発達特性への考慮も不可欠である。教師は各学年の児童の特徴を着実に踏まえて授業構想を練る必要がある。上記留意点の⑤についてであるが、実際の授業で児童との相互作用をいかに臨機応変に行うかは教師個人の力量に負うところが大きい。しかし、学習指導案の質こそが教師による教育的タクトを発揮させるものであるため、学習指導案の構想が何よりも重要である。

 以上、学習指導案の展開計画作成時の留意点を述べてきた。以下より、評価について詳述する。

 児童の思考過程の在り方や、問うべき事柄を児童が判断できたことを賞賛することで、児童の学習意欲や発展可能性を引き出すことに評価の意義がある。見えにくく個性的なこれらの把握を可能にするために、①社会的事象への関心・意欲・態度、②社会的な思考・判断・表現、③観察・資料活用の技能、④社会的事象についての知識・理解、の4つの観点に基づいて評価は行われる。その際には、児童の自己評価を促し、学びの質の深化を図るためにも、児童の学習過程や成果に関する記録を長期間にわたって蓄積したポートフォリオを活用した個人内評価が有効である。また教師は、診断的評価、形成的評価、総括的評価を織り交ぜつつ、上記のような評価の結果によって今後の指導の在り方を改善していく「評価と指導の一体化」を常に心掛ける必要がある。

参考・引用文献

青木秀雄著 『洞察力を培う初等社会科教育法』 明星大学出版部、2016年、p.188‐234

捕捉

このレポートも、1単位目と同じく、要約型レポートです。

要約型レポートの書き方については、下記が参考になります。

このレポートは、KJ法を詳細に解説したレポートとなりました。

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