PA4030_教職実践演習(教諭)_2単位目



1.生徒指導は、児童の人格の育成や問題行動の防止や予防を意図して行われる指導である。一人一人の児童の人格を尊重し、個性の伸長を図りながら、社会的資質や行動力を高めることを目指して行われる教育活動である。この生徒指導は、学級経営が成立してこそ可能である。物的・人的両面から学級を児童にとって安全かつ住み心地の良い環境に整備し、児童が様々な仕事を担う中で自己存在を確認でき、仲間と共感しつつ、自己の判断で行動できるようになる集団を組織化することが学級経営である。生徒指導を成功させるために教員は、学級経営をどうすれば達成できるだろうか。児童との信頼関係の構築が答えであると私は考える。なぜなら信頼できる人間の言葉は、児童の心に響くからである。

 では、児童との信頼関係の構築には何が必要であろうか。必要なのは児童理解である。児童理解とは、児童の前にばかりではなく、児童の脇に立ち、児童と同じ目線で児童と同じものを見るということである。もちろん、児童の前に立つことも必要である。特に教科指導の際には、教員は児童の前に立ち、全員に届く言葉を投げ掛けて、共通のイメージを児童の中に立ち上げねばならない。しかし、これは教員が個々の児童を理解しているからこそ可能となる。つまり、あくまでも教員は、児童理解を基礎に据えて行動するべきなのである。

 上記事柄を私は、母校の小学校で教訓として学んだ。他の学級の児童も参加する、小集団での放課後の教科指導時に、終始落ち着かず、突発的にお喋りを始める児童がいた。私が注意したところ、児童は萎縮し、学習に参加しなくなってしまった。後日、この児童がADHDであることを知らされた私は、己の行為を反省し、児童の言い分を認めた上で学習への参加を促すという方法を採ることにした。次の教科指導時にこの児童は、方眼紙で手裏剣を作り続けていた。私は「手裏剣作ってるの?」と話し掛け、児童が友人に頼まれてそうしていることを確認した後、「約束を守るのは大事だね。終わったら参加してね」と伝えた。すると児童は、手裏剣を作り終えると、自ら学習に参加してきた。この出来事は児童理解が重要であることを実感させる。児童は私が彼の言い分を認めたことで私を信頼し、指導に従ってくれたといえる。

 なお、保護者との関係においても同様のことがいえるであろう。保護者のクレーム等に対して教員は、保護者と同じ目線に立って保護者の身になりつつ、その話を受け止めることに努めるべきである。このような真摯な対応が、保護者との間に信頼関係を醸成し、やがて保護者は教員を、児童を共に育むためのチームのメンバーとして受け入れてくれるようになると考えられる。

2.学校教育の目的は、児童に確かな学力を身に付けさせ、児童を自立させることである。この目標を達成するには、①基礎的・基本的な知識・技能、②これらを活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力、③主体的に学習に取り組む態度の3点を、バランスよく指導できる柔軟な実践力が、教員に必須とされている。しかし、児童は多様化してきており、児童の個人差に対応できなければ、柔軟な実践力を教員は発揮できず、上記目的の達成は不可能である。このことから、多様化する児童一人一人の実態・特性の理解が、教員が担うべき責任として、重要視されている。

 従来の学校では、教員が教員であること自体を権威にし、知識の押し付けや頭ごなしの命令や恫喝を学校生活の様々な場面で児童に行うことが多く見られた。この傾向は現在も残存しており、私は近隣の小学校で、教員の説明を理解できない児童に対し、「お前は馬鹿か」等の侮辱語が投げ掛けられる場面に遭遇したことがある。このような環境では、児童は教員による知識の押し付けや頭ごなしの命令や恫喝をただただ受け入れて、教員の期待通りに行動するような、主体性のない人間に育ってしまう可能性がある。これでは、学校教育の目的である児童の自立は達成できないであろう。

 上記事柄を反面教師的に捉えた上で、教員が実践すべきこととして、「多様化する児童の特性の把握に基づいた分かる授業の提供」を私は挙げたい。教員は、多様化している児童一人一人の実態を正確に理解し、個々の児童に身に付けさせたい力を見極め、実施単元の年間指導計画上に授業を位置付けるとともに、指導過程と学習過程を踏まえて独善的な授業を回避し、児童の自己肯定感を高める授業を行うべきである。もちろん、高い指導理論と高い指導技術も教員には欠かせない。これらの要件を満たせない教員が、児童の尊敬や信頼の対象になれず、自己肯定感を低下させ、知識の押し付けや頭ごなしの命令や恫喝に頼るようになると考えられる。

 従って、分かる授業を提供できない教員は、まずは児童理解に集中し、多様化している児童一人一人に対応できる下地を作るとともに、指導案作りと教材研究に注力して分かる授業を実現させ、教員自身の自己肯定感を高めるべきである。児童の個人差を踏まえて、分かる授業を提供し、全ての児童に変容をもたらすことのできる教員が、柔軟な実践力を発揮できる教員であり、児童の尊敬や信頼の対象になりうる。そして教員の権威とは、このように一人一人の児童の特性を理解するという責任を果たせる教員にこそ宿るものといえる。この状態に達した教員のみが、児童の自立を促進できると私は考える。

捕捉

このレポートも、1単位目と同じく、対話型レポートです。

添削者の先生と、講評欄を通じて文章のやり取りすることで、完成させていくレポートです。

指定の教科書を要約するだけでは不十分です。

指定の教科書の内容に基づいて、自分の考えを述べるだけでは不十分です。

レポートに書いて欲しいことを、添削者の先生から引き出して、書いていくレポートです。

なので、とにかく自分なりにレポートを書いて提出し、添削者の先生から指摘をいただいて、その指針に基づいてリライトしていくと良いです。

提出1回目で合格するのは難しいレポートです。

私は2単位目も、提出3回目で合格できました。

不合格レポートの講評

不合格1回目の講評は、次の通りです。

1:22行目までは、子どもの情況把握と理解の意味・大切さという内容であり、課題に添っていますが、23行目から終わりまでは、保護者との関わり方やその例になっています。22行目までを生かし、「子どもの情況把握と理解に立つ生徒指導の在り方・学級経営の在り方」について論じて下さい。

2:言いたいことは何となく伝わりますが、課題に対する回答とは言い難いです。学習指導における柔軟な実践力とは何か? なぜ大切なのか? を先ず述べます。そしてその具体を述べます。そして、学習指導における柔軟な実践力と教師の権威・責任との関係性を述べます。

by 中村

上記の指示に従ってレポートを書き直したのですが、これも不合格でした。

下記は、不合格2回目の講評です。

1について
・生徒指導、学級経営それぞれの在り方について、明確にわかるように書いてみてください。そして、保護者との信頼関係のことも関連付けて述べるとよいでしょう。

2について
・わかる授業、権威についての考え方はよいと思います。責任については、どのように考えていますか。
・個人差への対応をどうするかという点について、考えを具体的に書いてください。
・確認します。多様化している子どもたち一人ひとりに対し、どう対応し、確かな学力を身につけさせるかが大切です。そこに柔軟な実践力が出てきます。その柔軟な実践力の考えに立って指導することで、子どもに変容が見られます。「わかる」「できる」ようになったことを実感します。このことが、教師の権威・責任につながります。
・読み手を意識して、さらに説得力のあるレポートになるよう期待しています。

by 菅野

上記の指示に従ってレポートを書き直し、やっと提出3回目で合格できました。

合格させてくれた評価者の先生は、榎先生でした。

ところで、2回目提出のレポートを添削してくれた先生は、菅野先生になっています。菅野先生は、1単位目のレポートも添削されています。1単位目も2単位目も、2回目提出レポートの添削をされています。

菅野先生の出番は2回目、ということなのかもしれません。

1回目のレポートを提出したのは2017年4月19日で、合格できたのは2017年7月11日なので、1単位目と同じく2単位目も、合格まで約3ヶ月かかっていますね。

読めば一目瞭然ですが、1単位目のレポートで引用した教育現場での体験を、2単位目のレポートでも使っています。