PL2040_病弱者の心理・生理・ 病理_1単位目

課題
1.病弱、身体虚弱の児童生徒の主たる疾患について、要点をまとめ、論ぜよ。
2.病弱者の生活の質の向上や心理的な安定に必要な支援を考慮し、指導案を作成せよ。



1.病弱・身体虚弱児の抱える疾患は、悪性腫瘍疾患、循環器疾患、腎疾患、気管支喘息・呼吸器疾患、糖尿病・単純性肥満・内分泌疾患、膠原病てんかん・神経疾患等と多岐にわたる。とりわけ、小児がんとも呼称される悪性腫瘍疾患は致死率が高いことで知られている。小児がんの全体の約半数は急性白血病悪性リンパ腫である。以下より、白血病の児童を例として取り上げ、その疾患と学習の空白への配慮・指導法について詳述する。

 初めに、白血病という疾患についてであるが、これは、骨髄中の白血球細胞の異常増殖により骨髄機能が障害され、血液中の白血球、赤血球、血小板が減少し、遷延する発熱、顔色不良、出血傾向(鼻血、あざ等)、全身倦怠感、食欲不振、骨や関節の痛み等の症状が生じる疾患である。遺伝子の異常の関与が判明しているものの、原因は不明である。白血病の大部分が急性白血病であり、その約8割がリンパ球由来の急性リンパ性白血病である。治療は抗がん剤を用いた化学療法によって行われる。

 次に、小児がんの児童の学習の空白への配慮・指導法について述べる。入院中の児童の教育を受ける権利を保障する場として、病院に隣接した特別支援学校、病院内にある小・中学校の特別支援学級(院内学級)、特別支援学校からの病院への訪問教育等がある。これらを利用することにより、児童の学習の空白や遅れを補うことができる。また、長期入院や入退院を繰り返す児童に関しては、病気の種類や病状、発達段階、病気に対する自己管理能力や経験等の実態に応じた指導目標、指導内容、指導方法を、個別の指導計画に記載しておき、児童にとって無理のない適切な教育計画の立案と授業の実施が行えるように配慮しておくことが重要である。最後に、指導法や具体的な授業についてであるが、最近では、WEB会議システムが注目されている。これは、入院中の児童の前籍校と院内学級をインターネットでつなぎ、前籍校の友人らと児童が互いの映像を見ながら、音声でコミュニケーションする交流や共同学習を実現させるものであり、入院中の児童の心理を支える効果が確認されている。このようなICTの活用は、今後一般化していくと考えられる。

 なお、長期に及ぶ入院を余儀なくされた児童は、身体面や心理面に多くの制限が伴うことにより、自主性が薄れ、依存的で無気力な状態に陥ることが多い。そのため、児童が自力で物事を選択する機会を、保護者や医療関係者や院内学級の教員等の周囲の人々は意図して設ける必要がある。このようにして自主性を養うことで、児童は入院生活を前向きな気持ちで安心して送ることが可能になる。

2.病弱者の生活の質の向上と心理的な安定に必要な支援を考慮した「遊びの指導の学習指導案」を以下に示す。
 

1、単元名 ゴロ卓球を楽しもう

2、単元設定の理由

 本学年の児童は車椅子での長期入院生活により、気持ちが塞ぎ込みがちである。そこで、車椅子に乗ったままで従事できるゴロ卓球を、教員を含めて児童全員で行うことで、心理的な安定と生活の質の向上を図る。

 ゴロ卓球とは卓球のルールを改変したゲームである。ネットの下に隙間を設け、そこにピンポン球を通し、球が地面に落ちないようにラリーをし続けるというゲームである。児童は自分に合った形状と重さのバルサ製ラケットを作り、これで試合に臨む。ルールは児童の実態に合わせて変更する。例えば、メンバー間でのパスや、球の動きをラケットで静止させるルール等が設定可能である。試合は4人1組のチームで行い、11点を先取したチームを勝ちとする。教員も必ず車椅子を使用する。

3、児童の実態(病弱児16人)

 本学年は、悪性腫瘍疾患の児童(9人)、循環器疾患の児童(4人)、膠原病の児童(3人)で構成されている。運動の機会の少ない、長期の病院内での画一的な生活により、情緒不安定や意欲低下や無気力等の問題が見られる。体力が弱いため、長時間の運動は難しいが、仲間と関わりを持ちながら集団の中で遊びを楽しむことで、問題の改善が期待できると考えられる。

4、単元の目標

①仲間と協力して勝利することの楽しさを味わい、物事に対する意欲を高める(心理的な安定)。

②作戦を練るために、仲間の話に耳を傾け、自分の意見を明確に伝える(コミュニケーション)

③運動し、身体機能の向上を図る(身体の動き、健康の保持)。

5、指導計画

ゴロ卓球を楽しもう 2時間

 第一次 ラケットを作ろう 1時間

 第二次 試合を楽しもう  1時間(本時1/2)

6、本時の指導

(1)本時の指導目標

 ①勝利を目指して仲間と協力する。

 ②仲間の話に耳を傾け、自分の意見を伝えて、作戦を練る。

 ③運動自体を楽しむ。

(2)準備物

 くじ、卓球台、ピンポン球、ネット、得点板、バルサ、糸鋸、鉛筆、教員用の車椅子、水。

7、体育館の配置(卓球台設置時)

8、本時の展開

捕捉

このレポートの課題1は要約型レポート、課題2は指導案型レポートです。

課題2については、次のような講評をいただいています。

本時の目標に対する評価、あるいは、本時の展開の中で、指導・支援の中での評価(感想)を示すと、子どもの姿がより具体的になると思います。

by 安達

指導・支援の中での評価(感想)を更に加えると、よりよい指導案になるようです。