PL4020_聴覚障害者の指導法_1単位目

課題
聴覚に障害のある児童生徒を指導するとき、教師が配慮しなければならない指導上の留意事項について説明せよ。


 
 聴覚に障害のある児童生徒を指導するにあたり、教師が配慮するべき留意事項について、以下より説明する。

 はじめに教師は、児童生徒が持つ聴覚障害の実態把握に努めなければならない。補聴器等を用いた場合とそうでない場合の児童生徒の聞こえの状態や、児童生徒に可能な意思疎通のあり方を把握する必要がある。聴覚障害によって、コミュニケーション全般が困難になるということはない。教師は児童生徒と、聴覚だけでなく、視覚やその他の感覚を活用して関わることができる。聴覚障害を否定的に捉えずに、多様な方法でコミュニケーションを行うことを教師は心掛けるべきである。

 次に、各教科の指導法について述べる。小学部・中学部では、教師は以下の6点に留意すべきである。①体験的な活動を通じた言語概念の形成を図り、児童生徒の発達に応じた思考力の育成に努める。②児童生徒の言語発達の程度に応じて、主体的に読書に親しんだり、書いて表現したりする態度を養うように工夫する。③児童生徒の聴覚障害の状態等に応じて、指導内容を適切に精選し、基礎的・基本的な事項に重点を置く等して指導する。④補聴器等の利用により、児童生徒の保有する聴覚を最大限に活用し、効果的な学習活動が展開できるようにする。⑤授業の進め方を工夫するとともに、視覚的に情報を獲得しやすい教材・教具やコンピュータ等の情報機器等を効果的に活用し、指導の効果を高めようとする。⑥聴覚障害の状態等に応じ、音声、文字、手話等のコミュニケーション手段を適切に活用して、意思の相互伝達が活発に行われるように指導方法を工夫する。また、高等部では、教師は以下の6点に留意すべきである。①抽象的、論理的な思考力の伸長。②読書習慣や書いて表現する力の育成と情報の活用。③指導内容の精選等。④保有する聴覚の活用。⑤教材・教具やコンピュータ等の活用。⑥正確かつ効果的な意思の相互伝達。

 なお、聴覚障害のある児童生徒は、教科学習に必要な言語概念を習得していないことがある。そのため教師は、教科指導の際に用いる言葉が、児童生徒の具体的な体験と結び付いているかどうかを把握しつつ、指導を行う必要がある。そして必要に応じ、具体的な体験を通して言葉の理解を促したり、表現する場を設けたりすることも重要である。また、児童生徒の読解力に合わせて、生活文や筋の展開が分かりやすくイメージしやすい物語や教師自作の文章等を教材として使用すると良い。さらに、教材は視覚的に情報を獲得しやすいものを選び、教材を自作・加工する際には、①聴覚障害に配慮した情報保障という観点と、②聴覚障害による言語の遅れへの対応という観点に基づくことが望ましい。

 次に、自立活動の指導法について述べる。学習指導要領に六つの区分26項目が特別支援学校における自立活動の内容として示されているが、聴覚障害のある児童生徒については、次の4つの観点が重視されている。①聴覚活用(補聴器等の使い方、保有する聴覚の生かし方)。②コミュニケーション・言語(日本語の基礎的・基本的な言語体系等)。③発音・発語(息、声、舌、あご、唇等の音器、母音や子音等の単音、語句)。④障害認識(自己の障害の理解、自己を肯定的に捉える機会、障害による困難を改善・克服する意欲、聞こえやすさやコミュニケーションのしやすさのための環境調整)。これらの自立活動に充てる授業時数や、指導形態を、児童生徒の障害の状態に応じて適切に定めるとともに、指導計画に基づいて児童生徒の個人内到達度を評価し、指導の経過や今後の予定や見通し等について、保護者と担任等が定期的に話し合うことも重要である。

 次に、言語指導法について述べる。言語指導には指導場面での配慮が必要である。日常生活の中で曖昧な表現を正しい言葉・表現へと導く指導には、次の4つの留意点がある。①話したいという面を生活場面で作り出す。②子供からの曖昧な表現を年齢に即した正しい表現に誘導(即時模倣)する。③子供に模倣の習慣が身に付き、簡単なやりとりができるようになったら、拡充模倣を促し、語彙の拡充を図る。④年齢に応じて使用する言葉の概念を高める。一方、教科指導等で学習した言葉や表現を日常生活で使うための指導では、次の4つの留意点がある。①教科指導等で新たに出てきた言葉の概念を、子供の体験や前時の学習等をもとに解説する。②学習によって知識として覚えた言葉を日常生活で使用する場面を意図的に設定する。③助詞の脱落、曖昧な言葉の使い方、練習中の発音は、丁寧に指導する。教師は曖昧さを見逃さないようにする。④自発語の確認(使える言葉の確認)や、研究授業等で自発語チェック等を行う。

 最後に、手話・指文字の指導も、聴覚障害のある児童生徒の教育には欠かせない。手話・指文字の指導にあたっては視覚や手指機能に配慮し、手話や指文字が明瞭に視認できる環境を整える必要がある。児童生徒の発達段階や学習の進度に合わせた手話の検討を行い、手話・指文字によるコミュニケーションを楽しめる集団作りの配慮が大切である。

参考・引用文献

独立行政法人 国立特別支援教育総合研究所 『特別支援教育の基礎・基本』 ジアース教育新社、2016年、p.126‐144

捕捉

このレポートは要約型レポートです。

指定の教科書の126ページから144ページまでを要約しています。

要約型レポートの書き方については、下記が参考になります。