PL3060_聴覚障害者の心理生理病理_1単位目

課題
聴力検査の方法について説明せよ。また、聴力検査の測定結果によって、学校教育ではどのような適用になるか説明せよ。


 
 聴力検査の方法と、その測定結果の学校教育への適用について以下より述べる。

 まず、聴力検査の方法について詳述する。聴力検査には、行動観察による聴力検査、純音を用いる検査、語音を用いる検査、幼児聴力検査がある。

 行動観察による聴力検査は、行動の観察から聞こえの状態や補聴器等の調整の妥当性を見極めることを目指しており、聴力検査の難しい乳幼児に対して用いられる。自然な環境にいる時の行動や、一定の条件を設定した場面(遊具、対人、生活場面等)での行動が観察の対象となる。具体的には、事物や人に対する関わり方とその程度、楽器や音の出る玩具や動物の鳴き声や人の呼び声に対する反応の様子、発声や発語の量、声質、特定の場面での言葉の使い方、視覚に頼る度合い等が注目される。

 次に、純音を用いる検査についてであるが、これは学校であれば500Hz、1000Hz、2000Hzの純音を、医療機関等であれば125Hz~8000Hzの純音を片耳ずつ聞かせて、聞こえるかどうかを応答させる検査である。それぞれの周波数で得られた最小可聴値を公式に当てはめ、平均聴力レベルを求める。この検査を気導聴力と骨導聴力に関して行い、両方の最小可聴値の兼ね合いから、伝音難聴か感音難聴かが判断される。

 次に、語音を用いる検査についてであるが、これは音声を聞き取る能力と聞き分ける能力を把握し、聴覚障害の程度や指導の評価を判断するために用いられる。語音聴力検査には、語音聴取閾値検査と語音弁別検査がある。前者は、数字リストを様々な音の強さで聞かせ、正しく聞き取れた割合を測定し、その明瞭度曲線を求め、50パーセントの明瞭度を示す点の音圧を把握するものである。後者は、決められた単音節リストを様々な音の強さで聞かせて、その明瞭度曲線を求め、最高明瞭度の割合を示すものである。

 次に、幼児聴力検査についてであるが、これは被検児の発達年齢に即して聴力検査を行う方法である。2歳代の幼児は、40~50dB程度の音についてCOR(条件詮索反応聴力検査)が可能である。これは、2歳代において、大脳皮質の活動に伴った聴性行動反応閾値が30dB近くまで達するからである。3歳代では、音刺激を条件とする条件形成が成立し、これを利用した測定が可能になる。幼児は音が聞こえていても、応答するとは限らないので、検査の繰り返しや検査方法の変更を行い、聴覚障害の状態把握が適切に行われるように工夫する必要がある。なお、幼児の聴力閾値の検出法としては、聴性脳幹反応(ABR)や脳波(SVR:頭頂部緩反応)を指標とした他覚的聴力検査法等も存在する。

 以上、聴力検査の方法について述べてきた。以下より、聴力検査の測定結果を学校教育へ適用する仕方について述べる。

 聴覚障害の程度は、聴力レベル(dB)で表される。このレベルにより、学校教育への適用は変化する。例えば、平均聴力レベルが20~40dB程度の場合、4~5m離れた相手の話し声が50cm以内であれば聞き取れるものの、日常生活では聞き返しが多くなり、学校等の集団内では周囲の騒音のために言葉が聞き取れなくなる。その結果、音声言語の発達に影響が生じたり、学力遅滞が生じたり、周囲とのコミュニケーションに支障が出たりする。平均聴力レベルが40~60dB程度の場合、音声言語の発達の遅れや発音の障害が顕著になりやすい。平均聴力レベルが80dB以上になると、早期から適切な教育的対応を行わなければ言語獲得が困難となる。

 このように、聴覚障害は、言語発達やコミュニケーションや社会性や情緒等の発達に様々な問題を生じさせやすい。これらの深刻化を防ぐには、専門の耳鼻科医や聴覚障害教育の専門家等と連携しつつ、次のような配慮・支援・行動を積極的に行っていくことが望ましい。①新生児聴覚スクリーニング検査により、聴覚障害を早期に発見し、教育的支援を早めに開始する。②補聴器や補聴援助システムや人口内耳を利用する。③教室の座席を前の方にしたり、授業時の教師の話し方を工夫したりする。

 なお、聴覚障害のある児童生徒の教育を受ける権利を保障するための制度として、特別支援学校(聴覚障害)や、難聴特別支援学級、難聴通級指導教室等が整備されている。特別支援学校(聴覚障害)では、小・中学校・高等学校に準じた教育課程を中心にし、障害の状態に応じた特別な教育課程の編成が可能である。難聴特別支援学校は、聴覚障害が比較的軽度の児童生徒を対象としており、主として音声言語の受容・表出(聞くこと・話すこと)に係る特別な指導が行われる。難聴通級指導教室では、特別支援学校小学部・中学部学習指導要領に規定された自立活動の目標や内容等を参考にし、通常学級に在籍する軽度の聴覚障害のある児童生徒に対して、障害に応じた特別の指導が可能である。

参考・引用文献

独立行政法人 国立特別支援教育総合研究所 『特別支援教育の基礎・基本』 ジアース教育新社、2016年、p.146‐151

捕捉

このレポートは要約型レポートです。

指定の教科書の146ページから151ページまでを要約しています。

要約型レポートの書き方については、下記が参考になります。