PB3100_初等教育相談の基礎と方法_2単位目



1.発達障害のある子どもを通常学級において理解し支援する方法を、自閉症スペクトラム障害(以下ASDと略す)を取り上げて以下より詳述する。

 通常学級に通う発達障害のある子どもを支援する際には、子どもを標準に合わせるためではなく、問題を作っている状況全体を改善するために支援を行うという視点が不可欠である。生物(遺伝的・生物学的側面)、心理(個としての発達レベルや能力)、社会(社会環境)の3つの側面から障害の状況を評価し、これら3つを整えることが支援といえる。このような支援を実現させるには、①障害の特性の正確な理解、②診断の有無と支援の必要性の大小を混同せずに個々の子どもの抱える実際的な困難を把握すること、③障害特性を表す診断基準の文言と現実の教室での子どもの言動との開きを踏まえて障害の有様を捉えること、等に留意する必要がある。

 また、支援を行うにあたり、安定した集団、安心できる学級を作り出すことが前提である。学級や集団は、授業が分かって楽しく、自分が認められていると感じられ、様々な活動に主体的に参加できる場でなければならない。教師は誰にとっても魅力的で分かりやすい内容の教室・授業を実現させるべきである。さらに、子どもが自由に自分の考えを表明でき、様々な価値観が共存できる柔軟な雰囲気を、教室に持たせることも必要である。

 以上が、子どもの問題に対する基本的な見方、発達を支援する視点の概要である。以下より、ASDを取り上げ、その理解と支援の方法を詳述する。

 ASDの特性として、①社会性・他者とのコミュニケーションに困難があり、他者の感情や欲求や考えを理解することが難しく、自分の感情に気付いて他者に伝えることも苦手、②情報や刺激に溢れた混沌とした世界に適応するために、行動の反復・限定的な興味関心・同一性への拘りがある、③感覚の過敏性と鈍感性が挙げられる。教師はASDの子どもの身になり、次のような対応を心掛けるべきである。①認知や感覚の特徴を理解し、肯定的に対応するように努める(ASDの共通特性と、個々の子どもに固有の特徴を理解し、適切な対応を行うことで二次障害の発生を防ぐ)。②情報が整理された、分かりやすい環境になるように調整する(学校空間の使い方や時間割を視覚的に構造化する。予定や活動の流れが一目で分かるように工夫し、今後の見通しを子どもが持てるようにする)。③社会性の発達を支援する(子どもの特有の言葉遣いを理解して周囲に翻訳したり、子どもの特有の興味や拘りを活かせる活動に子どもを従事させたりすることで、コミュニケーションに巻き込みつつ、周囲との関わり方を一つひとつ具体的に指導する)。

2.障害がある、あるいはそれを疑われる子どもの保護者を教師が理解し支援していくには次の4点への考慮が必要である。①インクルージョンに関する教師と保護者の認識のズレ。②子どもの障害を保護者が受容することは容易ではなく、長い時間が必要であること。③過去に保護者が配慮に欠けた専門性の低い専門家に不信感や怒りを感じたことがある可能性。④子どもの問題の責任を一方的に追及される不安に起因した保護者の防衛的な姿勢。⑤教師に保護者が求める役割と教師の思いとのズレ。

 教師は上記を考慮しつつ、保護者の側から保護者を理解するという共感の態度を貫き、保護者を様々な機関や人間と連携して支えなければならない。例えば、①については、保護者には「地域の学校に通わせたい」や「通常学級でも特別支援教育は可能なはずだ」等の期待があり、教師には「一人の子どもだけを特別に見ることはできない」や「特別支援教育の専門ではないので対応できない」等の思いや事情があるであろうが、教師がするべきことは教師の言い分の主張ではなく、保護者の思いに共感を示すことである。②についても同様である。障害の受容は容易ではないため、教師は第一に保護者の苦悩に共感するべきである。そして、一生に渡る受容過程の一部で保護者を支えさせていただくという謙虚な態度を示すのが良い。③に関しても共感が重要である。過去の専門家に対する不満や不信感を保護者が表明した場合、「それは自分のしたことではない」という形で反論するのではなく、保護者の思いをひたすら受け止めるべきである。この過程で保護者と子どもに関する情報に触れることにより、保護者に対する共感が更に増していくと考えられる。その上で教師は、あくまでも専門家として、子どもが学校で成長・発達していくという結果を実際に出すことで、保護者の信頼を勝ち取らねばならない。④については、子どもの問題点を保護者に単に指摘するのではなく、子どもの成長や問題解決を目指すチームの一員として保護者を位置付け、保護者と仲間になることで情報共有を進めることが教師の行うべきことである。最後に⑤についてであるが、教師は一人で抱え込まずに、様々な機関や人間と役割分担をしながら問題に取り組むべきである。保護者が求めるものを対話によって適切に把握し、共感を持ちつつも自分の役回りを弁えて振舞う柔軟性と冷徹さが、教師には必要不可欠といえる。

参考・引用文献

西本絹子著 『教師のための初等教育相談~日常から子どもに向き合うインクルーシブな発達支援~』 萌文書林出版、2016年、p.138‐171

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このレポートは要約型レポートです。

「一つの発達障害を取り上げ」の部分が、やや難しいかもしれませんが、指定の教科書から必要な部分を探して、要約すればOKです。

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