PB3100_初等教育相談の基礎と方法_1単位目



1.教師の行う教育相談の目的・内容・特徴を、カウンセラーの行うカウンセリングと比較しながら、以下より記述する。 
 教育相談の目的は「子どもの発達に応じて、問題を自律的に乗り越えていく力を育てること」である。日本学校教育相談学会によると、教育相談とは、「学校という社会的集団の維持や集団への適応、人格の発達や心身の健康をはかる生徒指導」という枠組みの中で、「教師が、児童生徒最優先の姿勢に徹し、児童生徒の健全な成長・発達を目指し、的確に指導・支援すること」とされる。 
 臨床心理士等の専門性を有するスクールカウンセラー(以下SCと略す)によるカウンセリングの内容と比較し、教師による教育相談の内容・特徴を整理すると次のようになる。①SCの対象は、心の問題を抱える児童とその保護者であるが、教師の対象は全ての児童とその保護者である。②SCの目的は、学校不適応やその兆しを抱える子どもが心の健康を取り戻し自己実現を進めるための支援、そのための保護者・教師に対する支援であるが、教師の目的は、学習面・心理社会面・進路面等に関する成長・発達への支援、子育て支援としての保護者・家庭支援、開発・予防・問題解決である。③SCの用いる方法は、カウンセリング、プレイ・セラピー等の心理臨床的技法であるが、教師の用いる方法は、指導・カウンセリングマインドを活かした相談である。④SCが活躍する機会・場は、学校内の面接室(教室とは別の枠組みで、非日常性・外部性を持つ)であり、SCは守秘義務を慎重に考慮しつつ教師と連携しながら働くが、教師が活躍する機会・場は、学校教育が行われるあらゆる場面であり、教師は臨機応変に日常性の中で働く。 
 以上、SCと教師を比較してきた。両者には上記のような違いがあるものの、重要な共通点がある。それが③で言及したカウンセリングマインドである。これは、子どもの行動自体に指導が必要であっても、子どもの側から子どもを見ることにより、問題行動を起こした子どもの気持ちを理解しようとする視点である。SCと教師は別の職業であり、その実践の内容・特徴は当然異なるが、教師による教育相談には、指導の側面だけでなく、受容し養うという側面が必要不可欠であり、後者の側面がカウンセリングマインドに該当するということである。教師は、社会が要請する課題に応じて児童生徒の技術や知識等の資源を成長させる「ひきあげる機能」と、児童生徒個々人が持つ資源、性格特性や気持ち・要求等の心情に配慮する「養う機能」の2つの矛盾する機能を併せ持つ存在であり、後者があるからこそ、前者が機能し、指導が子どもの心に届くと考えられる。 


2.子どもを発達的な視点から理解することと、子どもの問題行動の捉え方について、以下より詳述する。 
 はじめに、子どもを発達的な視点から理解することについてであるが、これは子どもを「時間的・発生的な視点から捉える」という視点である。つまり子どもを「過去から未来に向かう生涯発達の中で変化し続ける存在として理解する」という視点である。たとえ子どもが問題行動を取ったとしても、その子どもの姿を、望ましい状態に至るための一時的な姿とみなし、更なる発達に向かおうとする存在として捉えるということである。 
 また、発達的な視点とは、子どもを取り巻く社会文化的環境を包括的に捉え、誰もが発達の過程で「問題」や「危機」を起こし得るという見方をも指すものである。そのため教師には、アセスメント(多面的に情報を集め、困難の状況を作り出している事柄や事情を把握し、問題を作っている物事の構造や関係を丁寧に整理すること)を行い、教師や学校の在り方までを含む状況全体を改善対象にする必要がある。以上が、子どもを発達的な視点から理解するということの説明である。 
 次に、子どもの問題行動の捉え方についてであるが、教師はこれを「なくすべきもの」と捉えずに、「問題行動を取らなくてもいいように育てて欲しい」という、子どもからの「発達への要求」として捉えるべきである。 
 問題行動は次の形で表現される。①身体化(発熱や腹痛、吐き気や嘔吐等の身体症状)。②行動化(拘りや強迫的な行為、退行等の非合理的な行動、社会ルールから逸脱した行動)。③言語化(ウザイ等の何らかの言葉)。④出せない(心の危機を抱えながら、それが言葉にも行動にも身体にも表されることがない)。④の察知は困難であるが、教師は上記から子どもの支援ニーズを察知してこれに取り組まねばならない。 
 また、児童精神科医のカナーが提唱する下記の問題行動の意味も教師は考慮すべきである。①入場券(問題行動は問題の本質に入るための入場券)。②信号(何らかの良くないことが生じており、その本質を見出して助けて欲しいという警告)。③安全弁(問題行動を起こすことで心の均衡を保ったり、より深刻な問題になることを防いだりしている)。④問題解決の手段(最良ではないが、不具合に対処するための方法)。⑤厄介物(厄介であればあるほど早期に支援の機会に恵まれる)。 

参考・引用文献 
西本絹子著 『教師のための初等教育相談~日常から子どもに向き合うインクルーシブな発達支援~』 萌文書林出版、2016年、p.19‐103 

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