PL2020_知的障害者の生理・病理_1単位目

課題
発達障害の定義を説明しなさい。また、具体的な発達障害を挙げてその障害を引き起こす原因仮説を述べなさい。また、知的発達障害は様々な発達障害に併存することが多い。どのように鑑別したらよいだろうか。


 
 発達障害の定義は、アメリカ公法によると、「(A)精神的障害または身体的障害を持っている者または精神的障害と身体的障害を合わせて持っている者。(B)22歳以前に障害が出現している者。(C)将来とも障害が続くと思われる者。(D)次のような主たる生活能力のうち、3つまたはそれ以上の項目で重大な機能上の制限がある者。①身辺の自立、②受容言語と表出言語、③学習能力、④移動能力、⑤自己統制、⑥生活の自立、⑦経済的自立。(E)特別の領域や2つ以上の領域にわたる総合的な処置や療育や、個別に調査されたサービスを生涯にわたって、また継続期間を拡大して必要としている者」となる。現在、発達障害には、精神遅滞(知的障害、知的発達障害)、脳性麻痺てんかん自閉症学習障害、重症心身障害等が含まれている。

 具体的な発達障害として、てんかんを取り上げる。てんかんは「大脳のニューロン神経細胞)の過剰な放電に由来する反復性の発作(てんかん発作)を主な症状とする」ものである。

 てんかんの原因についてであるが、現時点での医学知識で原因がはっきりしないものがてんかん全体の2分の1を占め、お産の前後の異常が原因であるてんかんが全体の4分の1、出生後の感染症、外傷が原因であるてんかんが全体の8分の1、遺伝が原因であるてんかんが全体の12分の1を占めると考えられている。

 また、てんかんの原因は、発症年齢により、次のように推定される。①乳幼児期:周産期つまりお産の前後における障害(仮死、外傷)。中枢神経感染症。先天性脳奇形。②学童期:頭部外傷。中枢神経感染症。周産期障害。特発性(原発全般てんかん、良性ローランドてんかん)。③思春期:特発性(原因不明)。頭部外傷。脳の動静脈奇形。④成人期:頭部外傷。脳腫瘍。動静脈奇形。動脈硬化による脳血管障害。⑤老年期:脳血管障害。脳腫瘍。

 てんかんへの対処法についてであるが、発作が起きた場合、周囲の者が慌てないことが重要である。その上で、①周囲から危険物を取り除く、②嘔吐物の誤飲を防ぐために、患者の顔を横に向け、下顎を顔の前方に引っ張る、③歯が折れるので物を噛ませない、④発作止めの座薬を使う、⑤発作の時間を測る、等の対応が必要である。ほとんどのてんかん発作は数分以内におさまるが、もしも発作が通常よりも長かったり、発作が繰り返し起きたり、発作で外傷を負ったり、発作の様子がいつもと異なるのであれば、緊急に病院を受診するべきである。

 てんかんの治療についてであるが、抗てんかん剤の利用が有用である(ホルモン療法や外科的治療も利用可能である)。発作型やてんかん類型、年齢等を考慮し、単剤かつ少量での使用から抗てんかん剤の服用を開始し、発作の程度、定期的な脳波検査の結果、抗てんかん剤の血中濃度、副作用との兼ね合いを見ながら、患者にふさわしい抗てんかん剤の種類と量を見極めていくことになる。このようなてんかんの治療は長期に及ぶことが多いため、患者や家族の根気と、主治医との信頼関係が不可欠である。

 以上、てんかんについて詳述してきた。最後に、発達障害に並存する知的発達障害の鑑別診断法について述べる。

 知的発達障害とは、アメリカ精神医学会の診断によれば、「①知的機能が著しく平均より低いこと(IQがおよそ70以下)、②適応能力に複数の障害があること(年齢、文化水準に考慮して)、③発達期(およそ18歳未満)の間に発症すること」を要件とする疾患である。知的機能と適応能力という文言から察することができるように、知的発達障害は、知能だけの問題ではなく、日常生活や社会生活における適応の問題も関与している。そのため、知的発達障害の有無を鑑別するには、知能機能を測るための知能検査だけでなく、適応能力を測るための発達検査を行うことが必要である。

 まず、知能検査についてであるが、代表的な検査は次の通りである。①全訂版田中ビネー知能検査法。②WISC‐Ⅲ知能検査。前者は、個人間差(集団の中でのその人の位置)の把握に優れ、後者は、知能の個人内差の把握に適している。次に、発達検査についてであるが、①津守式乳幼児精神発達質問紙。②遠城寺式乳幼児分析的発達検査。③新版K式発達検査法。④K‐ABC心理教育アセスメントバッテリーの4つが代表的な検査である。

 上述の発達検査の結果により、発達障害の有無を判断できる。そして上述の知能検査により、IQが算出できるので、これを指標として、知的発達障害の有無を判断できる。もちろん、鑑別の際には、上記検査だけでなく、検査時における子どもとのコミュニケーションや行動観察を通した子どもの把握も必要不可欠である。この内容と併せて、総合的に、発達障害に併存する知的発達障害の鑑別を行っていくべきである。

参考・引用文献

黒田佳孝・小松秀茂編 『発達障害児の病理と心理』 培風館、2015年、p.9、p.37‐48、p.145‐155

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