PA1020_教育原理_1単位目



1.自分自身のこれまでの教育的体験を踏まえた教育観

 教育について考える際に最も重視すべき観点は、教育を受ける児童生徒にとって、教育が彼等に何らかのポジティブな効果を及ぼすか否かという観点であると私は考える。

 なぜなら、教育には、両親や教師によって、半ば強制的に「やらされる」ものという側面があり、これにより、学校やそこで行われる勉強という営みに拒否感を示し、勉強から離れていく児童生徒が、常に一定数存在し続けているからである。

 学校や勉強が好きと本心から言える児童生徒も中にはいるであろう。しかし、大多数の児童生徒は、学校や教育に少なからずの不信感と嫌悪感を抱き、なるべく教育からは距離を置きたいと考えているのではないだろうか。

 私自身、家庭や学校で両親や教師から、「あなたのため」という定型句とともに強いられる勉強には、一抹の理不尽さを感じていたものであった。どのような職業が世の中にあり、自分に向いた職業はそのうちのどれなのかも分からぬまま、ひたすら勉強をし続けることに、疑問を感じたことがあった。

 以上のことから、私の教育観は、経験主義のそれに近いといえる。具体的には、デューイの提唱した「子ども中心の学校教育のあり方」に私は賛同し、「学校と社会の連続、直接的体験や活動の重視、個性の尊重といった考え方」に強く共感する。

 もちろん、教育の名の下に強制された勉強を通して得られるものも確実にある。例えば、体育における逆上がり。逆上がりが生活や仕事とどのように結び付いているのかは不明であったが、達成した際の喜びは格別であった。逆上がりを学ぶことは、生活や仕事に必要不可欠な読み書きや計算の技能を国語や算数の授業で学ぶこととは異なるものの、「このようなことも自分にはできるのだ」という自信が得られたことは確かであった。生活や仕事と直接的に結び付いた知識・技能だけが、児童生徒に学ばれることが理想ではあるが、このことによって失われてしまう教育の効果もあるのではないか。このように慎重に考えつつ、児童生徒にとって、教育の有難みが最大限に実感できる教育を、私は模索していく所存である。

 教育を受ける側と、教育を授ける側の間に、恨みしか残らないのであれば、これは悲劇である。この悲劇の度合いを可能な限り低減し、全ての児童生徒が、教育のポジティブな効果を最大限に享受できるように、デューイに代表される経験主義の考え方を軸にしつつ、系統主義の教育方法を適宜取り入れた教育を実践していきたいと私は考える。

2.明治期の学校教育史の要点

 明治5年に制定された学制は、我が国初の近代公教育制度であるが、これは、国力増強を意図して、欧米先進諸国の学術や文化を積極的に摂取するために制定されたものであった。同年、小学校での教授方法の伝授を目的として、東京に師範学校が設置される。その後、師範学校は日本各地に設置され、教員養成の体制が整えられていった。師範学校の整備と設置を進めると同時に、文部省は小学校教員心得や小学校教則綱領を定め、教員の資質や能力、各教科の目的や内容の規定に注力した。

 明治12年には、学制の不足を是正するために、教育令が公布され、明治13年にはその改正が行われた。改正された教育令によって、師範学校の各府県における設置が義務付けられた。明治14年には、師範学校教則大綱が制定され、小学校初等科と中等科と高等科それぞれの教員を養成する師範学校の段階(初等師範学校、中等師範学校高等師範学校)が定められた。

 その後、初代文部大臣森有礼の下、明治19年に、小学校令、中学校令、帝国大学令師範学校令、諸学校通則が公布された。このうちの師範学校令により、師範教育の体系化が図られた。

 明治23年には、国の教育方針を示すために、教育ニ関スル勅語教育勅語)が発表された。教育勅語の内容は、「天皇個人の教育理念を国民に対して直接表明する」という形式で構成されており、天皇の臣民の育成を目的とするものであった。

 大正に入ると、教育の諸方策の検討を目的として臨時教育会議が内閣に設けられた。これは戦争(第一次世界大戦)を踏まえてのことであった。同様に、昭和16年国民学校令が公布され、小学校が国民学校に改められ、教師は皇国民の練成を担う者とされた。昭和18年には、師範教育令が改正され、師範学校の官立への移管と、教科書の国定制が決定された。これらも戦争(第二次世界大戦)を意識してのことであった。

 以上のことから、明治期の学校教育には、国家の増強と戦争での勝利が明確な目的として存在していたといえる。価値判断はさておき、教育は、国家の意思の影響を多分に受けるということである。

参考・引用文献

佐々井利夫・樋口修資・廣嶋龍太郎共著 『教育原理』 明星大学出版部、2016年、p.45‐47、p.54‐74

捕捉

このレポートの課題1は、小論文型レポートです。

このレポートの課題2は、要約型レポートです。

要約型レポートの書き方については、下記が参考になります。小論文型レポートの書き方についても少しだけ触れています。

課題2の内容は、PA1040_教職入門_1単位目の課題1レポートを再利用したものです。

使えるものはどんどん使うと良いです。