PA1020_教育原理_2単位目



1.戦後日本の教育改革について

 戦後日本の教育改革において特筆すべき論点として、①国家主義的教育体制の崩壊と、②教育勅語体制から憲法教育基本法体制への変化と、③教育基本法の改正の3つを挙げたい。以下、これら3つの詳細を述べる。

 はじめに、①についてであるが、これは、GHQ(連合国最高司令部)の主導により、「戦前の極端な国家主義軍国主義を一掃し、日本の民主化を図る」目的で出された、「日本教育制度の管理」に関する4つの指令から始まる一連の教育改革を指す。これらの指令は、具体的には、「戦前教育において重視された軍国主義的・国家主義的思想の普及の禁止」や「国家神道の思想及び信仰を政府が保護・奨励することの禁止」や「神道による教育の学校からの排除」や「軍事教練や修身、日本歴史及び地理の授業の停止と教科書の回収」や「軍国主義、極端な国家主義を鼓舞した教育関係者の罷免・追放」を可能ならしめる措置であった。

 次に、②についてであるが、これは、戦後教育を、明治23年に公布された教育勅語教育ニ関スル勅語)ではなく、日本国憲法教育基本法に基づいて実施する措置を指す。教育勅語とは、「皇国民の練成」を主眼に置き、教育を国家に奉仕するものと捉える戦前教育の指導原理であった。ここでは、「個人の持つ独自の侵すべからざる権威」は軽視されていたといえる。一方、昭和21年に制定された日本国憲法では、「国民主権」、「基本的人権の尊重」、「平和主義」の三大原理が基調とされ、さらに、日本国憲法の精神に則って制定された教育基本法では、「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきもの」と規定され、教育の「中立性」と「不偏不党性」と「自主性確保」の重要性が表明されている。

 以上の①と②より、戦後教育では、戦前教育への痛切な反省に基づいて、教育の民主化と、教育の国家からの独立が図られ、これらが教育改革の重要な理念として、日本国憲法教育基本法の中に位置付けられたといえる。

 最後に、③についてであるが、これは平成18年に、「郷土や国を愛する心」等の文言を盛り込むことにより、教育基本法が改正された事態を指す。この動きは、これまで概観してきた戦後教育の方向性とは異なる動きといえる。「国を愛する心」という文言は、国家中心の戦前教育を髣髴とさせるものであり、教育基本法が謳う、教育の「中立性」、「不偏不党性」、「自主性確保」の理念との兼ね合いが、今後議論されてくることが予想される。

2.現在の学校教育の課題

 現在の学校教育の課題は、「少人数編成のクラスの導入」と「低学力の生徒への徹底的な支援」の仕組みと「質の高い教員の養成」であると私は考える。ここでの学力とは、PISA(国際学力調査)が定義する学力であり、知識の獲得量ではなく、「知識を活用、発展させて社会生活で使う能力」を指す。この学力は、「これまで予想もしなかった災害や原発大事故に対処するためにも、従来の発想を乗り越える」ことを可能にする学力といえる。

 PISA型学力を伸ばすには、教育課程に関する2つの立場のうち、「科学・学問の理論体系を重視する立場である「系統主義」」ではなく、「児童生徒の成長や生活経験を重視する立場である「経験主義」」を採用すべきである。なぜなら、経験主義は、PISA型学力が高く、かつ、学力格差の小さいフィンランドにおける教育のあり方と親和性が高いからである。「知識はつねに変化する」という考えや、「教科書は唯一の正しい知識の集成というものではなく、1つの良質な資料」であり、「知識はそれぞれの個人によって構成されるもの」という前提がフィンランドでは成立している。これらの内容は、経験主義に近い。そして、このフィンランドでこそ、「少人数編成のクラスの導入」と「低学力の生徒への徹底的な支援」の仕組みと「質の高い教員の養成」が既に確立されているのである。学力格差を最小にしつつ、PISA型学力の向上を目指すのであれば、既に実績を出している国の教育を大いに参考にすべきであろう。

 PISA型学力の向上が求められる背景として、変化の激しい社会状況を踏まえた上での、文部科学省による「生きる力」の育成の提言が挙げられる。「基礎的・基本的な知識や技能を確実に修得させ、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力や、主体的に学習に取り組む態度」を育成するには、従来の系統主義的な学習とは異なる教育方法が必然的に要請されるといえる。

 なお、上記の要請に応えるためには、教育課程の内容を、PDCAサイクルの中で必ず行い、児童生徒の個性や地域の状況に合わせて絶えず改善していく必要がある。なぜなら、生きるために必要な知識は個々人で異なり、かつ、状況は常に変化していくからである。

参考・引用文献

佐々井利夫・樋口修資・廣嶋龍太郎共著 『教育原理』 明星大学出版部、2016年、p.105‐140

青木秀雄著 『現代初等教育課程入門』 明星大学出版部、2014年、p.249‐267

捕捉

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