PB2140_初等理科教育法 _1単位目

課題
1.「これまでの理科教育の問題点(欠陥)」について、テキストから学んだことをまとめ、それについての私見を述べよ。
2.「これからの理科教育はどうあるべきか」について、テキストから学んだことをまとめ、それについての私見を述べよ。


 

1.これまでの理科教育の問題点は、大別して4つある。以下より、これらを概観した上で、私の考えを述べる。

 これまでの理科教育の問題点の第一は、教科書が試験本位に作られており、教師が授業で実験や観察を行わずとも、試験で出題される実験や観察に関する問題に児童が対応できるように、教科書に実験や観察の結果が掲載されていることである。このことは、児童が実験や観察の結果を主体的に考えて予想し、意欲的に実験や観察に取り組むことを不可能にしてしまう。

 問題点の第二は、授業で児童が取り組む問題が、児童の興味関心を引かない、何の役に立つのか不明の退屈な問題であることである。また、問題点の第三は、児童が何を考えていようと、教師が正しい答えを押し付けることである。これら第二と第三の問題点は、理科の授業を、退屈な問題の答えを教師の言うままに覚えるだけの苦行の時間にしてしまう。

 問題点の第四は、挙手をしていない児童まで授業中に教師が指名し、質問に答えさせようとすることである。間違ってはならないという価値観が存在している状況で、このような無理強いを教師が行う場合、児童にとって授業は拷問の場でしかなくなる。

 以上、これまでの理科教育の問題点を概観してきた。以下に、上記4つの問題点についての私の考えを述べる。

 これまでの理科教育というものを私は、教師等の権威に従順で、自分の頭で考えて自分の考えを述べることのできない、理科嫌いの人間を作り出すものと考える。

 例えば、静力学の論理に関する「机の上にのっている本には、地球の引力と机の抗力とがはたらいていて、その二つの力がつりあっている」(p-172)というような教科書の文言は、「生きてもいない机が力を出すなんて!」(p-173)という尤もな違和を児童に生じさせるものである。しかし教師は、有無を言わさず上記文言を押し付ける。その結果、児童は理科教育の授業において、科学の論理に必須である「ものごとに筋道をたてて考える合理的な考え方」(p-137)ではなく、「教師等の権威に従うこと」を学ぶことになる。あるいは、児童は理科嫌いになり、理科の勉強に対する意欲を減退させ、落ちこぼれてしまうと考えられる。

 これでは、自分の考えを表現して他者と議論を重ね、最善の政策を決定せんとする民主主義の精神が育たず、国のあり方にも悪影響が及ぶ危険性がある。上記の問題点は、理科教育に留まらず、学校における全ての教科で確認できるはずである。そのため、まずは理科についてだけでも可能な限り早急に抜本的な改革を行い、最終的には学校教育全体を作り直すべきであると考える。

2.これまでの理科教育の問題点は、①教科書が試験本位に作られ、実験や観察の結果が教科書に掲載されていること、②授業で児童が取り組む問題が、児童の興味関心を引かない、何の役に立つのか不明の退屈な問題であること、③児童が何を考えていようと、教師が正しい答えを押し付けること、④挙手をしていない児童まで授業中に教師が指名し、質問に答えさせようとすることの4点である。これらの4点を、現行の理科教育から取り除けば、これからの理科教育のあるべき姿が明らかになる。

 すなわち、①児童が実験や観察の結果を主体的に考えて予想するように、実験や観察の結果が事前に分からないようにすること、②考えるに値する面白い問題を授業で出題すること、③教師は答えを児童に押し付けないこと、④実験や観察の結果の予想を立てた人と、発言したい人のみを教師は指名し、間違うことを自分の頭で考えた証拠として奨励して、どのような意見をも歓迎することの4点を実現させた教育が、これからの理科教育のあるべき姿といえる。科学教育では「子どもたちが自由に考え、自由に討論し、実験によって自分自身の考えの成否をたしかめてその考えを発展させる」(p-121)ことが必須である。上記4点を備えたこれからの理科教育は、実験や観察の予想が的中するか否かを実験や観察で確かめる興奮と、他者との真剣なやり取りに起因した血湧き肉踊る刺激に溢れたものとなり、上記科学教育の必須条件を満たすことができると考えられる。

 また、これからの理科教育を通して児童は、「討論で勝ったようにみえるものが必ずしも正しいとはいえない」(P-76)や「多数派が正しいとは限らない」(P-48)や「常識というのはあやふやなものだ」(P-48)等の教訓を得る。さらに、これからの理科教育を受けることで、児童の態度は、「クラスの友だちの話をよくきくようになり、ふだんできの悪い子どもをばかにしなくな」るというものに変容し、「自分の考えをどんどんホーム・ルームの時間や算数・国語・社会の時間などにも積極的に発言するようになり、クラスがまとま」(P―190)るという効果も期待できる。

 上記の教訓や態度は、民主主義国家に生きる人間が基本的に身に付けておくべき教訓や態度である。これからの理科教育は、科学教育を充実させるだけでなく、児童に民主主義の精神を学ばせることを可能にする点で、重要な価値を持つ優れた実践であると私は考える。

参考・引用文献

板倉聖宣著 『未来の科学教育』 仮説社 2016年

捕捉

このレポートは、要約型レポートと小論文型レポートを足して2で割ったレポートです。

指定の教科書を要約し、その内容を踏まえて自分の考えを述べる必要があります。

このようなレポートの書き方については、下記が参考になります。

それにしても、明星大学の理科関係の教科書やレポート課題は、とても面白いです。

元教員の父に読ませたら、「うおおお。面白いー。面白すぎるぅ~。こんな授業のやり方があったのか~」と悶えていました。

教科の枠を超えて、民主主義を成立させるために必要な資質や技能を鍛えようとしている点が、素晴らしいです。

この点は、社会科のレポートにも共通していると思います。

これらのレポートで学んだ理念や知識に基づいて、小学校の教科指導を、各教員達が真剣に教育現場で行えば、よりよい社会が形成されるに違いありません。