PB2020_理科_1単位目



1.子ども達が歓迎する理科の授業とは、「楽しい問題」と「役に立つお話」が備わった授業である。

 例えば、「豆電球のガラスが割れても豆電球はつくか?」(p‐35)というような問題と、「豆電球のガラスの中には窒素ガスが入っており、フィラメントが熱で焼き切れてしまうことを防止している。そのため、ガラスが割れて窒素ガスが抜け出てしまうと、フィラメントは熱に耐え切れず燃え尽きてしまう」(p‐40)というような話が備わった理科の授業が、子ども達が歓迎する、「楽しい問題」と「役に立つお話」が備わった理科の授業といえる。

 このような理科の授業が子ども達に歓迎される理由として、「楽しい問題は、正答者が少数派になるような難易度の高い問題でもあり、多数の人間が間違えることから、間違うことの敷居が下がること」や、「盲目的に暗記した答えではなく、自分の頭で考えて立てた予想が外れると、純粋にその理由が知りたくなること」や、「間違うことで、間違う前よりも正しい知識が増え、賢くなれること」等が挙げられる。

 しかし、「楽しい問題」と「役に立つお話」が備わった授業の本質は、子ども達の日常生活や経験と密接に関係する話題が登場していることにある。例えば、冒頭で言及した問題では、豆電球(p‐30)が取り上げられており、これは子ども達にとって身近な存在である。同様に、コンセントの穴の長さ(p‐18)や、月の満ち欠け(p-16)や、蟻の姿(p-17)や、信号機における赤信号の位置(p-20)等も、子ども達の身近に存在する事柄である。これらは全て、子ども達が生きる世界にリアリティを伴って存在しているものであり、子ども達にとって馴染みの深い、既知のものである。

 ただし、子ども達に馴染みの深い、既知の事柄が、子ども達に正しく理解されているとは限らない。この点が、子ども達が歓迎する理科の授業において巧みに利用されているといえる。すなわち、子ども達にとって身近な事柄ではあるものの、「見れども見えず」(p-20)という言葉が似合うような、子ども達の盲点を突く問題が「楽しい問題」であり、このような問題とその答えを提供する授業が、子ども達が歓迎する理科の授業といえる。このような授業を受けた子ども達は、「知っててもよさそうなことなのに、実はよく知らなくて、その結果を凄く知りたくなる」(p‐47)のである。これが、身近な事柄に関する問題(楽しい問題)とその答えの解説(役に立つお話)を提供する授業が子ども達に歓迎される所以であると私は考える。

2.理科の授業においては予想することが重要である。なぜなら、予想をもって問いかけることをしない限り、本当のことは見えてこないからである。

 例えば、豆電球について我々は、どれほどのことを知っているだろうか。豆電球は我々に馴染みの深い、既知のものである。豆電球のみを用いることは少ないかもしれないが、誰もが停電時に懐中電灯を使用したことはあるであろう。懐中電灯は豆電球と電池を組み合わせた道具であるため、豆電球は我々に身近な存在といえる。

 このようにして我々は、停電時に使う懐中電灯として豆電球を利用しているが、単に停電時にスイッチを押して光らせて用を足しているだけでは、豆電球にまつわる本当のことを知ることはできない。「豆電球のガラスが割れても豆電球はつくか?」(p‐35)というような問題意識を念頭に、「光がつくのは豆電球のフィラメントの部分であるから、豆電球はつく」(p‐37)や「ガラスには何らかの存在理由があるので、ガラスが割れたら豆電球はつかなくなる」(p‐37)や「ガラスの機能はフィラメントの光を増幅させることだと考えられるので豆電球はつくにしても暗くつく」(p‐37)等の予想を立てて、実際にガラスの割れた状態の豆電球に電池を接続する実験を行って初めて、我々は豆電球にまつわる本当のことを知ることができる。すなわち、問題に対して予想を立てて実験でそれを検証し、「つくけど、すぐ消える」という結果を得た上で、「豆電球のガラスの中には窒素ガスが入っており、フィラメントが熱で焼き切れてしまうことを防いでいる。そのため、ガラスが割れて窒素ガスが抜け出てしまうと、フィラメントは熱に耐え切れず燃え尽きてしまう」(p‐40)という理由の解説を、心から納得して理解することができるようになる。

 この時、予想の大部分は外れてしまい、多くの人々が間違いを犯してしまうことになる。しかし、「何故こうなるのだろう?予想が外れて間違ってしまった理由が知りたい」という欲望が自ずから生まれ、その後になされる解説がしっかり納得できる状態になる。これが、理科の授業における予想の意義である。予想をもって問いかけることで、我々は本当のことを心からより深く理解できるようになるのである。

 以上が、理科の授業において予想することが重要といえる理由である。予想を立てて問題に取り組めば、答えや解説を暗記した場合には得られない、驚きと納得と理解の深みが得られ、本当のことが見えてくるのである。

参考・引用文献

小原茂巳著 『未来の先生たちへ』 仮説社 2015年

捕捉

このレポートは要約型レポートです。

「児童・生徒が歓迎する理科の授業についての私見」が求められているので小論文型ともいえます。

しかし、「児童・生徒が歓迎する理科」に関する情報を、指定の教科書からピックアップして要約する必要があるので、結局は要約型レポートです。

要約型レポートの書き方については、下記が参考になります。

それにしても、理科関係の明星大学通信教育部のレポートを書く作業は、とても楽しいものでした。

まず、指定の教科書の内容が、非常に面白いです。

あまりに面白いので、下記の本も買ってしまいました。 


学ぶことが楽しさそのものであるとき、人は幸せを感じますね。