PB2140_初等理科教育法_2単位目

課題
1.「たのしい科学の授業の成立条件」についてテキストから学んだことをまとめ、私見を述べよ。
2.「たのしい理科の授業」であるために、授業を進める際に<気をつけなければならないこと><大切にしなければいけないこと>はどういうことだろうか。テキストで学んだことをまとめ、私見を述べよ。


 

1.科学の授業を児童に喜ばれるものにするには、①考えるに値する面白そうな問題を出題すること、②答えの予想をすること、③予想した理由を出し合って討論すること、④実験で答えを確認すること、⑤自由な発言を児童に推奨し、教師は一切押し付けを行わないことの5点に留意する必要がある。以下よりこれらの詳細を述べる。

 はじめに、①についてであるが、考えるに値する面白そうな問題の具体例として、はかりを使った体重の量り方の問題(P-46)が挙げられる。これは、はかりに両足で立つ場合と、はかりに片足で立つ場合と、はかりにしゃがんで踏ん張る場合とで、体重の測定値に変化は生じるかという問題である。

 はかりで体重を量ることは児童にとって身近な事柄である。また、はかりで体重を量る際の体勢が、測定値に影響を与えるか否かという問いは、素朴で簡単に答えられそうでありながら、返答に迷ってしまう問題である。自宅で実験をして、答えを気軽に確認できるぐらいに、児童にとって馴染みのある事柄が取り上げられているが、実際に実験して確かめた児童は全くいないという、児童の盲点を突く問題ともいえる。

 問題が上記のような、児童の生活経験と密接に関係した事柄についての、意表を突く問題であるからこそ、問題の答えの予想を立てようという主体性が、児童に生まれるのであろう。①に後続する②③④では、①の問題の答えを予想した児童が、その予想を裏付ける理由を発表し合い、正しい答えを巡り白熱した議論を繰り広げる。この際に常に重要な役割を果たしているのは⑤である。教師は児童に自由な発言を推奨し、一切の押し付けを児童に行わず、司会役に徹する。意見発表の強制や、意味不明な事柄の暗記の強制を教師は一切しないため、児童にとって教室はリラックスできる快適な場所となっている。教師が教師らしい活動をするのは、③において予想の理由を児童に発言させるために指名を行う場合に限られるが、ここでの指名は、児童に自由な発言を推奨した上での指名であり、何らかの予想を自力で立てられた児童に限定されているので、居心地の悪さや緊張を児童に強いる理不尽なものではない。かくして授業は、様々な考えが児童によって提示されることで、④で明らかになる理科の知識としての正しい答えとともに、様々な教訓を学ぶことができる、知的興奮に溢れた場となる。

 以上、児童に喜ばれる科学の授業の成立条件を概観してきた。強制や無理強いを排除した環境で、考えるに値する面白い問題を出題し、児童の考えに敬意を払って自由な発言を促しつつ、答えを実験で確かめること。これらが児童に喜ばれる科学の授業の成立条件である。

2.たのしい理科の授業を進める際には、「答えの予想をさせた直後」と「児童に理由をたずねる時」と「討論時」の3つの局面で、教師の言動に関する注意点が存在する。以下より、これらの詳細を概観する。

 はじめに、「答えの予想をさせた直後」での注意点についてであるが、この際に教師は、必ず予想分布の集計を正確に行う必要がある。なぜなら、この作業では、その後の討論を成立させるための情報提供だけでなく、「すべての子どもの予想を平等に一票として扱う」(p-62)という民主主義の精神の伝達も意図されているからである。さらに、一人の漏れも誤りもなく集計することで、「子どもひとりひとりへの愛情・尊重の精神」が児童に伝わると共に、挙手を通してどの児童がどの予想を支持しているかが分かるようにすることで、「科学というものは社会的な存在であって、科学的思考は他人との関係において発展したり停滞したりするものだ」(p-63)という教訓が学べるようにもなっているのである。

 次に、「児童に理由をたずねる時」の注意点についてであるが、何らかの予想を行った児童であれば、必ず理由を説明できるので、誰を指名しても問題はない。しかしここでは、「無口な児童」や「今回は正しい予想を行えた、日頃から自信がなさそうな児童」を指名し、その存在を周囲に知らしめたり、自信を持たせたりといった「教育的配慮」(p-55)が望ましい。

 最後に、「討論時」の注意点についてであるが、児童の発言に誤りが含まれていたとしても、教師は指導的な発言を控え、児童の「経験・直観・理屈を自由にくりひろげ」(p-74)させることが重要である。また、予想を立てさせる問題と、それ以外の知識や考えを問う質問とを区別し、後者については挙手をしている児童のみを指名することも大切である。これらの配慮は、「あらかじめそれについて正しく知っていなければならない」(p-51)という緊張感を払拭し、児童に思ったことを存分に発言させることを可能にするものである。

 以上、たのしい理科の授業を進める際の注意点を概観してきた。たのしい理科の授業は、児童の知的好奇心を刺激し、個々の児童の考えに敬意を示すことで、愛情と民主主義の何たるかを彼等に一挙に伝えようとする工夫に満ち溢れた、周到な計算に基づいた授業であると私は考える。この計算が、他の教科にも応用され、学校の全ての授業がたのしいものとなれば、不登校やいじめ等の問題の解決にもつながるのではないかと推測する。

参考・引用文献

板倉聖宣著 『未来の科学教育』 仮説社 2016年

捕捉

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このレポートは凄いですよッ!

何が凄いのかって?

仮説実験授業の提唱者である板倉先生本人が、レポートを添削して下さっている点が凄いのですよッ!

板倉先生の講評は以下の通り。

テーマについて正しく記述してあります。「討論」では挙手していない子には指名しませんが、発言していない子も友だちの考えを聞きながら学んでいることは「授業感想文」でわかります。押しつけのない自由な雰囲気をつくる授業運営も大切です。この授業は熱意のある教師なら誰でも楽しくできます。ぜひ試みてください。

by 板倉


仮説実験授業の内容やその射程の広さについては、次の板倉先生の本を手に取っていただけると、ご理解いただけると思います。


このレポートは、要約型レポートと小論文型レポートを足して2で割ったレポートです。

下記の記事が参考になります。

しかし

こんな拙論を読むよりも、板倉先生の本を読んだ方が、何十倍も実り多いです。

マジで