PA2030_教育心理学_1単位目

課題
ピアジュの発達論にもとづいて、子どもの思考の発達について述べなさい。


 

 ピアジェによると、子どもの認知発達は、次の4つの時期に区分される。①感覚-運動期(0~2歳)、②前操作期(2~7歳)、③具体的操作期(7~11歳)、④形式的操作期(11、12歳以降)。これら4つの発達段階における子どもの思考の特徴を、以下より詳述する。

 はじめに、①の感覚-運動期についてであるが、この段階における子どもは思考活動なしに運動を行う。ただし、満1歳半頃から、物の永続性を理解できるようになる。物の永続性の理解とは、目の前にあった対象物が隠されて見えなくなったとしても、その対象物は元の場所にあり続けていることを理解していることを指す。

 例えば、目の前の時計がハンカチで覆われた場合、子どもは時計が雲散霧消してしまったものと捉えて、時計に手を伸ばすことをやめたり、突然泣き出したりする。また、時計が移動せられた後にハンカチで覆われると、子どもは時計が移動させられる前の場所を探索する。しかし、満1歳半を過ぎた子どもは、時計が移動させられた場所を探索するようになる。

 次に、②の前操作期についてであるが、この段階における子どもには、頭に浮かぶ表象(イメージ)に貼り付けた印(記号)としての言語が現れ、ある物を別の何かで表す象徴機能という認知行為が可能となる。しかし、言語を操作するまでには至らない。ここでの操作とは、「行為の内化」としてピアジェに定義されるものである。

 例えば、子どもが目の前にある果物を数える場合に、最初は果物に直接触れることで果物の数を数えていた子どもが、次第に自分の指を折って数えるようになり、さらには、果物を目で追いながら自分の頭の中だけで数えられるようになる。この頭の中で果物の数を数えられるようになることが「行為の内化」である。この操作は前操作期の子どもには不可能ということである。

 また、前操作期の子どもは、象徴機能の一つである描画を行うことが可能であるが、水平概念や垂直概念を正確に把握することは不可能である。そのため、実際に描画させてみると、斜めに傾いたビンに入っている水の水面を、傾いているビンの底と平行に描いてしまう。

 次に、③の具体的操作期についてであるが、この段階における子どもは、②の前操作期では不可能であった言語の操作が可能となる。そして、少し時間を置いて考えることで、論理的操作もできるようになる。論理的操作には、「系列化」と「加法的分類」と「乗法的分類」と「量の保存」の4種がある。

 「系列化」は、長さの異なる複数の棒を片方の端をそろえて比較し、短いものから長いものへと順番に並べる操作を指す。これは、前操作期の子どもには難しく、彼等は何も考えずに棒をぱっと並べてしまう。

 「加法的分類」は、雀は鳥に含まれ、鳥は生き物に含まれるという物事の包含関係の理解を指す。

 「乗法的分類」は、豆を形(丸形としわ形)と色(黄色と緑色)で分けるように、複数の視点による物事の分類である。

 「量の保存」とは、粘土が様々な形に変化したとしても、その粘土の量(物質量)や重さや体積は変化しないということの理解を指す。前操作期の子どもは、粘土の形が変化すると、粘土の量が減ったり、増えたりしたと捉えるが、具体的操作期の子どもは、変わらないと捉える。一般的に、ピアジェによると、粘土の量(物質量)については、7、8歳以降に保存の概念が成立するとされる。重さについては、9、10歳以降、体積については、11、12歳以降に成立するとされる。

 最後に、④の形式的操作期についてであるが、この段階における子どもは、仮説によって推理を行うことができる。

 例えば、振り子の周期を決定する要因を、ひもの長さ、おもりの重さ、おもりを離す位置、おもりを離す時に加える力の中から実験により特定する課題において、形式的操作期の子どもは、1つの要因だけを変化させ、残りの要因の状態は一定に保つようにして実験を行う。具体的操作期の子どもは、このようには実験を行えず、指針や比較のし易さを無視して、全ての要因の状態を変化させてしまう。

 他にも、形式的操作期に可能になる操作として、組合せの操作や、比例概念の利用が挙げられる。

 ピアジェによると、一般的に15歳の時点で形式的操作期が完了し、成人の論理につながっていくと考えられている。①感覚-運動期(0~2歳)、②前操作期(2~7歳)、③具体的操作期(7~11歳)、④形式的操作期(11、12歳以降)の4つの発達段階は、継起的なものであると同時に、思考の類型であるともいえる。なぜなら、成人は、上記4つの発達段階における思考の全てを行うからである。

参考・引用文献

古屋喜美代・関口昌秀・荻野佳代子編著 『児童生徒理解のための教育心理学』 ナカニシヤ出版 2016年 p‐21~p‐25

捕捉

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