PL2020_知的障害者の生理・病理_2単位目

課題
脳の機能と構造を説明し、その障害を具体的に説明しなさい。
(具体的とは前頭葉・側頭葉・頭頂葉後頭葉で生じる代表的な障害を2~3種類あげて説明しなさい)



 以下より、大脳皮質を中心に、その構造の説明と、大脳皮質連合野に存する機能を解説する。また、大脳の構造に対応する大脳皮質連合野が障害された場合に生じる代表的な高次大脳機能障害について詳述する。

 はじめに、大脳皮質の構造についてであるが、大脳皮質は、大脳の表面に広がる神経細胞による灰白質の薄い層を指す。この大脳皮質は、「視覚や聴覚などの感覚機能をつかさどる感覚野」と「運動をつかさどる運動野」と「これらのいずれにも属さない連合野」に区分される。

 上記の大脳皮質の内側、つまり、大脳の内側にあるものが、大脳辺縁系と呼ばれる領域である。大脳辺縁系については、その各部位を結ぶ、パペッツ回路とヤコブレフ回路の2つの回路の存在が知られている。前者の回路は、乳頭体‐視床前核‐帯状回‐海馬‐脳弓‐乳頭体から成る回路であり、記憶機能と関係があると考えられている。この回路で中心的な役割を果たしているのは海馬であり、海馬とその周辺部分の損傷により、重篤な記憶障害が生じる。後者の回路は、扁桃核視床背内側核‐眼窩前頭回‐側頭葉先端部‐扁桃核から成る回路であり、感情機能に関係している。この回路で中心的な役割を果たしているのは扁桃核であり、扁桃核を切除された動物は、恐怖や怒りを感じず、群れにおける自分の地位が理解できなくなる。

 以上、大脳の構造に関して、その表面の大脳皮質と、その内部の大脳辺縁系を概観した。以下より、大脳皮質における大脳皮質連合野を詳しく見ていきたい。

 大脳皮質連合野は、言語機能などの人間の高次な心理機能を主に担っており、額から後頭部にかけて、前頭連合野、頭頂連合野、側頭連合野、後頭連合野の4つの部分に分けられる。

 これら4つの機能についてであるが、前頭連合野は、様々な情報を統合し、行動に導く役割を果たし、頭頂連合野は、体性感覚野からの情報に基づいて身体の位置関係や方向を認知する役割を果たし、側頭連合野は、聴覚的な情報を認知する役割を果たし、後頭連合野は、眼から入った視覚情報の処理を担っている。これらのそれぞれの連合野が損傷された場合に生じる障害は、以下の通りである。

 まず、前頭連合野が損傷された場合についてであるが、この場合には次のような障害が生じる。①性格や情動の変化(無関心、無頓着、意欲の欠如、多幸的など)。②要求される反応が呈示される刺激と相反する場合(例えば、長い刺激には短い反応、短い刺激には長い反応が要求される場合)、正しく反応することが困難になり、刺激に引っ張られた反応をしてしまう。③言語による行動の調整の困難。④計画を立て、それに従って行動することの困難。⑤間違いや不合理を発見し、修正することの困難。⑥行動を抑制したり、別の行動に移ったりすることの困難。⑦ブローカ失語話し言葉の理解は問題ないが、話し方が非流暢になる)。⑧出来事の時間的順序の記憶の困難(出来事自体の記憶は問題ないが、その時間的な順序の記憶が失われる)。⑨遂行機能(目標の設定、計画の立案、目標に向かって計画を実行すること、効果的に行動を遂行すること)の困難。

 次に、頭頂連合野が損傷された場合に生じる障害についてであるが、損傷を受けた部位(両側、左半球、右半球)により、次のような障害が生じる。①両側性:触覚性失認(眼を閉じて触覚で物を認知しようとしても物の認知ができない)。構成失行(障害の性質や程度が異なり、右半球損傷の方が重篤)。身体部位失認(自分の身体の部分を呼称したり、指し示したりすることができない)。②左半球性:左右失認(左右の区別ができなくなる)。手指失認(指の認知、弁別、呼称、指示の障害)。観念運動性失行(自発的な行動はできるのに、人から命じられてする行動ができなかったり、真似やジェスチャーができなかったりする)。観念性失行(部分的な動作はできるが、一連のまとまりのある動作ができない)。③右半球性:左側空間無視(視野の左側を無視する)。着衣失行(衣服の着脱に際して現れる)。半側身体失認(まるで自分の左半身が自分のものではないような態度をとる)。病態失認(病気の自覚がない)。

 次に、側頭連合野が損傷された場合に生じる障害についてであるが、この場合には次のような障害が生じる。①ウェルニッケ失語(話し方は流暢で多弁であるが、錯誤や新造語が多く、話の内容が不明確)。②環境音失認(身の回りの音の認知の障害)。③失音楽(音は聞こえるが、メロディーやテンポ、リズムが障害される)。④記憶障害(最近の出来事の記銘や想起の障害)。⑤漢字の失読。

 最後に、後頭連合野が損傷された場合に生じる障害についてであるが、この場合には、次のような障害が生じる。①相貌失認(家族や友人の顔を識別できない)。②色彩失認(身近な物の色が識別できない)。③街並失認(自宅付近の風景が分からない)。④バリント症候群(一つの対象への視線の固着、眼前のものを把握できない、視線が向けられているもの以外へ注意が及ばない)。⑤かなの失読。

参考・引用文献

黒田佳孝・小松秀茂編 『発達障害児の病理と心理』 培風館、2015年、p.31‐36

捕捉

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