PB2110_初等国語科教育法(書写を含む。)_2単位目


 
 2008年に告示された学習指導要領の目指す理念と今後の国語科教育の目標と内容と指導についてまとめる。

 はじめに、学習指導要領の目指す理念についてであるが、1996年の中央教育審議会の答申で示された「生きる力」の育成を踏まえ、学習指導要領では、次の3つの学力が求められている(長谷川、2015)。①基礎的、基本的な知識・技能の習得。②知識・技能を活用して課題を解決するのに必要な思考力・表現力等。③学習意欲。これらは、知識基盤社会を生き抜くために必要とされる学力であり、これらの育成を意図して、従来から存在していた国語科の「B書くこと」「C読むこと」の領域に、「自分の考えをつくること」や「書いたり読んだりしたことを交流する事項」や「本や文章を選択すること」や「教科書以外の資料の活用」が指導内容として追加された。これは、OECDによって知識基盤社会に必須とされる主要能力を考慮した結果であり、学習指導要領では、OECDに倣って、思考力と表現力と基礎的・基本的な知識の応用力の育成に重点が置かれているといえる。

 次に、これからの国語科教育の目標について詳述する。学習指導要領の第2章第1節国語の第1で記述されているように、国語科教育の目標は、「国語を適切に表現し正確に理解する能力を育成し、伝え合う力を高めるとともに、思考力や想像力及び言語感覚を養い、国語に対する関心を深め国語を尊重する態度を育てる」ことである(長谷川、2015)。前節で言及した学習指導要領で求められる3つの学力を用いて言い換えるならば、新しい国語科教育は「言語活動を通して、自ら学び、国語の知識や技能を習得し、思考力、想像力、表現力を伸ばし、読書等を通して自ら探求していく意欲や態度を養うこと」を目指すもの、となる(長谷川、2015)。ここで理想とされる児童の態度は、知識を吸収するのみという受け身の態度ではなく、「習得した知識・技能を活用して課題解決に必要な思考力・表現力等を養い、自ら学ぶ意欲や態度」である(長谷川、2015)。新しい国語科教育では、自ら課題を見つけ、授業で吸収した基礎的・基本的な知識を活用し、その課題を解決できる能力の育成が目指されているといえる。

 では、新しい国語科教育の内容はどのようなものか。これは学習指導要領第一章総則の第4「指導計画の作成等に当たって配慮すべき事項」2における次の3項目から読み取れる(長谷川、2015)。①各教科等の指導に当たっては、児童の思考力、判断力、表現力等をはぐくむ観点から、基礎的・基本的な知識及び技能の活用を図る学習活動を重視するとともに、言語に対する関心や理解を深め、言語に関する能力の育成を図る上で必要な言語環境を整え、児童の言語活動を充実すること。②各教科等の指導に当たっては、体験的な学習や基礎的・基本的な知識及び技能を活用した問題解決的な学習を重視するとともに、児童の興味・関心を生かし、自主的、自発的な学習が促されるよう工夫すること。③各教科等の指導に当たっては、児童が学習の見通しを立てたり学習したことを振り返ったりする活動を計画的に取り入れるよう工夫すること。新しい国語科教育を担当する教員は、上記内容を備えた指導を行う必要がある。

 国語科教育の指導法についてであるが、マニュアルはなく、指導法は教員の手に委ねられているものの、方向性は定まっている。すなわち、今後の国語科教育で求められる指導法は、系統性や論理性を重視し、教材の内容を児童に順序立てて伝えるという従来の指導法に、個性と経験と能力の異なる児童一人一人から主体性を引き出すような指導法を加えたものである。

 指導には、①目標の設定、②指導計画の作成、③授業の実施、④課題の把握と解決への展望を持つ、というマネジメントサイクルの心掛けが必須である。なぜなら教員は、「自ら考え、創意工夫し、言葉を深く掘り下げ、己を語る」ことにより、指導技量を高めていかなければならないからである(長谷川、2015)。児童の個性や経験や能力に沿った授業の構築を教員達が目指した結果、授業は教員ごとに異なる内容のものになるであろう。しかし、たとえ指導法が教員ごとに異なるとしても、「子どもの主体的な学び合いがあり、基礎・基本を獲得し、国語力を伸ばしている子どもの姿」の見える指導と授業を行うことができていれば問題はない(長谷川、2015)。

 なお、単位時間の学習活動を行う際には、「課題把握・課題解決に向けた言語活動・振り返り」の区分の意識が有用である。課題把握にて児童の興味を刺激し、かつ、授業で養う能力を明確にする。言語活動では、活動内容を分かりやすく説明し、児童が楽しめるようにする。振り返りでは、習得した能力の確認を行うことで、課題の自覚が促され、主体性が育まれる。

 教員にとって、事前に教材研究を行うことは重要な営みであるが、その内容を伝えることだけでなく、児童が主体的に学ぶことを促す工夫が必要不可欠である。そのためにも教員は、「子どもと同じ時間と空間軸に立ち、自らを語ったり範を示したり、子どもと共に学び学習活動を支援」しなければならない(長谷川、2015)。

引用文献

長谷川清之著 『初等国語科教育法(書写を含む)』 明星大学出版部、2015年、p.56、p.57、p.62、p.70、p.76

捕捉

学習指導要領が平成29年に改訂されたため、上記レポートの内容は古くなってしまいました。

しかし、指定の教科書に基づいて要約すると、似たような構成になると思います。

要約の仕方については、下記の記事が参考になります。

キーワードは、「国語科教育の目標(理念)」「国語科教育の内容」「国語科教育の指導」の3つですね。