WE1020_法学2(日本国憲法)_1単位目



1.現代憲法の特色

 17~18世紀にかけて欧米諸国や日本において近代憲法の原則が成立した。各国の状況はそれぞれ異なるが、各国の近代憲法の原則には、次の3つの共通点がある。

①国民の政治参加の原則

 この原則は、国民を単に統治権の対象とみなすのではなく、直接または間接に国家意思の形成に参与し、国政に参加する存在とみなすものであり、近代憲法の成立に欠かせない基本的な条件である。この原則は多くの場合、国民主権主義の原則と呼ばれ、国家の最高意思や国政の在り方を最終的に決定する権力が一般国民に存するという意味で主権在民とも呼称される。

基本的人権保障の原則

 この原則は、国家権力が侵せない個人の権利であり、近代自然法思想に基づいて、人間を生まれながらにして自由・平等なものとみなす考え方である。基本的人権の種類には、国家権力からの自由を意味する自由権の他にも、信教の自由、思想の自由、良心の自由、言論の自由、人身の自由、集会・結社の自由、財産不可侵等がある。

③権力分立の原則

 この原則は三権分立とも呼ばれ、国家権力を立法権と行政権と司法権に分けて、各権力間の均衡と抑制を実現させて権力の集中と濫用を防ぎ、国民の権利と自由を守るというものである。

 以上、近代憲法の原則を概観してきたが、近代憲法は19世紀後半以降の資本主義経済における社会状況の変化に対応し、現代憲法へと修正されることとなった。以下の3つは、この現代憲法の特色である。

社会権の重視

 従来の自由権に加えて、国民の実質的な自由・平等を実現するために、社会権生存権的基本権)が重視される。また、社会権の実現に向けて、経済的自由権に対する公共の福祉の制約の意義も大きくなる。

②行政権の強化もしくは行政権への権力集中

 社会国家または福祉国家において、社会権を実現するためには、国家の積極的機能が要求される。これはすなわち、行政権の機能が強化されることと同義である。

③国民の自己決定の強調

 現代憲法においては、国民の政治参加が高度に実現するため、国政は国民自身の政治となり、国民の自己決定に基づくという考えが強調されるようになる。

 以上が現代憲法の特色である。18~19世紀に成立した近代憲法は、19世紀後半以降、資本主義の高度化に伴う社会変化によって生じる問題を解決するために、国家機能を積極化し、現代憲法として変化していったのである。

2.国民の権利と義務

 基本的人権は、人が平和で幸福な人間らしい生活を送るために必要な権利である。基本的人権は、全ての国民が国家に対して人間らしい生活を積極的に要求できることを保障する。この点に基本的人権の意義があるといえる。基本的人権の種類は以下の3つである。

自由権

 奴隷的拘束および苦役からの自由、思想および良心の自由、信教の自由、集会、結社、表現の自由、通信の秘密、居住・移転および職業選択の自由、外国移住および国籍離脱の自由、学問の自由、人身の自由および居住の不可侵、抑留・拘禁そのほか刑事裁判に関する人権保障のための諸原則が存在する。財産権の不可侵の規定は、私有財産が不当に侵害されない自由を定めているので、自由権を保障する規定といえる。平等権も、不平等な差別を受けない自由と解するならば、自由権に含められる。

社会権

 健康で文化的な最低限度の生活を営む権利、等しく教育を受ける権利、勤労の権利、勤労者の団結する権利および団体交渉その他の団体行動をする権利が、社会権に属する。

③国民の能動的関係における権利

 積極的公権として、請願権、裁判所の裁判を受ける権利がある。参政権として、公務員を選定し、および罷免する権利がある。成年者による普通選挙を保障した規定は、参政権を保障する規定といえる。投票の秘密の保障の規定は、参政権の自由な行使を担保する。

 以上で基本的人権の種類を概観してきたが、これらの権利は一定の義務と対になっている。国民に課せられる義務は以下の3つである。

①教育の義務

 保護者が子女に普通教育を受けさせる義務であり、教育を受ける権利を補完するものである。

②勤労の義務

 私有財産制を前提とした資本主義社会では、具体的な勤労の義務を課すことはできないため、この義務には法的強制力はなく、倫理的な意味合いのものに留まる。

納税の義務

 国家財政は国民の租税負担に依存することに基づいた義務であり、裁判所が合憲性を審査できないとされる。

引用文献

北岡勲・児玉誠著 『法学』 明星大学、2012年、p.149‐p.155、p.179‐p.180、p.182‐p.183

捕捉

要約の仕方については、下記の記事が参考になります。

キーワードは、「憲法」「現代憲法」「国民の権利」「国民の義務」ですね。

指定の教科書から必要な箇所だけ( p.149‐p.155、p.179‐p.180、p.182‐p.183 )を取り出して(要約して)書いています。