PA1040_教職入門_1単位目



1.教員養成の歴史について

 我が国における現行の教育職員免許法は、敗戦後の昭和24年に、GHQ/SCAPの管理下で制定された。これにより、教員養成の開放性(開放制)原則と教職の専門性原則が確立することとなった。ここに至るまでの、我が国の教員養成は、その是非はさておき、富国強兵を目的として行われてきた。このことを、以下より、我が国における教員養成の歴史を概観することによって確認する。

 明治5年に制定された学制は、我が国初の近代公教育制度であるが、これは、国力増強を意図して、欧米先進諸国の学術や文化を積極的に摂取するために制定されたものであった。同年、小学校での教授方法の伝授を目的として、東京に師範学校が設置される。その後、師範学校は日本各地に設置され、教員養成の体制が整えられていった。師範学校の整備と設置を進めると同時に、文部省は小学校教員心得や小学校教則綱領を定め、教員の資質や能力、各教科の目的や内容の規定に注力した。

 明治12年には、学制の不足を是正するために、教育令が公布され、明治13年にはその改正が行われた。改正された教育令によって、師範学校の各府県における設置が義務付けられた。明治14年には、師範学校教則大綱が制定され、小学校初等科と中等科と高等科それぞれの教員を養成する師範学校の段階(初等師範学校、中等師範学校高等師範学校)が定められた。

 その後、初代文部大臣森有礼の下、明治19年に、小学校令、中学校令、帝国大学令師範学校令、諸学校通則が公布された。このうちの師範学校令により、師範教育の体系化が図られた。この時点で明確に、「秩序や権威に従順で、信愛のある人間関係を心掛け、生徒に威厳を持って接する教師」が理想の教師とされた。

 明治23年には、国の教育方針を示すために、教育ニ関スル勅語教育勅語)が発表された。明治30年には師範学校令が廃止され、師範教育令が新たに制定された。また、明治33年の教員免許令と教員検定ニ関スル規定により、教員の免許状を授与する仕組みが整えられた。さらに、明治40年には、師範学校に関する諸規則を総合した師範学校規定が制定された。

 大正に入ると、教育の諸方策の検討を目的として臨時教育会議が内閣に設けられた。これは戦争(第一次世界大戦)を踏まえてのことであった。同様に、昭和16年国民学校令が公布され、小学校が国民学校に改められ、教師は皇国民の練成を担う者とされた。昭和18年には、師範教育令が改正され、師範学校の官立への移管と、教科書の国定制が決定された。これらも戦争(第二次世界大戦)を意識してのことであった。

 そして敗戦後、我が国では、GHQ/SCAPの管理下で、教育職員免許法が制定されることとなる。

 以上のことから、我が国の教員養成の歴史には、国家の増強と戦争での勝利が明確な目的として存在していたといえる。価値判断はさておき、教員養成等の教育実践は、国家の意思の影響を受けるということである。

2.教職の専門性について

 教師という仕事に求められる専門性は枚挙に暇がない。教科指導、生徒指導、進路指導、カウンセリング、組織内での同僚達との協働、保護者対応、学校内外における危機管理等、教師が力量を求められる分野は多岐にわたる。

 上記から、「知識・技術を対象(クライエント)との関わりのなかで、適切に変化・創造させる力量」を、教師の専門性として見出すことができる。教師は、何らかの「「完成」された系統的知識・技術を習得すれば専門性が担保される」わけではなく、「複雑な要因から成り、不確実で不安定な予期せぬ事態の連続過程」で、「行為のなかの省察」に基づいて、「多種多様な状況」に対処する職業といえる。

 例えば、上述したような教職の専門性の特徴は、教師が学級崩壊やいじめや震災・犯罪等に対応することを踏まえると、明白に理解できるであろう。教師が、医師や弁護士等の他の職業と大きく異なる点は、「複雑で不確実な事態に、価値葛藤をかかえながら思考しつつ対処する」点である。もちろん、医師や弁護士が、業務において「複雑で不確実な事態」に遭遇することもあるであろうが、彼等にとって、「彼等を無視して騒ぎ続ける複数の顧客達に介入すること」や「特定の顧客に対する他の顧客達による集団的な嫌がらせを阻止すること」や「震災や犯罪発生時に顧客達を安全な場所に誘導すること」等は、極めて稀な任務であると考えられる。

 以上のことから、「試行錯誤しながら対応すべき不確実な事柄の多い教師」の職業的専門性を短く表現した言葉としては、「省察的実践家」が最適といえるだろう。「省察的実践家」として教師は、「たんに多くの知識や技術をもっているのではなく、知識の習得や活用、探求活動を通した人間発達について実践し、その過程や結果を省察し、その上に新たな教育活動を積み上げること」をその生業としているのである。

参考・引用文献

青木秀雄編 『教職入門 専門性の探求・実践力の練成』 明星大学出版部、2015年、p.29‐35、p.230‐234

捕捉

このレポートは要約型レポートです。

「論述せよ」と書かれていますが、要約以外の何物でもありません。

本当に、典型的な要約物件です。

要約型レポートの書き方については、下記が大いに参考になります。

要約型レポートは、指定の教科書を短くまとめただけの文章なのですが、久々に読むと、面白いです。

課題2に登場する「省察的実践家」という言い回しは、最高ですね。

こんなこと教科書に書いてあったっけ? 

なかなか面白いじゃないの、と興奮しました。

自分で書いたものを自分で面白がれるというのは、幸せなことです。