PB2160_初等教育方法学_1単位目



1.系統学習と問題解決学習の長所・短所の比較

 はじめに、系統学習の内容と長所・短所について述べる。系統学習とは、単純な事柄から複雑な事柄へと知識を配列し、科学的な知識を体系として学ばせる考えに基づいた学習である(青木、2014)。そのため、学習は教材や教師を中心としたものとなる。

 系統学習の長所は、①短時間に多人数の学習者に共通の学力や知識を育成できる点と、②教科書に知識が系統的に配列されているため、授業で使用する教材の教師による選択の負担が軽減できる点と、③学習者の理解度の測定が筆記や口頭での試験により容易にできる点である。

 一方、系統学習の短所は、①知識の詰め込み学習が一定の速度で行われるため、この速度に適応できない落ちこぼれが生じ、学習に対する興味が失われ、不登校等の問題を引き起こしてしまう点と、②試験によって評価されるものが授業で注入された知識の量だけになり、その評価に基づいて学習者が序列化され、学歴偏重主義による競争と画一的思考の助長と自己肯定感の欠如を生じさせる点である。

 次に、問題解決学習の内容と長所・短所について述べる。問題解決学習とは、学習者の生活経験を重視し、彼等の興味・関心・必要性を中心にして組み立てられた学習である(青木、2014)。つまり、学習者の生活に根差した体験や問題意識を学習の出発点に位置付け、その問題解決に必要な知識を吸収させるという教育方法である。

 問題解決学習の長所は、①自分にとって切実な問題を解決するための試行錯誤の過程で、異論に対する寛容さと広い視野が身に付き、社会を変革する力を育成することができる点と、②学習者の個性や発達段階に合わせて学習が進められるので、落ちこぼれが生じない点である。

 一方、問題解決学習の短所は、①基礎学力の低下を招く点と、②教師の授業計画を立てる負担が増す点と、③評価が難しい点と、④問題関心のない学習者に対応できない点である。

 以上、系統学習と問題解決学習について概観してきた。両者とも一長一短があるものの、前者よりも後者のほうが学習者にとって無害だといえる。なぜなら、成績不振を苦にした自殺や不登校の頻度は、前者でよりも後者でのほうが少ないと考えられるからである。最低限必要な基礎学力を系統学習で培いつつ、学習者の生きる力をそがずに育むような、問題解決学習を加味した授業を教師は心掛ける必要があると考える。

2.情報活用能力と絶対評価と生きる力について

 以下より、情報活用能力と絶対評価と生きる力について述べる。

 はじめに、情報活用能力について述べる。これは、情報化社会を生きる資質を意味し、情報機器を駆使して情報を収集し、取捨選択して活用・発信できる能力を指す(小川・菱山、2013)。変化の激しい現代社会において、無尽蔵に溢れる情報の海から、自分が直面している問題の解決に役立つ情報を探し出し、それを用いて問題を解決していくこの能力は、生きるために必要不可欠な能力である。今や、どのような職業においても、インターネットを用いた情報収集は日常的に行われており、時には日本語だけでなく、英語の情報を吟味しなければならない場合もある。今後は、情報活用能力と語学力の両方が益々重視される時代になるであろう。

 次に、絶対評価について述べる。絶対評価とは、目標となる基準を設定し、これへの到達度を評価することである(小川・菱山、2013)。この評価方法には、学習者の学力レベルが把握できることで、学習に対する学習者の動機付けや目標の明確化が可能になり、教師にとっても今後の指導の方針が立てやすいという長所がある。一方、学習者の集団内での成績の位置付けが分からないことや、評価が教師の主観で行われやすく、評価の客観性や信頼性が確保できないことが短所として存在する。特に前者の短所は、例えば、高校入試等の受験を控えた学習者にとっては致命的である。なぜなら、特定の高校を受験する集団内における自分自身の成績の順位・位置付けが不明である場合、受験すべき高校の選択に支障が出るからである。したがって、教師は、評価を行う場合には、絶対評価と、集団内での相対的な位置が分かる相対評価を状況によって使い分けるべきである。

 最後に、生きる力について述べる。これは、「自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力」を指す(小川・菱山、2013)。この能力は、問題解決学習によって育まれるものである。しかし、問題解決学習には、基礎学力の低下を招く等の短所が存在するため、系統学習と問題解決学習をバランスよく組み合わせた教育方法の開発が現在強く求められている。この点は、現場の教師の力量に負う点が大きく、教師一人一人が努力して開拓していくべきフロンティアといえる。

参考・引用文献
青木秀雄編 『現代初等教育課程入門』 明星大学出版部、2014年、p.105、p.109小川哲生・菱山覚一郎著 『初等教育方法学』 明星大学出版部、2013年、p.43、p.70、p.145

捕捉

2つの課題それぞれに関するキーワードの詳細を、指定の教科書から探して、淡々と要約すればOKです。

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要約の仕方については、下記の記事が参考になります。