PB2160_初等教育方法学_2単位目



1.情報通信機器やデジタル教材を用いた授業

 情報通信機器やデジタル教材を用いた授業を行う際には、次のことが配慮されるべきである。

 パソコン等の情報通信機器やデジタル機器を用いた授業の目的は、あくまでも、「学習者の興味・関心に配慮し、自ら学び、自ら考える態度を育成し、基礎的基本的な知識と技能の習得」である(小川・菱山、2013)。

 したがって、授業の内容は、この目的に最も適う「学習者自身や集団の問題意識を中心に調査研究を進める総合的な学習の時間」で行われるような、「パソコンによる検索と情報収集」を中心にしたものがふさわしいといえる(小川・菱山、2013)。

 また、教育方法については、教材の内容次第で、系統学習や問題解決学習や発見学習を使い分ける必要があるが、「パソコンによる検索と情報収集」を中心とした授業を行うことを考慮するならば、問題解決学習を標準の教育方法としておくと良いだろう。

 なお、授業形態は、状況に応じて、一斉学習や小集団学習や個別学習が使い分けされるものであるが、「パソコンによる検索と情報収集」を中心とした授業を行うことを考慮すると、原則として小集団学習が望ましい。小集団学習であれば、収集した情報に基づく積極的な討議が行われるだろう。ただし、小集団を形成する際には、集団内のメンバーの能力が均一になるように調整する必要がある。なぜなら、学習者の能力に差がありすぎる場合、討議が成り立たず、積極性や人格形成等の成長が生じ難くなるからである。

 授業の具体的な内容についてであるが、私は授業で「何故いじめはいけないのか」や「議論はどのように行えばよいか」等の、学習者の日常生活における出来事と密接に関係した課題を提示し、学習者にその答えと根拠の検索をパソコンで行わせ、小集団ごとに発表をしてもらおうと考える。学習指導案では、学習者が到達するであろう答えを事前に複数想定しておき、それぞれの長所・短所を考察・記載して、小集団内での討議や発表時に、補足や評価が適宜できるように準備しておく。

 以上が、情報通信機器やデジタル教材を用いた授業を行う際に配慮すべきことであると私は考える。

2. 我が国の教育方法の歴史と今後の課題

 以下より、我が国の教育方法の歴史と今後の課題を記述する。

 教育方法の必要性が我が国で初めて意識されたのは江戸時代であり、当時の教育機関として寺子屋を挙げることができる。これは庶民の要望で自然に発生した教育機関であり、文字の学習である「手習い」を中心として、読み・書き・そろばん・礼儀作法・裁縫が教えられていた。「手習い」は師匠が示した手本を学習者が真似し、それを師匠が添削するという教育方法であり、学習者の個性や能力や関心に応じた指導が行われていたという。

 ところが、明治時代になると、臣民の育成を急ぐ政府により学校の整備が進められ、教科書を用いた一斉授業が開始された。ここで採用された教育方法はヘルバルト学派の影響を受けた系統学習であった。日本では明治から知識の詰め込み教育が開始されたといえる。

 大正期に入ると、画一的で注入主義的な教育が見直され、一部の学校で、子どもの個性や学力に沿った教育方法が実践された。この動きは系統学習から問題解決学習への揺り戻しといえる。

 次に、昭和初期の教育方法についてであるが、この時期の教育は、国家主義の統制を受けた規制の強い画一的な注入主義的なものとなった。しかし、同じ頃、日本独自の生活綴方を生かした問題解決学習的な教育方法と、郷土に関する教育方法が誕生する。後者は、郷土独自の認識や郷土愛の育成を目指す国主体のものと、農村再生・郷土再建を目指す民間主体のものの二種類に分類できるが、戦時体制の強化により、民間主体の郷土に関する教育方法は、愛国心を育成する教材としての国民科に「郷土の観察」という形で組み込まれていった。

 戦後の日本では、米国の影響下で自由主義の観点から、詰め込み教育から学習者の生活経験に沿った教育へと教育方法が刷新された。しかし、その後の高度経済成長期以降は、基礎的な知識や技術を備えた労働者の養成や、科学技術の振興が求められ、系統学習が主流となる。結果、経済は発展したものの、いじめや不登校等の問題が発生した。変化の激しい情報化社会の到来をも踏まえて、この頃から系統学習の限界が認識されるようになった。

 そして現在、我が国では「自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する能力や資質」(小川・菱山、2013)の育成が教育の目標となっている。「生きる力」と呼ばれるこれらの育成には、系統学習と問題解決学習の両方を含んだ教育方法が必要とされている。今後の課題は、学習者の生活経験・問題関心に最適な知識の体系を教師が察知し、系統学習を適宜取り入れて、学習者の「生きる力」を育む具体的な教育方法を確立させることである。

参考・引用文献

小川哲生・菱山覚一郎著 『初等教育方法学』 明星大学出版部、2013年、p.43、p.127

捕捉

課題1では、「考察しなさい」とあるので、小論文型レポートを書く必要があります。

小論文型レポートの書き方については、下記の記事で少しだけ触れています。

課題2は、「まとめた上で、今後の課題を整理せよ」とあるので、要約型のレポートです。

要約の仕方については、下記の記事が参考になります。

上記の記事では、課題に含まれているキーワードの定義を、レポート内で記述することを強調しました。

しかし、「情報通信機器」や「デジタル教材」や「教育方法」などのキーワードは、レポート内で定義しなくても大丈夫です。

なぜなら、これらは説明が必要な専門用語ではないからです。

専門用語かどうか判断しにくい場合は、「指定の教科書で定義されているキーワードであればレポートに定義を入れよう」とシンプルに考えておけばOKです。