PB3060_初等体育科教育法_1単位目



 「心と体の一体化」と、生涯スポーツにつながる能力育成を重視し、2008年に改訂された学習指導要領では、技能的目標、体力的目標、社会的目標の達成を意図して、技能(体力を含む)、態度(規範的態度及び愛好的態度)、思考・判断の教科内容が具体的に記述され、目標と内容との一貫性が明瞭になった。上記の技能、態度、思考・判断に関し、これらの詳細と、生きる力との関連について、以下より記述する。

 まず、技能についてであるが、運動技術と運動技能の違いを理解することが大切である。前者は、「運動課題に対して合理的で無駄のない、誰もが共有できる動きのような「運動のしかた」」を指す。後者は、「練習やトレーニングを行うことでもたらされる、技術が身についた状態、あるいはその技術を用いて運動を遂行することのできる個人の能力」を指す。つまり、運動技術が身についた個人が持つものが運動技能ということである。

 運動技術を身につけるために必要なものとして、体力が挙げられる。体力には、調整力、筋力、持久力があり、一般に左記の順番で発達する。小学校3年生から5年生の頃に調整力が発達し、筋力や持久力は小学校中学年・高学年の頃から発達していく。このうち、調整力は、文部科学省の定義によると、「体の動きを総合的にコントロールし、身体の各部分や用具を巧みに動かして運動する」能力であるため、運動に不可欠の能力といえる。そのため、小学校体育においては、筋力や持久力が未発達な小学校低・中学年の段階では、大きな筋力や持久力が必要な運動ではなく、可能な限り様々な運動を児童に経験させ、調整力を十分に発達させることが肝要である。また、運動技術を児童に身につけさせる際には、「学習者が理解できる適切な段階的課題が設定され、しかも恐怖心を抱かせない条件が設定」されることが必要である。

 次に、態度についてであるが、これは、文部科学省によると、「学習内容や学習対象に関心を持ち、何らかのことに価値や意義を見いだす態度や何かを遵守したり責任を持ったりする態度」を指す。具体例として、次の5つが挙げられる。①「運動やスポーツ自体」の価値に対する態度。②「チャレンジすること」の価値に対する態度。③「運動やスポーツを継続すること」の価値に対する態度。④「フェアプレー」に関する態度。⑤「協力・責任」に関する態度。

 上記の詳細は、以下の通りである。①運動やスポーツを「する」ことや「見る」「支える」ことへの関心があること。②次の課題にチャレンジしようとする意志があること。③生涯にわたって運動やスポーツに取り組もうとする意志があること。④結果にかかわらず相手を認めるなど、共に運動やスポーツを行う仲間を尊重し合おうとする意志があること。⑤お互いの合意に基づいて仲間と助け合う、自分の責任を果たすなど、仲間と協力しようとする意志があること。上記のような態度を、体育科の授業を通して、児童に育成することが求められている。

 次に、思考・判断について詳述する。文部科学省は、思考・判断を、「考える」「工夫する」という言葉と同様の意味で用いている。このことは、技能を習得する際には、「考える」あるいは「工夫する」ことが推奨されると理解して良い。

 例えば、どのような運動技術を練習するにしても、目を閉じた状態で、自分の身体の様々な部位を、自分の意図した通りに正確に動かすという練習は非常に有用である。実際の競技の最中に、自らの全ての身体部位を目で確認しながら動かすことは不可能である。そのため、目を閉じた状態でも、意図した通りに身体の各部位を正確に動かすことができるように、あらかじめ訓練しておくのである。このような基礎的な練習は、どのような運動技術の習得にも役立つと考えられる。そして、このような思考・判断こそ、体育科の授業において、児童に学習して欲しいものと考えられる。

 最後に、学習指導要領に示される生きる力と、上述してきた技能や態度や思考・判断との関係を記述する。

 生きる力とは、「知・徳・体のバランスのとれた力」を指す。詳しく言い換えるならば、「確かな学力、豊かな人間性、健康・体力の3つの要素からなる力」となる。小学校体育科の運動領域における技能や態度や思考・判断のうち、態度は、生きる力における「徳(豊かな人間性)」と対応し、技能及び思考・判断は、生きる力における「知(確かな学力)」と対応するといえるだろう。また、技能や態度や思考・判断が、十分に習得・学習・育成された暁に、生きる力における「体(健康・体力)」が完成するともいえるだろう。なぜなら、体育の授業において、適切に練習を積み重ねることで児童が運動好きになれば、「体(健康・体力)」という目標が自ずと達成されると考えられるからである。教員は、上記の事柄を念頭に置きつつ、体育科の授業に従事し、生きる力の育成につながる形で、児童に技能と態度と思考・判断を育む必要があるといえる。

参考・引用文献

高橋健夫ほか編著 『新版 体育科教育学入門』 大修館書店、2015年、p.27、p.33

捕捉

このレポートは、「論述せよ」と課題に書かれていますが、要約型レポートです。

指定の教科書から、「技能」「態度」「思考・判断」「生きる力との関係」などのキーワードについて詳しく書かれた箇所を探して、これらを要約すればOKです。

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