PB1020_社会_2単位目



1.中学年の社会科の内容整理と前後の学年との関連

 平成20年版の小学校学習指導要領では、下記の3つが、中学年の社会科の目標として規定されている。

①地域の産業や消費生活の様子、人々の健康な生活や良好な生活環境及び安全を守るための諸活動について理解できるようにし、地域社会の一員としての自覚をもつようにする。

②地域の地理的環境、人々の生活の変化や地域の発展に尽くした先人の働きについて理解できるようにし、地域社会に対する誇りと愛情を育てるようにする。

③地域における社会的事象を観察、調査するとともに、地図や各種の具体的資料を効果的に活用し、地域社会の社会的事象の特色や相互の関連などについて考える力、調べたことや考えたことを表現する力を育てるようにする。

 また、小学校学習指導要領では、中学年の社会科において児童が観察・調査・分析すべきものとして、次の6つが示されている。①身近な地域や市の地形、土地利用、公共施設などの様子。②地域の生産や販売に携わっている人々の働き。③地域の人々の健康や良好な生活環境を守るための諸活動。④地域の人々の安全を守るための諸活動。⑤地域の古い道具、文化財や年中行事、地域の発展に尽くした先人の具体的事例。⑥県の地形や産業、県内の特色ある地域。

 以上から、中学年の社会科では地域学習が重視されていることが分かる。これは、公民的資質の基礎を養うためといえる。公民的資質とは、社会の仕組みを認識し、社会に対して積極的に働きかける資質や能力、社会の中で他人と共生するために必要な道徳感覚を指す言葉である。地域の仕組みを理解し、地域に愛着を感じ、地域の改善のために行動するという公民的資質を児童に育むために、地域学習が中学年から重視されているのである。

 低学年においても、生活科の授業で、「地域社会での体験や人との関わり」は重視されているが、中学年ではその規模と実体験の度合いが発展させられており、中学年での社会科は、第5学年における国土や産業の学習につながる基礎段階として存在しているといえる。

 以上より、中学年の社会科で展開される地域学習の意義は、公民的資質の育成であり、これにより児童は、「地域の一員としての自覚と責任」を持つようになると考えられる。

2.学習指導要領の変遷と社会科の歴史

 学習指導要領の内容は、社会状況から影響を受け、経験主義と系統主義の間を揺れ動くものである。社会科の内容についても同様のことがあてはまる。以下より、各時期における社会科の内容の変遷を、経験主義と系統主義の両極を踏まえて記述する。

 昭和22年に、「社会生活についての良識と性格とを養うこと」を目的として社会科が新設された。その内容は、社会生活の理解を目標とし、児童による調査や討議を重視する、「為すことによって学ぶ」ことを原則とした経験主義的なものであった。例えば、「郵便屋さんごっこ」を通して、社会を疑似体験する試み等が授業で行われた。

 その後、「従来の伝統の軽視」や「道徳性の希薄化」や「学力の低下」や「相互依存的な社会体制順応主義」や「歴史的視点の欠如」等の批判がなされ、昭和26年に学習指導要領が改訂されたが、社会科は経験主義に立脚したものとして存続した。

 しかし、昭和33年の学習指導要領の改訂により、社会科は系統主義に立脚したものに変化する。これは、日米安全保障条約の調印や朝鮮戦争警察予備隊の設立や米ソ冷戦等の国際情勢を考慮した吉田茂首相による「日本史や地理を系統的に教えない経験重視の社会科では「愛国心のない軍隊」ができる」という発言を受けたものといえる。こうして、系統性が重視された地理的及び歴史的学習が社会科においてなされるようになる。

 経済的に発展し、国民生活が豊かになるなか、昭和43年に学習指導要領が改訂され、公民的資質の育成が社会科の目標として明確にされた。そして、昭和52年には、詰め込み学習の弊害を反省する形で、ゆとりを重視した学習指導要領の改訂が行われる。授業時間が一割削減され、内容も三割削減された。社会科もこの流れに沿い、系統主義を維持しつつも、ゆとりを考慮した内容となる。

 平成元年には、国際化・情報化社会の到来を見越し、社会科の内容は、外国との関わりや環境問題や情報化を意識し、かつ、学習時の活動や体験に重きが置かれるものに変化した。ここで、社会科の内容が系統主義から経験主義へ回帰したといえる。

 平成10年には、変化の激しい社会を生き抜くために必要な「生きる力」の育成を目標に、学習指導要領が改訂された。社会科は「社会生活を理解し、社会で生きる態度と能力を育成する」科目として位置付けられた。平成20年の学習指導要領改訂でも、この路線は維持されている。社会科は公民的資質の育成を意図した、系統主義よりも経験主義に依拠した科目として存在している。

参考・引用文献

菱山覚一郎著 『第2版 社会科の理論と課題』 明星大学出版部、2015年、p.17‐53

捕捉

このレポートは要約型レポートです。

課題1に、「考察しなさい」と書かれているので、自分の考えをガッツリ述べる小論文レポートが求められているのかな、と思うかもしれません。

しかし結局は、「中学年の社会科の内容」と「前後の学年との関連」について、教科書の内容を要約することになるので、要約型レポートと考えてOKです。

要約型レポートの書き方については、下記が参考になります。