PL3050_視覚障害者の心理・生理・病理_1単位目

視覚障害者の視覚、聴覚、触覚について述べよ。
視覚障害者の心理と生活の質(QOL)、バリアフリーについて述べよ。



 視覚障害者の視覚、聴覚、触覚、心理、生活の質(QOL)、バリアフリーについて、以下より述べる。

 はじめに、視覚障害の種類や程度についてであるが、視覚障害は、視力の有無の観点から、「全盲」と「弱視」に大別できる。前者の場合、視力はゼロであり、後者の場合、視力は残っている。

 また、「全盲」は、失明時期が早いか遅いかにより、「早期失明全盲」と「後期失明全盲」に区分される。視覚的経験に関する記憶の有無と失明年齢との関係には個人差があるため、一般化することは難しいものの、視覚的経験の記憶が残らないと考えられる五歳以前の失明を「早期失明全盲」と呼び、視覚的経験の記憶が残る6歳以降の失明を「後期失明全盲」と呼ぶ。

 「弱視」についても、更なる区分が可能であり、残有視力の多少により、「重度弱視」と「軽度弱視」に区別される。

 上記のような視覚障害を持つ方々は、その障害を補うために、聴覚と触覚を活用していることが知られている。 

 例えば、聴覚の活用方法についてであるが、盲人は、「物体との距離を知るために、その物体が音を吸収したり反射したりすることによって生じるわずかな音の強さの変化を、利用している」ことが分かっている。これは、発した超音波の反射音を聴いて、障害物の有無を判断するコウモリと同様の行動であり、「歩いているときの反射音の高さの違い」を盲人は利用しているのである。

 次に、触覚の活用方法についてであるが、盲人は、対象に触れる際に、指を細かく動かすことが知られている。これは、触察時に運動した方が、外部受容感覚(身体の外から得る情報)と自己受容感覚(筋運動感覚、手や関節の位置などの身体の内部から得る情報)を統合しやすい点と、対象物の皮膚との順応を回避し、対象そのものの感覚を常にリフレッシュさせ、知覚情報を何度も得ることができる点の2点において、対象の知覚に役立つことが分かっている。

 上記のような特徴と知覚の方法を持つ視覚障害者の記憶・思考・知能・パーソナリティについてであるが、現時点において、次のことが確認されている。

 まず、記憶についてであるが、視覚的体験の欠如ゆえに、先天盲が単語の記憶処理において正眼者に劣るわけではないことが実験により明らかになっている。また、対象を心の中で回転させる心的回転の処理についても、先天盲と正眼者の間に差はないことが分かっている。さらに、空間的な認識能力についても、視覚イメージの欠如している先天盲は、正眼者よりも、空間イメージの形成や操作が困難であると考えられてきたものの、このことを否定する実験結果が発表されており、空間的な認識において先天盲が正眼者に劣るとは一概に言えないことが分かっている。

 以上、視覚障害者の記憶や認識能力に関する知見を概観してきたが、知能に関しても、視覚障害者と正眼者の間に差は見られないことが確認されている。例えば、視覚障害児と正眼児にIQの差は見られないことが実験により判明している。

 次に、パーソナリティに関してであるが、視覚障害者が正眼者よりも精神障害の傾向を示すという点については、多くの研究者が同意を示しているものの、研究結果は常に一貫しているわけではない。これは、同じ特性を持つ被験者を集めて、集団比較をすることができないために、結果が一般化できないということである。

 ただし、社会への適応度については、正眼、軽度弱視、重度弱視全盲の順番で不適応の度合が高く、かつ、視覚障害者の不適応を示すパーソナリティ特性の度合は、年齢が高くなるにつれて強くなることが判明している。また、盲児は一般的に、社会性の発達の遅れや、外罰的傾向の強さや、正眼児と比較して遊び時間が少ないことが指摘でき、これらのことに起因した対人関係上の問題が生起する可能性がある。そのため、社会性を育むためにも、視覚障害者は社会の中に入っていき、活発に活動することが望ましいといえる。

 上記の社会参加を促進し、視覚障害者の生活の質(QOL)が、正眼者のそれよりも低くならないようにするためには、「情報バリアフリー」の実現が必要不可欠である。視覚障害者にとっての障害を取り除き、彼等の生活の質(QOL)を維持・向上させるための、「情報バリアフリー」を、社会の至る所で実現させる必要がある。

 「情報バリアフリー」とは、「何らかの障害を持つ人でも支障なく情報通信を利用できるようにすること」を指す。この考えを具現化したものとして、「音声読み上げソフト」の、公共施設での設置が挙げられる。これにより、新聞や雑誌の文字を自力では読み取れない視覚障害者が、自力でこれらを読むことが可能になる。

 「情報バリアフリー」の実現した社会であれば、視覚障害者の社会参加が活発化し、視覚障害に起因した社会性の未発達や心理的な苦悩が低減でき、彼等の生活の質(QOL)を維持・向上させることができると考えられる。

参考・引用文献

佐藤泰正編 『視覚障害心理学』 学芸図書株式会社、2014年、p.9、p.35、p.44、p.49、p.62、p.74、p.77、p.79、p.107、p.109、p.164‐173

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