PL4010_視覚障害者の指導法_1単位目

視覚障害を持つ児童生徒の指導法や教材教具について具体的に述べよ。
視覚障害を持つ児童生徒に対する特別支援教育について述べよ。



 視覚障害を持つ児童生徒の指導法や教材教具、彼等に対する特別支援教育について、以下より述べる。

 視覚障害児童生徒の教科教育において、最も欠かせない教材は、彼等の特性に合わせて作成された教科書であろう。これらのうち、点字で学ぶ児童生徒のために作成される教科書が点字教科書であり、弱視児童生徒のために文字や図版を拡大して見やすくした教科書が拡大教科書である。これらの内容は、小・中・高等学校で使用される教科書の内容と同じであるが、点字教科書は一般の教科書よりも量が多く、拡大教科書は一般の教科書とレイアウトの点で異なっている。

 上記は、全盲弱視の児童生徒の教科教育を可能にするものであるが、以下のような課題を抱えている。①作成に多くの手間と費用がかかる(補足情報の追加、視覚障害者に馴染みのある話題・問題への変更、図・レイアウトの修正などの作業が発生)。②出版されている点字教科書や拡大教科書の原典と異なる教科書を、自分の通う学校が採用している場合、児童生徒はプライベートサービスに頼り、教科書を作成してもらわねばならない。しかし、教科の指導内容と、視覚障害児の学習の特性に精通した、教科書編集に長けた教員は、文部科学省著作教科書として出版される点字教科書の編修で多忙なため、プライベートサービスに対応する余裕がない。③高等学校に在籍する生徒には、就学奨励費が支給されないため、拡大教科書の購入は自己負担となる。

 視覚障害を持つ全ての児童生徒の「教育を受ける権利」を確保するためにも、上記課題の早急の解決が必要である。

 点字教科書や拡大教科書と同じぐらい重要な、視覚障害を持つ児童生徒の教科教育に欠かせない教具がある。模型や触図などの触覚教材や、パソコン、弱視レンズ、顕微鏡カメラで写した像を投影するためのテレビなどがそうである。

 特に、模型や触図は、視覚障害を持つ児童生徒が、「核になる体験」を得るために欠かすことのできない教具である。「核となる体験」とは、外界の事物・事象の理解を可能にする基本的な体験・枠組みである。例えば、視覚障害を持つ児童生徒は、図形や魚の構造などを、これらの基本的な模型や触図を触察することで理解し、これによって形成した「核となる体験」を利用して、他の図形や魚の構造を理解できるようになる。

 また、iPadのようなタブレット型の新商品が実用化されているパソコンも、視覚障害を持つ児童生徒の教科教育に欠かせない教具である。例えば、パソコンを使用することにより、理科においては、電子天秤の音声化による測定精度の向上や、国語においては、辞書を引く作業の負担の軽減や、インターネットの活用による情報収集能力の飛躍的向上が実現できる。児童生徒に、主体的に調べる姿勢や、点字や普通文字の読み書き能力が備わっていなければ、パソコンを使いこなすことはできないものの、主体性と基本的な読み書き能力を備えた児童生徒にとっては、パソコンは教科教育の質と量を格段に高める優れた教具である。

 模型や触図やパソコンの他にも、光の強弱を音の高低で表す器具である感光器や、盲児用の物差し、三角定規、分度器、はかりなども、視覚障害を持つ児童生徒の教科教育に必要な教具である。前者は、太陽の動きの観察を可能にし、後者は視覚に頼らずに対象を測定することを可能にする。さらに、作図を可能にするレーズライター(表面作図器)や、表面にピンを刺したりシールを貼ったりするグラフ盤など、様々な教具が存在する。

 以上、視覚障害を持つ児童生徒に必要不可欠な教科書や教具を概観してきたが、これらを用いて授業を行う教員の資質や力量について、以下より述べたい。

 既に、「核となる体験」の重要性に言及したが、教員が児童生徒に「核となる体験」を持たせることができるか否かにより、児童生徒の今後の学習意欲の高さと、学習対象に対する理解の深さがほぼ決定されると考えられる。なぜなら、「核となる体験」が得られなければ、外界の事物・事象に関する興味の発生やイメージの構築や理解の形成が、確実に制限されてしまうからである。

 例えば、視覚と聴覚の重複障害者として著名なヘレン・ケラーは、水を体験した際に、現在自らが体験しているところの事物・事象を、「水」という言葉で把握できたことで、水以外の事物・事象の名前を積極的に知ろうとするようになったという。水の名前を知るという「核となる体験」がなければ、外界に対する興味は高まらず、外界に関する学習は停滞してしまったに違いない。

 教員に、各教科の指導内容に関する専門性が必要であることは言うまでもないが、より重要な資質や力量は、忍耐力や辛抱強さといったものだと私は考える。視覚障害を持つ児童生徒に「ものには名前があること」を教えるだけでも、相当の時間を要することであろう。ヘレン・ケラーを指導したサリヴァン先生が持っていたような粘り強さこそ、視覚障害者に対する特別支援教育に携わる者に必須の資質・力量であると私は考える。

参考・引用文献

青柳まゆみ・鳥山由子編 『視覚障害教育入門』 ジアース教育新社、2015年、p.36‐55、p.66‐89

捕捉

このレポートは、前半が要約型、後半が小論型になっています。

前半、指定の教科書の内容を要約すればOKです。

後半は、自分の考えを述べないといけないので、「~と私は考える」という書き方をする必要があります。

また、自分の主張の根拠や裏付けとなる具体的なデータも、示す必要があります。

要約型レポートの書き方については、下記が参考になります。

小論型レポートの書き方についても、上記で簡単に説明しているので、参考になると思います。