PB1010_国語_1単位目


 
 これからの時代に求められる国語力について論じる。

 はじめに、国語力というものの内容を明らかにしたい。これは、文化審議会答申において、次のように二つの領域に分けて捉えられているものである。

①考える力、感じる力、想像する力、表す力から成る、言語を中心とした情報を処理・操作する領域

②考える力や、表す力などを支え、その基盤となる「国語の知識」や「教養・価値観・感性等」の領域

 文化審議会答申では、上記の二つの領域のうち、①が国語力の中核であり、②は①を支える基盤に該当するとされている。ただし、①と②は相互に作用し合うことで国語力を構成し、生涯にわたって発展していくものともされている(長谷川、2016)。

 上記の二つの領域をさらに詳しく概観していこう。最初に、①における四つの力から見ていきたい。まず、「考える力」は、「分析力、論理構築力等を含む論理的思考力」を指す。ここでの「分析力」とは、「事実」や「根拠の明確でない推測」を見極め、論理や状況を正確に把握し、五感を通して得た外部の状況を言語化する能力である。一方、「論理構築力」とは、状況に応じて、筋の通った発言や文章を組み立てる能力である。次に、「感じる力」についてであるが、これは他人の心情や文学作品の内容や自然や人間に関する事実等を感得し、感動できる情緒力を指す。美的感性や言葉の意味の違い等を感じ取る能力もこれに含まれる。次に、「想像する力」についてであるが、これは未経験の事柄や非現実的な事柄を思い描く能力を指す。表情や態度から心情を察する能力もこれに含まれる。最後に、「表す力」についてであるが、これは文字通り、自分の考えや思いを発言や文章として表現する力を指す。これら四つの力は「情報を処理・操作する能力」とされる。これらが具体的に現れたものが、「聞く」「話す」「読む」「書く」という行為であり、日常生活の中でこれらは状況に応じて複雑に組み合わされて使用されている(長谷川、2016)。

 以上、①の詳細を概観してきた。次に、②の詳細を概観する。②は「国語の知識」と「教養・価値観・感性等」に区別できる。前者は具体的には、「語彙(個人が身に付けている言葉の総体)、表記に関する知識(漢字や仮名遣い、句読点の使い方等)、文法に関する知識(言葉の決まりや働き等)、内容構成に関する知識(文章の組立て方等)、表現に関する知識(言葉遣いや文体・修辞法等)、その他の国語にかかわる知識(ことわざや慣用句の意味等)」を指し、これらは主に学校教育によって育まれるものとされる。後者は、①や全ての活動の基礎となるものとされ、「人間として、あるいは日本人としての根幹にかかわる部分」とされる(長谷川、2016)。

 以上、文化審議会答申が定義するところの国語力の内容を概観してきた。以下より、上記答申の提言を踏まえて、これからの時代に必要な国語力について私自身の考えを述べる。

 答申の定義する国語力は、「少子高齢化、都市化や国際化、地球環境の変化、情報化」(長谷川、2016)という特徴を持つこれからの時代にふさわしいと私は考える。

 なぜなら、これからの時代は、変化の激しい時代であり、このような時代に必要とされる能力は、「言葉で相手の心の痛みを感じる感性」や「言葉で相手を理解する力」や「自らの考えや主張を的確にまとめて発信していく力」や「情報を素早く正確に判断・処理する能力」や「目標を持って自ら読み、読むことで必要な知識を習得し、そして自分の持っている資質を引き出す」(長谷川、2016)という積極性だと考えられるからである。国際化や産業構造の変化によって生じる、国籍や文化や生育環境等が異なる他者と交渉する機会の増加や、地震原発事故等の災害を鑑みるならば、「他者との交渉や必要な情報の吟味・収集に役立つ情報処理能力」と「絶えず新しい情報を吸収して自分を変えていく積極性」を育むことを意図した、答申の定義する国語力は、変化の激しいこれからの時代に十分適合したものといえる。

 これからの時代に必要とされる上記のような国語力を育成するにあたり、PISA調査が求める「Reading Literacy」に関する特徴が、大いに参考になると私は考える。なぜなら、PISA調査は、従来の知識の暗記だけでなく、自分の意見を構築することにも重きを置き、かつ、社会生活に必要なテキストを題材として用いる、ひたすら実用的なものだからである。教育現場で、それぞれの教職員が創意工夫を心掛けることは重要であり必須であるが、これからの時代を生き抜いていくために必要不可欠な国語力を育みたいのであれば、PISA調査の特徴を備えた教材を授業で用いることが近道であると私は考える。また、フィンランドのような、PISA調査での成績上位国における国語教育の体制・仕組みを参考にし、日本の国語教育に取り入れることも有意義な試みであると考える。これまでも、国家の仕組みや法律の中身を整える際に、他国のそれらを参考にして、それらを貪欲に取り入れてきた日本であれば、できないことはないはずだと私は考える。

参考・引用文献

長谷川清之 『国語科教育入門』 明星大学出版部、2016年、p.17、p.21‐24

捕捉

このレポートは小論文型レポートです。

「論じなさい」と課題に書かれている場合は、小論文型レポートを書くと考えてOKです。

とはいえ、課題が示されている大事な紙(確か、「科目概要・レポート課題」という名称だったような)に、「レポートに書いて欲しいこと」や「教科書の~章をまとめなさい」や「〇〇という言葉を必ず使いなさい」などの指針・方針が明記されているのでれば、これを必ず優先しましょう。

レポート前半で、「これからの時代に求められる国語力」というキーワードに関する詳細を、指定の教科書から探して要約しています。

レポート後半では、レポート前半を踏まえて「自分の考え」を述べています。

指定の教科書の内容から完全に外れた「正真正銘自分オリジナルの考え」を書くよりも、指定の教科書の内容に基づいて「自分の考え」を書いた方が無難です。

そうなると、答申の定義する国語力の要約と、これが「これからの時代に求められる理由」を、レポート後半に書くことになるでしょう。

要約型レポートの書き方については、下記の記事が参考になります。

小論文型レポートの書き方については、下記の記事の後半で少しだけ触れています。