PL3030_肢体不自由者の指導法_1単位目



 小学校及び中学校等の各教科等を中心とした教育課程編成のもとで学ぶ、知的障害を伴わない脳原性疾患による肢体不自由者である脳性まひ児の学習上の困難には、障害の存在する部位により、次のようなものがある。

 上肢に障害がある場合、授業等に次のような影響が及ぶ。①文字を書くことが難しい。②手指を使った作業(道具の利用、楽器の演奏、球技・器械運動、実験器具の操作、制作活動、調べ学習)が難しい。③時間がかかる。

 次に、下肢に障害がある場合には、授業等に次のような影響が及ぶ。①活動場所の制約。実地調査等の難しさ。②移動運動、跳躍運動等の制限。

 次に、体幹保持困難の場合には、授業等に次のような影響が及ぶ。①疲れ易い。②黒板が見えにくい。③活動しにくい。④技能の習得に時間がかかる。

 上記の障害の他にも、脳性まひ児は、言語障害(構音障害・吃音等)を抱えていることが多い。この場合には、授業等に次のような影響も及ぶ。①意見が伝わりにくい。②特殊音節(長音、拗音、拗長音、促音)の表記に誤りが見られる。③伝えるのに時間がかかる。④リコーダーなどの演奏が難しい。⑤思ったように歌えない。

 さらに、視覚障害や視知覚認知障害を抱えた脳性まひ児も多く存在するため、授業等に次のような影響も及ぶ。①文字を読むことができない。文字識別の困難さや、文字の読み飛ばしが生じる。文章の内容が分からない。②対象の位置や形を捉えづらい。文字を書きにくい。③図形の認知能力の低さがある。図形の位置関係が分からない。対象の見えにくさ。対象の読みにくさ。測定器具の数値が読めない。④統計資料や地形図を正確に読み取ることが難しい。図や表、グラフの読み取りが難しい。⑤観察図が描けない。⑥楽譜を読むのに困難がある。⑦絵が形になりにくい。全体を捉えて構成できない。⑧パソコンの画面が見えにくい。

 以上が、脳性まひ児が抱える学習上の困難の内容である。これらの困難を踏まえた、彼等の学習時の姿勢や認知の特性に応じた指導方法には、どのようなものがあるのであろうか。以下より、工夫された指導方法の具体例を、国語科を例に挙げて詳述する。

 国語は、「読む」、「書く」、「聞く」、「話す」という4つの領域を重視する教科である。これまで概観してきたように、脳性まひ児にとっては、上記4つのうち、「読む」、「書く」の領域において学習上の困難が存在することが明白である。そのため、脳性まひ児が国語の授業に参加する際には、次のような指導方法を取ることが望ましいといえる。

 まず、「読む」ことが必須の学習に際しては、特に体幹保持困難や視覚障害や視知覚認知障害がある場合、教科書や黒板における文字の形を正確に捉えられなかったり、文字を読み飛ばしたり、漢字の「へん」と「つくり」を逆に捉えたり、形の似た漢字を区別できないという困難が生じることが予想される。従って、教材の見え易さに配慮し、文字等の拡大、読み易いフォントへの変更、縦書き・横書きの選択、起点の明示、情報や作業の分割提示、文字に線を入れるなどの工夫を、教師は指導時に行うべきである。

 次に、「書く」ことが必須の学習に際しては、「音や言葉掛けなどの聴覚情報を用いた、書いている文字の位置関係を理解できるように順を追って捉えさせる指導」が考えられる。また、文字を書く場合に、筆順を重視したり、漢字を部首などの部分に分けて教えたりすることも有用と考えられる。

 また、最近では、発達障害を持つ児童に、iPad等のタブレット型のパソコンの授業への持ち込みを許可し、学習上の困難を軽減するという試みがある。iPadの機能を用いることで、黒板に書かれた内容を内臓カメラで撮影して記録したり、キーボード入力によりノートを取ったり、読み上げソフトを用いて文章を理解したりすることが可能になり、従来の「紙と鉛筆」によって行われていた学習のあり方に起因した問題が解決されたという事例が実際にある。このような配慮は、発達障害児だけでなく、脳性まひ児に対しても、行われてしかるべきであろう。iPadの重量は軽く、どのような場所にも持ち運びできる。机に固定されたパソコンと異なり、脳性まひ児の姿勢に合わせた柔軟な使い方ができる点も、その大きな魅力である。

 以上、学習上の困難を抱える脳性まひ児の、学習時の姿勢や認知の特性に応じた指導方法について述べてきた。上記で挙げた工夫の他にも、まだまだ工夫の余地はあると考えられる。現場の教師は、固定観念にとらわれることなく、児童が持つ「教育を受ける権利」を確保するために、率先して新たな指導方法を創出していくべきであろう。

参考・引用文献

西川公司・川間健之助編著 『改訂版肢体不自由者の教育』 一般財団法人放送大学教育振興会、2015年、p.140‐147

捕捉

このレポートは要約型レポートです。

「一例を挙げて説明せよ」と課題に書かれています。

なので、肢体不自由者の指導に関して留意するべきことを教科書から探し、具体例を一つ挙げて説明すると良いです。

私は指導方法の具体例を、国語科の指導を例に挙げて説明しました。

要約型レポートの書き方については、下記が参考になります。